ふくらはぎや太ももの「こむら返り」の治しかたと予防法

寒い冬の夜に寝ていたら急に足が痛くなる、冷たいプールに入ったら急に足が痛くなって溺れるかと思った…このようなこむら返りは「足がつる」とも表現され、非常によくある症状です。痛みもあり、足を動かせなくなるつらいこむら返りをなんとかして避けたいものです。ここではこむら返りの原因と対処法について解説します。
目次
こむら返りの原因

こむら返りは足に多い症状ではありますが、時折脇腹がつったという人もいますし、胸や手など、体のあらゆる場所で起こりえます。こむら返りの原因について確認しておきましょう。
こむら返りに関わる筋紡錘と腱紡錘
こむら返りは筋肉が異常に収縮・痙攣することによって起こってくる症状です。筋肉が大きく、常に負担がかかる場所ほどそのような症状が起こりやすいため、足の太ももや、ふくらはぎに起こりやすくなります。
元々筋肉は、伸びたり縮んだりを繰り返します。その伸び縮みを検知するのが、筋紡錘という組織と、腱紡錘という組織です。
筋紡錘は筋肉が伸びすぎたときに神経に情報を伝達し、筋肉をそれ以上伸ばすような神経刺激をストップさせます。一方で腱紡錘は筋肉の縮みすぎを検知し、同じように神経刺激をストップさせます。このうち腱紡錘の働きが何らかの原因で悪くなるとこむら返りが起こってしまいます。
ではどのような条件が起こるとこむら返りは起こりやすくなるのでしょうか。
ミネラルや水分の不足
体の中にはさまざまなミネラルが存在します。ミネラル分は体の中では水分にイオンとして溶け込んでおり、特に筋肉では収縮をコントロールしています。
ミネラル分が不足すると、そのような筋肉の収縮のコントロールがうまくいかなくなり、突然の刺激で不意に収縮したり、逆に収縮したままでなかなか解除されなくなってしまったりし、こむら返りが起こります。
ミネラルの中でも特にマグネシウムは筋肉の収縮や弛緩に重要なミネラルであり、不足するとこむら返りが起こりやすくなります。
また、水分が不足すると電解質が全身に届けられなくなりますし、電解質の血中濃度が異常になりますから、同じように筋肉の収縮に異常が生じ、こむら返りを起こしやすくなります。
血行不良
筋肉の収縮のコントロールには電解質が重要ですが、電解質を筋肉に配給するのが血液の流れです。
しかし、種々の理由で血液の流れが悪くなると、電解質が筋肉の部分で不足し、こむら返りを起こしやすくなります。血流不良の原因はさまざまですが、足の血管が細くなると血液の流れが悪くなり、こむら返りを起こしやすくなる人もいます。
冷え

冷えは万病の元と言いますが、こむら返りの原因ともなります。体が冷えると、体温が下がるのを防ぐために冷えている皮膚の近くの血管が収縮し、血液の流れが悪くなります。そのことによって、前述のように血行不良から電解質の異常が起こり、こむら返りが起こりやすくなります。
また、冷えていることは筋肉自体の代謝にも影響を及ぼします。暖まっている状態であれば筋肉が急に動いてもしっかりと収縮・弛緩することができますが、冷えた筋肉が急に動くと収縮した後にうまく弛緩することができず、こむら返りが起こってしまいます。
運動をする前、特に寒い時期や冷たいプールに入る前などにはしっかりと準備運動をして筋肉を温める必要があります。
筋肉の疲労
筋肉を使い続けるとこむら返りが起こることは皆さんもよくご存じのことと思います。一流のスポーツ選手でも試合終盤にこむら返りを起こしているシーンを見かけることがあります。
筋肉自体はそれまで収縮と弛緩をずっと繰り返しています。それには電解質も使用していますが、長期間筋肉を使用する事で電解質濃度が異常となり、また筋繊維自体もダメージを受けてきていることから急に筋肉がうまく収縮弛緩ができなくなり、こむら返りとなってしまいます。
また、筋肉を強く長く使っている場合酸素が筋肉に十分届いていない状況での運動が続くことになり、筋肉内で疲労物質である乳酸が蓄積します。乳酸があると、うまく収縮や弛緩ができなくなり、やはりこむら返りとなってしまうのです。運動の後はゆっくりとしたストレッチによって筋肉にほどよい血流を維持し、乳酸を筋肉から排出させることでこむら返りが起こりにくい状況を作る必要があります。
薬の副作用
一部の薬剤は、電解質異常などを通してこむら返りの副作用を起こします。血圧を下げる薬、高脂血症の薬、甲状腺機能の薬、インスリンなどの薬は電解質異常を来し、こむら返りを起こすことが知られています。
妊婦がこむら返りを起こしやすい理由

誰にでもおこるこむら返りですが、特に妊婦に多いといわれています。どうして妊婦にこむら返りが多いのでしょうか。
まず1つ目は水分不足です。妊婦はもともと胎児に水分を送るため、自分自身の水分を多めにため込んでいます。しかし、胎児を抱えて体温が高くなると、汗の分泌量も多く、気づかないうちに脱水となってしまいます。日中であれば水分摂取をする機会も多く取れますが、特に就寝中は摂取する水分量が不足し、脱水になりやすくなります。
2つ目の原因は電解質の異常、特にマグネシウム不足です。もともと日本人はマグネシウムの摂取量が少ないといわれています。妊婦は少ない摂取量のマグネシウムを、さらに胎児に送ることで自分自身のマグネシウムがかなり不足してしまいます。その結果、マグネシウム不足によるこむら返りが起こりやすくなります。
筋肉疲労や血流の悪化もこむら返りの原因となります。妊娠が経過し、胎児が大きくなると妊婦のお腹は大きくなり、体は重くバランスが非妊娠時とは異なります。そのため、それをささえる足の負担は大きくなり、筋肉に疲れがたまりやすくなります。
また、子宮が大きくなることは血流を阻害する原因となりますから、これらの条件によってこむら返りを起こしやすくなるのです。
ふくらはぎや太もものこむら返りの治し方

このように、こむら返りは誰にでも起こりえますし、妊婦さんの場合は特に起こりやすくなっています。では、こむら返りを起こしたらどのようにしたら治すことができるのでしょうか。
筋肉を伸ばす
スポーツの場面を見ていると、足がつったといって横になっている選手の足を持ち上げて、つま先をぐいぐい押しているシーンを見かけることがあります。この方法は、足の後ろ側の筋肉がつった場合によく用いられる方法になります。
こむら返りを起こした筋肉に対してこむら返りを治すためには、こむら返りを起こした筋肉を伸ばすことが重要です。筋肉が縮んだことを検知する腱紡錘が異常を起こすことでこむら返りを起こしてしまうのですから、筋肉をのばしてやることで腱紡錘の働きを抑え、筋肉が異常に収縮するような刺激を排除してやります。
この筋肉を伸ばすということのためには、伸ばしたい筋肉の両端の関節を伸ばしてやることが重要になります。例えばふくらはぎが吊ったのであれば、ふくらはぎを挟む両側の関節、すなわち膝関節と足関節に注目する必要があります。ふくらはぎの筋肉は膝関節を曲げて、足関節をかかと側に曲げる筋肉です。ですから、逆に膝を伸ばし、かかとを突き出すように伸ばしてやる必要があります。
このように、こむら返りを治すときにはその両側の関節をしっかり伸ばす、ということを覚えておきましょう。
ふくらはぎのこむら返りの場合
では、こむら返りを起こした場所に応じてどのような対処を行うのか、具体的な方法を説明しましょう。
まずはふくらはぎです。先ほど説明した通り、膝関節を伸ばし、足関節を背屈(つま先をすねに近づける)させる必要があります。他の人が治してあげられる場合は、こむら返りを起こした人を寝かせ、治す人が片手で膝を押さえ、もう片手でつま先を持ち、すねの方に向けて引っ張ります。治す人がいない場合は、こむら返りを起こした人はこむら返りを起こした方の足を伸ばして座り、つま先を持って引っ張ります。このときに膝は曲げないように注意しましょう。
太ももの前側のこむら返りの場合
太ももの前側がこむら返りを起こした場合は、立った状態で膝を後ろに曲げて、つま先を体の後ろ側でもってぐっと引っ張ります。これによって膝関節と股関節を繋ぐ、太ももの前の筋肉を伸ばします。別の方法としては、こむら返りをした足を、正座をするように曲げた状態で座り、そのまま体を後ろに倒していく方法があります。
太ももの後ろ側のこむら返りの場合
太ももの後ろ側が吊った場合は、ふくらはぎが吊ったときと同じような対処を行います。これにより、膝関節と股関節の間をつなぐ太ももの後ろ側の筋肉も伸ばされ、治ります。
脇腹のこむら返りの場合
時折、脇腹がつる人がいます。脇腹がこむら返りを起こした場合の治し方は難しいのですが、やはり基本は筋肉を伸ばしてやることです。
脇腹の筋肉を伸ばす場合、手を挙げて前か後ろの方に体をゆっくり倒していきます。脇腹には複数の筋肉がありますから、体を前か後ろに倒しながら、こむら返りを起こしていると思われる筋肉が伸ばされている感覚がある方向へと体を倒し、しっかりとその筋肉を伸ばしてやります。
こむら返りの予防法

こむら返りを起こした後には筋肉を伸ばせば良いのですが、やはり痛い思いはしたくないもの。こむら返りを予防する方法について見ておきましょう。
水分を摂取する
先ずは脱水にならないこと。しっかりと水分を摂取します。ミネラル分の不足もないよう、水ではなくスポーツドリンクなどを飲むことが重要です。
スポーツの前は準備運動を行う
冷えた筋肉で急に体を動かすとこむら返りが起こりやすくなりますから、しっかりと準備運動を行ってからスポーツを行いましょう。
普段からこむら返りを起こしやすい人は、ゆっくりとしたストレッチを、長時間ではなく短い時間で良いですから何回も行うことで、筋肉が温まった状態を維持しましょう。これにより、血流も良くなることが期待できます。
漢方薬を用いる
薬としては、漢方薬の芍薬甘草湯が使用できます。こちらの漢方薬は漢方医療の専門家ではない一般の医師でもよく処方する薬で、効果が明確に現れる薬です。予防にも使用できますし、症状が起こってから内服することで症状の緩和を期待できます。
よくこむら返りを起こすという方は、医師や薬剤師に相談してみてください。
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<執筆・監修>

徳島赤十字病院
麻酔科 郷正憲 医師
麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。
麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。
本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。
「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」