寝つきが悪いのはなぜ?原因や病気の可能性、対処法を解説

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日本の成人の睡眠時間は6時間以上8時間未満の人がおよそ6割を占めており、これが標準的な睡眠時間と考えられています。

睡眠時間は、日の長い季節では短くなり、日の短い季節では長くなるといった変化を示します。

寝つきが悪いとじゅうぶんな睡眠時間がとれなかったり、睡眠の質が低下してしまったりします。ここでは睡眠の質を保つための寝つきについて詳しく見ていきましょう。

寝つきが悪い原因とは?

寝つきが悪く、眠りが浅く何度も目が覚める原因のほとんどが生活習慣の乱れです。生活習慣が乱れることで体内リズムが崩れてしまうのです。

睡眠時間や睡眠パターンは、年齢によって大きく異なります。高齢になると若年期と比較して必要な睡眠時間が短くなります。年齢相応の適切な睡眠時間を目標に、就寝時刻と起床時刻を見直し、寝床で過ごす時間を適正化することが大切です。

また、日中に長時間眠る習慣を作ってしまうと、昼夜の活動・休息のメリハリをなくすことにつながってしまい、夜間の睡眠が浅くなり、不安定になってしまいます。このように体内リズムが崩れることで寝つきが悪くなってしまいます。

自律神経の乱れ

体自体は疲労しているのに眠れない人は、過剰なストレスが原因になっていることが多いです。過度なストレスは、自律神経を乱します。

自律神経は交感神経と副交感神経で成り立っています。ストレスによって交感神経が優位となってしまいます。通常、睡眠の質を保つには副交感神経が優位となっていなければなりません。そのため交感神経が優位であることで、眠りたくても眠れない状態になります。

寝つきが悪いのは病気の可能性も

何らかの病気によって寝つきが悪くなっている可能性もあります。次に挙げる病気の特徴に当てはまっているようなら注意が必要です。

不眠症

不眠症とは、睡眠がじゅうぶんに取れない状態が1か月以上続き、起きている間にだるさや集中力が続かなかったり、食欲が出なくなったりと不調が出る病気です。

不眠症のタイプは4つあります。

・入眠障害:寝ようとしても寝つくことができない状態
・中途覚醒:寝ていても途中で目が覚めてしまう状態
・早朝覚醒:朝早くに目覚めてしまう状態
・熟眠障害:じゅうぶんな睡眠をとったはずなのに、熟睡した実感が得られない状態

毎晩眠りにつくまでに1〜2時間かかる(入眠障害)ため、睡眠時間が短くなり、睡眠の満足感が得られない(熟眠障害)など、これらの症状はまったく別々のものではありません。

健康的な人は入眠までにかかる時間が30分以内といわれています。しかし、寝つくのに30分以上かかれば入眠障害となるのかといえば、そうではありません。そのような状態が持続し、それが原因で日中に眠気を感じるなど、生活に支障が出た場合に入眠障害となります。

うつ病

うつ病になると9割以上が何らかの不眠症状を伴います。寝つきが悪く、早朝に目が覚めたり(早朝覚醒)、眠りが浅く途中で何度も目が覚めてしまう(中途覚醒)、熟睡感がないなどの特徴的な不眠を示します。

睡眠による休養感が得られなくなると、日中の注意力や集中力の低下、頭痛やその他のからだの痛みや消化器系の不調などが現れ、意欲が低下してしまいます。

そのため、この特徴的な睡眠障害を初期のうちに発見して適切に治療しないと、うつ病の悪化を招いてしまいます。このような睡眠障害がみられる方は、病院を受診して相談しましょう。

レストレッグス症候群

夜眠ろうとベッドに入ったときや、新幹線や飛行機や映画館などでじっとしている時に足のむずむず感や熱感を感じることをレストレッグス症候群といいます。レストレッグス症候群によって睡眠が妨げられ、睡眠障害につながることがあります。人口の2〜4%が罹患しているといわれており、女性が男性の1.5倍となります。

寝つきが悪いときの対処法

寝つきが悪い人には次に紹介する対処法を取り入れてみることをおすすめします。

起床時間を毎回同じ時間に設定する

睡眠覚醒は体内時計で調整されています。夜ふかしや休日の寝坊、寝過ぎは体内時計を見出してしまいます。休日だからといって、起床時間を変えるのではなく、平日と同じ時刻に起床・就寝する習慣を身につけることが大事となります。

起床後に日光浴をする

太陽光など強い光には体内時計を調整する働きがあります。光を浴びてから14時間目以降に眠気が生じてきます。早朝に光を浴びると夜寝つく時間が早くなり、朝も早く起きられるようになります。すなわち早起きすることが早寝につながるのです。逆に夜に強い照明を浴びすぎると体内時計が崩れて早起きするのが辛くなります。

軽い運動を取り入れる

ほどよい肉体的疲労は心地よい眠りを生み出してくれます。運動は午前よりも午後に軽く汗ばむ程度の運動をするのがよいでしょう。激しい運動は刺激によって寝つきを悪くするため逆効果となります。短期間の集中的な運動よりも、負担にならない程度の有酸素運動を長期間継続することが効果的です。

適度な運動を習慣づけることは、入眠を促進するだけではなく、中途覚醒を減らすことにもつながります。一方で就寝直前の激しい運動は入眠を妨げるので注意しましょう。

寝る1~2時間前にお風呂に入る

心地よい睡眠を得るためには、睡眠前に副交感神経を活発にすることが大事になります。寝る1〜2時間前にぬるめのお風呂にゆっくり入り、リラックスする時間をとって心身の緊張をほぐすことで睡眠の質が向上します。

寝酒や喫煙をしない

寝酒や喫煙は生活習慣病の発病・重症化の危険因子になるとともに、直接睡眠の質を下げるだけでなく、睡眠時無呼吸症候群のリスクを増加させるなど、二次的な睡眠障害の原因となりうるので避けましょう。

寝るための環境づくりをする

寝室や寝床の中の温度や湿度は寝つきや睡眠の深さに関係してきます。温度や湿度があまり高いと発汗による体温調節がうまくいかずに、皮膚から熱が逃げていきません。内部の温度が下がらないために寝つきが悪くなります。部屋の温度は20度前後、湿度は40~70%に保つと睡眠の質が良くなります。

寝る前のカフェイン摂取をやめる

カフェインには覚醒作用があり、その作用は3時間程度持続します。そのため、就寝前3〜4時間以内のカフェイン摂取は、入眠を妨げたり、睡眠を浅くする可能性があります。また、カフェインには利尿作用もあり、夜中に尿意で目が覚める原因にもなります。カフェインは、コーヒー、緑茶、紅茶、ココア、栄養・健康ドリンク剤などに多く含まれています。

寝る前に脳を興奮させる行動をしない

寝る前は脳を興奮させないことが大切です。夜間は家庭の照明を暗めに調節しましょう。また、テレビやパソコン、スマホなどを見ることは極力避けましょう。特にベッドに入ってスマホなどを見ると、副交感神経よりも交感神経が優位となってしまい、寝つけなくなってしまいます。

どうしても見る際は画面照度を下げるなどの工夫をしましょう。読書も同様であり、文字を読んで理解することで脳が興奮してしまいます。就寝直前には極力避けましょう。

いかがでしたでしょうか。寝つきが悪いからといって何かをするのではなく、ゆっくりと脳を休ませることが重要となります。また、眠気がきてからベッドに入ることが大切です。寝つきが悪い方はここで紹介した対処法を実践してみましょう。


<執筆・監修>

九州大学病院
脳神経外科 白水寛理 医師

高血圧、頭痛、脳卒中などの治療に取り組む。日本脳神経外科学会専門医。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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