めまいの種類と原因…良性発作性頭位めまい症の予防法を解説

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めまいとは、自分自身や周囲が動いていないにも関わらず、バランスを保つ三半規管などの異常によって、動いているような違和感を感じ、平衡感覚を失ってしまった状態をさします。

めまいにはいくつもの種類や原因があります。ここではめまいについて詳しく解説します。

めまいの種類

めまいの種類には下記のようなものがあります。

回転性めまい

「目が回る」、「天井がグルグル回っている」などと表現されるめまいのことです。このようなめまいを自覚した方も多いと思います。この回転性めまいは、耳が原因であることが多いといわれています。平衡機能が異常をきたすことで生じます。

浮動性(動揺性)めまい

身体がふわふわ浮いているような感じや、ユラユラ揺れているような感じ、姿勢を保つのが難しく、まっすぐ歩くことができないめまいを、浮動性(動揺性)めまいといいます。浮動性めまいの原因としては、中枢性、全身性、薬剤性、心因性の4つがあります。

中枢性めまい

中枢性のめまいは、浮動性めまいになることが多く、脳の中でも小脳や脳幹に障害が起こることで発症します。脳梗塞や脳内出血などの病気が原因の可能性があり、激しい頭痛や嘔吐、手足のしびれや脱力感を伴う場合があります。めまいだけでなく、このような症状が出現したときは、一刻も早く病院を受診しましょう。

全身性めまい

全身性めまいは、身体全体の問題から発生するものであり、身体の一部分が障害されて起こるものではありません。原因として多いのは自律神経失調症です。また、貧血や発熱が原因で起こる場合もあります。

薬剤性めまい

薬を新しく内服し始めてめまいが生じた人は、薬の副作用による可能性があります。特に抗生物質や精神安定剤、降圧剤などで症状が出やすいといわれています。しかし、薬の中断は自分で判断するのではなく、医師や薬剤師に相談してみましょう。

心因性めまい

耳や脳に特に異常がなくても、心因性めまいとなる場合があります。精神的なストレスや自律神経の乱れが内耳や脳幹の機能に悪影響をもたらして発症すると考えられています。心因性めまいが長く続くと、うつ症状や自律神経失調症につながってしまう場合もあります。

失神性発作

急に目の前が真っ暗になるめまいであり、頭からスーッと血の気がひくような感覚があります。いわゆる立ちくらみです。起立性調節障害や不整脈などが原因となって生じます。

めまいが生じる原因の違い

めまいの原因になる疾患には良性発作性頭位めまい症やメニエール病などがあります。

良性発作性頭位めまい症

最も多いめまいの原因として良性発作性頭位めまい症があります。これは、ベッドから起き上がるときや寝返りを打つとき、背伸びをしたり、下を向いたりしたときなど、頭の位置が一定方向に変わったときに数秒から数十秒程度起こる回転性めまいのことです。

このめまいを引き起こす原因が耳の三半規管の中に存在する耳石です。耳石は耳石器にくっついて、体の傾きや重力の方向を脳に伝える役割を果たしています。しかし、この耳石が何らかの衝撃を受けたり、老化して古くなると、耳石器から外れて三半規管に入ってしまいます。

三半規管には身体の動きをリンパ液の流れなどで感知して脳に伝える働きがありますが、耳石が入り込むことでリンパ液の流れが乱れてしまいます。乱れてしまうことで実際の頭の動きとは違う情報が脳に伝わって、めまいが引き起こされてしまうのです。

メニエール病

回転性めまいに加えて耳鳴りや難聴が伴う場合は、メニエール病や突発性難聴などが疑われます。メニエール病は、内耳を満たしているリンパ液が過剰になって、耳の蝸牛と呼ばれる部分が膨れ上がってしまう内リンパ水腫となることで生じます。

これによって、蝸牛や身体の平衡感覚を司る三半規管の機能が乱れて起こるといわれています。メニエール病の場合は数秒などでは終わらず、30分以上続きます。また、耳が詰まった感じや難聴、耳鳴りが同時に引き起こされます。

良性発作性頭位めまい症の予防法

めまいの原因として最も多い良性発作性頭位めまい症の予防法を紹介します。

めまいを改善する体操を取り入れる

次に紹介する体操や訓練はめまいの予防や改善に有効です。

たまに頭を動かす

仰向けに寝て、10秒間保ち、次に右を向き10秒、正面を向き10秒、左を向き10秒、最後に正面を向き10秒間保ちます。良性発作性頭位めまい症が繰り返し再発している方は、このように頭を定期的に動かすことで予防することができます。

カードや鏡を使って眼球を動かす訓練

座ったまま両手にカードをもち、頭を動かさずに眼球だけを動かして交互に左右のカードを見る訓練方法です。頭を動かさずに、眼球だけの動きのみでゆっくりとカードなど動くものを追視します。

頭の位置(頭位)を変えて対応する訓練

カードなどの目標物を見ながら、頭を前後に曲げる訓練方法です。ゆっくりと目標物と同じように頭を動かします。

立位訓練

両足で立ち、足を左右に開いて、一直線上に前後になるように一歩足を前に出す練習をします。

目を閉じて体を前後左右へ揺らしてバランスをとります。

このように平衡機能訓練を行うことで平衡機能が鍛えられ、めまいが予防できます。手すりを利用したり介助者についてもらったりして安全を確保して行うようにしましょう。

有酸素運動を行う

日頃から適度な運動をしている人はめまいになりにくい傾向があります。運動をすると交感神経が興奮しますが、運動を終えると交感神経の働きは低下していきます。

このようにメリハリをつけてあげることで、乱れていた自律神経が本来のバランスに戻りやすくなるためです。

運動は、ウォーキングやジョギング、水泳、エアロビクス、ヨガなどといった有酸素運動が効果的となります。中でもヨガは深い腹式呼吸と共に行うため、リラックス効果も高く、自律神経を整えるうえでとても有効です。

水分を十分にとる

脳へ行く血流が悪くなってしまうと、めまいが起こりやすくなってしまいます。水分をしっかり取り、血液の滞りを防ぎましょう。

ふくらはぎのマッサージ

ふくらはぎをもむことで全身の血液循環が良くなり、脳の血流もスムーズとなります。寝る1時間ほど前にもむとさらに効果的です。

ストレスを避ける

めまいはストレスを抱えることで発症することが多いです。心と身体にストレスがたまらないように、適度に発散し、睡眠などもしっかり取りましょう。

耳に負担をかける行為をしない

イヤホンやヘッドホンで音楽を聴いている人は使用時間に注意しましょう。長時間使用することで、内耳に負担がかかり、めまいや耳鳴り、難聴の原因となってしまいます。

毛染めにも注意

有機溶剤入りの毛染め液はめまいの原因となってしまいます。毛染め液に含まれるアニリン色素の誘導体は、皮膚からの吸収が高く、一度体内に吸収されてしまうと排泄されにくい性質があります。

そのため体内にとどまったアニリン色素誘導体が、小脳に蓄積し、めまいや耳鳴り、難聴を引き起こしてしまうことがあります。毛染めをするときは成分などをよく確認して、慎重に行いましょう。

いかがでしたでしょうか。めまいが頻繁に起こる方は生活習慣を見直し、ここで紹介した体操などを試してみましょう。めまいの80%は耳が原因となっています。めまいが起こり、その他の症状がない場合は、まず耳鼻科を受診するとよいでしょう。


<執筆・監修>

九州大学病院
脳神経外科 白水寛理 医師

高血圧、頭痛、脳卒中などの治療に取り組む。日本脳神経外科学会専門医。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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