プラスマイナスの意味は?尿蛋白の基準値と改善のポイント

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通常であれば腎臓から蛋白は漏れ出ませんが、腎臓に何らかの異常がある場合に尿蛋白が陽性反応として出現します。ここでは尿蛋白の基準値や原因、改善のポイントについて見ていきましょう。

尿蛋白とは

健康診断では、採取した尿に試験紙か試薬を使って尿蛋白を判定する検査を行います。試験紙や試薬が変色しなければ、尿蛋白陰性で、異常なしと判断されます。

尿蛋白陽性とは、尿にたんぱく質が含まれていることを示しています。

健康な人の尿には通常、ごく微量に蛋白質が含まれているものの、尿蛋白はほとんど排出されませんが、腎臓に問題が生じると、正常な状態よりも多くの蛋白質の成分が尿に含まれることがあります。

尿蛋白が陽性(2+)以上の場合には、不規則な生活習慣や腎臓の病気などが疑われることになり、二次検査として再検査や精密検査が必要な状態とされています。

子供の頃の健康診断で、尿検査をした経験は多くの方が持っていると思いますが、尿検査では、尿蛋白が陽性かどうかをみて、腎臓病があるかどうかを確認することができます。

蛋白尿とは、腎臓や膀胱など泌尿器系の臓器に障害があって、尿中に異常な量のタンパク質が検出されることを指し、蛋白の出ている尿を蛋白尿、尿中に含まれる蛋白のことを尿蛋白と言います。

蛋白尿は腎臓に何らかの異常が起きていることを示すSOSのような役割を担っている検査異常であり、例えば検査結果として尿蛋白が2+や±(プラスマイナス)といったかたちで蛋白の程度を表します。

腎臓という臓器は、必要な物を体に留めて、不要な物をろ過して尿として体の外に出す役割を持った臓器であり、腎臓の糸球体というフィルターのような構造によって、蛋白は通常であれば体外に出ることはありません。

尿中に蛋白成分が混在しているということは、糸球体をはじめとして腎臓に何らかの異常がある可能性が懸念されます。

プラスマイナスの意味は?尿蛋白の基準値

尿検査の結果、尿蛋白が(+)と表記されると、それは「陽性」という意味であり、(-)と表現されれば「陰性」と解釈されます。

蛋白尿が2+、3+の場合には、そうでないケースと比較して、透析が必要になる確率が高いということが判明しているため、蛋白尿が2+、3+の方は、有意な症状がなくても一定の注意を払うことが必要です。

慢性腎臓病診療のガイドラインによれば、蛋白尿の基準値は、0.15g/gCre未満を正常、0.15g/gCre以上0.5g/gCre未満を軽度、0.5g/gCre以上を高度と定めています。

これらの数値は定量検査で測定することが出来て、1+や2+など大まかな定性検査とは異なって、より詳細に蛋白尿の程度を数値化した基準になります。

また、蛋白尿の程度と血液検査で判定する腎機能の双方の観点から、慢性腎臓病の重症度であるステージが分類されています。

尿蛋白が出る原因

尿蛋白が出る原因としては次のものが挙げられます。

生活習慣によるもの

蛋白尿が出る原因として不規則な生活習慣に由来する糖尿病性腎症、高血圧、肥満などが挙げられます。また、風邪、日々のストレス、激しい運動、疲労、睡眠不足、水分不足などによる体調不良によっても蛋白尿が認められることがあります。

病気によるもの

慢性腎臓病は生活習慣病を原因とし、メタボリックシンドロームと関係が深い病気であり、腎臓病は初期には自覚症状があらわれにくいので尿検査での早期発見が必要です。

腎臓病になると蛋白尿以外にも、血尿、身体の浮腫、高血圧、尿量変化などの所見が出現することがあります。

腎機能低下で蛋白尿が出ると糖尿病の発症も疑われることが知られています。糖尿病ではインスリンの作用低下が原因で高血糖が慢性的に続き、腎機能低下、網膜症、神経障害といった合併症を伴うことがあります。

また、蛋白尿が出る原因で注意すべき病気としては、急性糸球体腎炎や慢性糸球体腎炎といったものが挙げられており、急性糸球体腎炎においては小児では溶連菌感染の後に見られることも多いです。

腎臓の中の糸球体という尿を作る部位で、免疫異常などによる炎症が慢性的に継続する慢性糸球体腎炎では、IgA腎症、膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎などに分類されており、尿蛋白や尿潜血が持続的に陽性となる疾患として知られています。

健診や人間ドックで尿蛋白が3+や4+など指摘された場合には、免疫や遺伝の病気である慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、血管炎などを発症している可能性がありますので、迅速に腎臓内科など専門医療機関を受診しましょう。

それ以外にも、子供が蛋白尿陽性である場合の半数以上は、起立性蛋白尿と呼ばれる体動に伴う蛋白尿であり腎臓としての異常はありませんが、背景に腎疾患が潜在化して隠れている場合も想定されますので心配であれば医療機関に相談しましょう。

妊娠に関わるもの

妊娠中は、胎児への血液と母体への血液が混在して、全身の循環血液量が増加します。

腎臓は、血液を濾過して尿を作成していますが、血液量が増えて過剰濾過となるだけでも蛋白尿は出現しやすくなります。

特に、妊娠に関わるもののなかでも、妊娠高血圧症候群は高血圧と蛋白尿を特徴とする病気であり、早産など母体や胎児に重大な影響を及ぼす可能性があります。

尿蛋白の数値を改善するには?

一度悪くなった腎臓を再生して根治的に改善させる方法はありませんが、蛋白尿を改善させることで残っている腎機能を保護することが期待できます。

蛋白尿が出ている原因にもよりますが、初期段階では食事や運動習慣の見直し、および薬物治療が大切な要素となります。

管理栄養士やリハビリ療法士と相談しながら、食事の治療としては、塩分を減らして、定期的に評価をしながら野菜、果物、蛋白質の量を調整すると共に、運動治療としては有酸素運動や筋力を鍛える運動を実践します。

生活習慣病に大きな影響を与える食生活を改善することで、腎機能の低下を防ぐことができるので、腎臓病などの予防するために普段の生活から減塩、蛋白質の摂取制限、過度の飲酒を控えるなど、食生活の改善を目標に設定しましょう。

腎臓リハビリテーション療法は運動、食事、精神面に対する包括的なサポートをするプログラムであり、実践することによって身体機能の向上、心臓や脳への保護効果、あるいは腎臓の保護効果などが期待されています。

薬物治療に関しては、特に血圧と血糖値の治療が重要であり、腎臓を保護する作用を有するRAS系阻害薬やSGLT-2阻害薬を組み合わせた治療が行われています。

まとめ

これまで、尿蛋白のプラスマイナスの意味、尿蛋白の原因と改善のポイントなどを中心に解説してきました。

尿蛋白が2+以上の場合や、1+でも繰り返して陽性と判定される場合には、腎臓内科など専門医療機関の受診が必要となります。

医療機関では、定量検査と呼ばれる方法で1日あたり蛋白尿が何グラム程度出ているかを詳しく的確に調査する精密検査を実施することが可能です。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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