金縛り(睡眠麻痺)とは?症状の特徴と対処法

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ふと目が覚めた時に体が動かない……。そんな体験ありますか?

金縛りと呼ばれる心霊現象が思い浮かびますよね。しかし、これは金縛りではなく、睡眠麻痺という睡眠障害の一種だと思われます。ここでは睡眠麻痺の症状や対処法について詳しく見ていきましょう。

金縛り(睡眠麻痺)とは

睡眠麻痺は健常者でも起きることがあり、10〜20代といった若い世代に起きやすく、性差はありません。日本人の40%の人が体験したことがあるとされており、遺伝が影響するとも言われています。

・意識はあるのに体を動かすことができない
・体を圧迫されている感じがして、息苦しさを感じる
・耳鳴りがする
・目が開かず、苦しくて声を出そうとしても声が出ない
・幽霊のような影が見える
・幻聴が聞こえる
・誰かに触られるような感覚

などの症状がみられることがあります。

睡眠麻痺を頻繁に経験すると、眠りに対して怖い印象を持ち、眠れないことがあります。熟睡できないため、翌日に疲労感、眠気が残ることもあります。

睡眠麻痺が起きやすくなる原因

睡眠中には脳が休まる深い眠りのノンレム睡眠と体は休んで脳が活発になっているレム睡眠が交互に繰り返されています。

この睡眠麻痺が起こるのはレム睡眠のタイミングです。通常は、眠りについた直後はノンレム睡眠の状態となり、約90分後にレム睡眠が出現します。

しかし、何らかの原因によって就寝直後にレム睡眠が現れるケースがあり、この睡眠サイクルの乱れが引き金となって睡眠麻痺が生じます。睡眠麻痺が起きやすくなる原因は、以下のようなものがあります。

睡眠不足

睡眠不足になると、睡眠のリズムが崩れ、睡眠麻痺が起きやすくなります。平日に十分な睡眠時間が取れないことで、休日に寝溜めをすると、睡眠のリズムが崩れてレム睡眠の最中に意識が覚醒し、金縛りとなります。

ストレス

ストレスを感じると、不眠だけでなく過眠を引き起こし、睡眠のリズムを崩してしまいます。思春期に睡眠麻痺になることが多い理由として、身体と心の変化が大きい時期であることから精神的に不安定になりやすいことが原因と考えられています。

睡眠の質の低下

就寝前にスマホやSNSなどをすることや寝室が適温ではない、夜勤などで仕事の合間に仮眠するなどは睡眠の質を低下させたり、睡眠分断となり、途中で何度も目覚めたり、浅い眠りになったりすることもあります。

疲労の蓄積

疲れが溜まり、金縛りになることがあります。睡眠時間が十分でないと、疲れがとれないばかりかそれ自体がストレスになったり、睡眠リズムを乱したりしていまい、金縛りの原因となります。

仰臥位で寝ている

仰向けになると金縛りの症状が起きやすいとされています。仰向け寝は横向き寝やうつ伏せ寝よりも体の力が抜けやすい体勢で、筋肉弛緩による運動麻痺が起きやすいことが理由のひとつだと考えられています。

また、横向き寝は不安定な寝姿勢なのでレム睡眠が中断されやすいですが、仰向け寝は安定しており、筋肉が緩んでも姿勢が変わりづらいことも理由だとされています。

睡眠麻痺とナルコレプシーとの関係

過眠症の一種であるナルコレプシーの症状の一つに、睡眠麻痺があります。

ナルコレプシーとは、日中に耐えがたいほどの眠気に襲われ、睡眠発作が起きてしまう病気です。十分な睡眠時間を確保しているにも関わらず強い眠気が生じることが特徴で、感情の高まりによって筋肉の力が抜けるカタプレキシーという症状を伴うこともあります。

睡眠麻痺の予防と対処法

金縛りにあった場合どうしたらよいでしょうか? 対処法を見てみましょう。

リラックス・深呼吸をする

金縛りになったとき、無理に体を動かすのは逆効果です。まずは金縛りにあっていることを自覚し、リラックス・深呼吸をしましょう。そして、指先などのからだの一部からゆっくり動かしていくことで、徐々に脳が察知して金縛りが解消します。

睡眠の質を上げ、生活リズムを整える

毎日同じ時間に寝て起きるという規則正しい生活を送ることで、生活のリズムを整え、睡眠の質を上げる効果が期待できます。

就寝前にお風呂にゆっくりと浸かったり、リラックスタイムを充実させることや、就寝前のカフェインやアルコール摂取を避けることで睡眠の質を上げることができます。

ストレスを溜め込まない

ストレスは溜め込まず、こまめに発散するようにしましょう。そのために、自分に合うストレス発散方法を見つけることが大事です。

睡眠外来を受診する

自分でできる対策をしても、金縛りに合うことが多い場合は、睡眠外来を受診しましょう。専門医に相談することで、金縛りになる原因がわかる可能性もあります。

いかがでしたでしょうか。金縛りは広く認知されている症状であり、心霊現象とよく結び付けられます。体験したことがある人も少なくないはずです。症状や対処法を知り、いざ体験したときも焦らないようにしましょう。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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