むずむず脚症候群とドパミンの関係とは?薬物療法や改善方法を解説

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むずむず脚症候群は夜眠るときにあしがむずむずしてしまい、それが気になってなかなか寝られなくなる病気です。ここではむずむず脚症候群の特徴や治療法について解説します。

むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)とは

むずむず脚症候群は、現在はレストレスレッグス症候群と呼ばれる病気です。休憩(レスト)が、ない(レス)、足(レッグス)の病気という意味になります。この記事ではむずむず脚症候群と呼称します。

むずむず脚症候群は、主に60歳代前後の女性に多い病気です。症状としては、特に原因が無いのに足の上や足の中を虫が這っているようなむずむずした感覚が続き、足を安静にしていることができなくなってしまう症状が見られます。

この症状は夕方から夜にかけての時間帯に多く、特に足を動かさないようにしているときに症状が強くなります。一方で、足を動かすことで症状が軽減したり、消失したりする事も特徴です。

症状が起こる時間帯や、足をじっとすることで症状が起こることから、とくに夜寝ようとしたときに症状が起こってきます。夜寝ようと布団に入ると足がむずむずしてきて動かさざるを得なくなりますから、なかなか眠ることができなくなり、不眠の症状も起こります。

治療を行わないと毎日のように症状に悩まされ、不眠も相まって衰弱してしまうこともあります。

むずむず脚症候群とドパミンの関係

むずむず脚症候群の原因は現在のところはっきりと分かっていませんが、脳内で情報を伝達する物質であるドパミンの分泌に何らかの異常が出て、ドパミンが減少してしまうことによって起こってくると考えられています。

ドパミンが減少する原因

ドパミンの減少をきたす原因はさまざまあります。先ずは遺伝的要因です。遺伝的にだんだんとドパミンの分泌が減少してしまうことによって症状が起こる場合があり、家族にむずむず脚症候群の患者さんがいる場合は発症する場合が多いといわれています。

ドパミンの分泌には鉄分が必要ですから、鉄が欠乏している人にはむずむず脚症候群が起こりやすいようです。鉄が欠乏すると貧血が起こりますから、鉄欠乏性貧血に合併しやすいといわれています。妊娠した場合は鉄分を胎児に送るため、母胎の鉄が欠乏し貧血が進行するとともにむずむず脚症候群を合併する場合があります。

ドパミンの減少を伴うさまざまな病気

また、慢性腎不全や糖尿病の場合は、体内のさまざまな物質の伝達が傷害されてしまうことが多いため、むずむず脚症候群が起こりやすくなります。

他には神経疾患の一種でドパミンの分泌が後天的に減少してしまうパーキンソン病も原因となります。ドパミンの分泌が減少することによって手足の震えや体が固縮するなどの症状に加えて、むずむず脚症候群が起こることが多いようです。

一次性むずむず脚症候群と二次性むずむず脚症候群

このように、むずむず脚症候群の原因はさまざまであり、治療法につなげるために一次性むずむず脚症候群と二次性むずむず脚症候群に分類して考える方法が提唱されています。

一次性むずむず脚症候群は、特に原因がはっきり分からないものを指します。特発性むずむず脚症候群とも呼ばれます。多くの場合は家族性に発症するため、遺伝性の原因が示唆されています。

二次性むずむず脚症候群はパーキンソン病や鉄欠乏性貧血など、何らかの原因が示唆されるものをいいます。この場合、原疾患の治療を行うことで症状が治まることが多いという特徴があります。

むずむず脚症候群の薬物療法

むずむず脚症候群は鉄が欠乏することによってドパミンの分泌される量が減少してしまうことによることが多いと説明しました。そのため、それぞれの欠乏を薬剤で補うのが基本となります。

鉄が欠乏している場合は先ずは欠乏している鉄を補充することで症状の改善をみます。鉄の血液検査が十分に回復するまで内服しても症状が消失しない場合、あるいは元々鉄の欠乏がない場合はドパミンを補充する薬剤が使用されます。

プラミペキソールとロチゴチン

ドパミンを補充する治療としては、飲み薬のプラミペキソールと貼り薬のロチゴチンが使用されます。いずれの場合でも、使いすぎることでむずむず脚症候群が軽くなるばかりかかえって強くなったり、吐き気などの症状が出てくることがあり、調整が難しい薬となります。そのため専門医に処方してもらうことをおすすめします。

ガパペンチンエナカルビル

ドパミン以外の薬剤としては、飲み薬のガパペンチンエナカルビルがあります。こちらは痙攣や癲癇などにも使用される薬で、神経に直接作用することで神経の興奮を抑え、症状を抑えてくれます。ドパミンの薬剤と併用する場合もあります。ただし、腎機能が低下している場合には使用できません。

クロナゼパム

抗不安薬であるクロナゼパムが使用されることが多いです。このクロナゼパムはベンゾジアゼピン系薬剤に分類される薬剤で、脳の活動を抑えることで睡眠を誘う薬です。

脳の神経活動が治まりますから、むずむず脚症候群の原因となるような神経の異常活動も抑えられます。また眠気を引き出してくれる働きもあります。

トラムセット

鎮痛薬のトラムセットも効果があるとされています。ただしトラムセットには便秘などの副作用もありますから、気軽に使うことはなく、他の治療を行ってもなかなか症状が治まらない場合や痛みを伴うような場合に使用されます。

むずむず脚症候群の改善方法

むずむず脚症候群は、次に紹介するような日常生活の改善によって症状が和らぐ可能性があります。

カフェイン・アルコールの摂取、喫煙を控える

寝る前に神経が刺激されるようなことをしてしまうと、神経が過剰に反応してむずむず脚症候群の症状がひどくなってしまいます。

特にカフェインやアルコールを摂取したり、喫煙を行ってしまうと症状が悪化してしまいます。

カフェインは過剰に摂取すると鉄の吸収を阻害するといわれていますから、鉄欠乏を悪化させてむずむず脚症候群が起こりやすい環境を作り出してしまう上に、神経系の興奮を強くして症状をさらに悪化させてしまいます。

眠れないからとアルコールを摂取してしまうと症状が強くなってかえって眠れなくなってしまう場合がありますから、注意が必要です。

鉄分不足を補う

鉄分は薬剤で補うこともできますが、できるだけ普段の食生活で必要な鉄分を補うように心がけましょう。鉄分を多く含むとされるほうれん草や、レバー、赤身肉などを食べると良いでしょう。

寝る前のストレッチ

寝る前のストレッチは、寝付きを良くするだけでなく、神経の興奮を抑えてむずむず脚症候群の症状を軽くしてくれます。

筋トレのような激しい動きをしてしまうと体がほてってしまい、脳が活発に活動する結果、むずむず脚症候群の症状がひどくなってしまう場合もあります。

筋肉や関節をゆっくりと伸ばすようなストレッチを心がけるようにしましょう。このときにはカフェインやアルコールを摂らずに行うことが大切です。


<執筆・監修>

郷正憲先生プロフィール画像

徳島赤十字病院
麻酔科  郷正憲 医師

麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。
麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。
本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。
「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

郷正憲

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。 「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

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