乳幼児突然死症候群に前兆はある?赤ちゃんを守る対策
乳幼児突然死症候群は子育てを始めた両親にとって非常に怖い病気でしょう。このような事があると聞いただけで寝ている子どものことが気になって仕方がないという方もいらっしゃると思います。
ここでは乳幼児突然死症候群の前兆や危険因子、有効な対策について解説します。
乳幼児突然死症候群とは
乳幼児突然死症候群の基本的な情報についてまとめておきましょう。乳幼児突然死症候群はSIDSとも略される病気です。
乳幼児突然死症候群が起こりやすいのはほとんどが0歳児で、特に生後2か月から4か月の赤ちゃんに多くなっています。ただし、そこをすぎると起こらないのではなく、稀ながら1歳を過ぎてもおこることがある病気です。
乳幼児突然死症候群は、ある日眠っている間に突然亡くなってしまう病気と定義されています。そのため、生まれつきの病気や感染症、窒息をはじめとした事故によるものは除外されます。
これらの原因がないのに、原因がはっきり分からず突然に乳児が死んでしまうのが乳幼児突然死症候群ということになるのです。
発症時期はどの時期でも起こりえますが、多くの場合寒い時期に起こっているという特徴もあります。そのため、環境への適応がうまくいかないことや、気づかない程度の何らかの感染症が原因でおこっている可能性が想定されています。
後述する対策方法が世の中に広まってきたこともあり、発症数は年ごとに減少してきています。しかしそれでも日本における乳児の死亡原因の中で上位に位置しています。
乳幼児突然死症候群に前兆はある?
突然死というぐらいですから、それまでに何の前兆もなくいきなり死亡してしまうことがほとんどです。少なくとも、現在のところ明らかな前兆として定義される徴候ははっきりしていないのです。
乳幼児突然死症候群はどのような子どもにも起こりえるのではないかと考えられています。
乳幼児突然死症候群になってしまった子どもについて分析すると、血液中の酸素の濃度が低下していたり、呼吸が停止していたことによって死亡した可能性が示唆される症例が多くみられます。
赤ちゃんは呼吸の調節が未熟です。このことが、乳幼児突然死症候群につながっているのではないかと言われています。通常であれば、低酸素に陥ったら呼吸をしっかりしようとしたり、呼吸が停止したらすぐに呼吸を再開しようとしたりする反応が起こるはずですが、呼吸が未熟な乳児ではその反応が起こらず、呼吸が止まってしまったままとなってしまい、回復せずに突然死となってしまうのではないかと考えられているのです。
また、生後直後ではなく生後2~4か月に多いことの原因としては、この時期に体の中の状態が不安定になっているためと言われています。
というのは、生まれるまでの間は、感染症やさまざまな体の異常に対抗する体の免疫機能は、母体に多くを依存しています。母体から免疫を担当するタンパク質が与えられており、生後もしばらくはその成分が体内に残っています。
しかし生後は免疫を自分で整える必要がありますから、体のなかで免疫の能力がだんだんと発達していきます。それがだいたい完成してくるのが生後6か月頃になります。しかし胎児のころに母体から与えられていた免疫は、だいたい生後2か月頃までにはなくなってしまいますから、2~4か月程度は免疫系が非常に弱い時期と言えるのです。
ですので、この時期には感染症をはじめとした体の異常に対抗しづらく、何らかの原因で急に死亡してしまう可能性が高まると言われています。
これらの理由から、全ての乳児に突然死症候群が起こってしまう可能性があり、乳幼児突然死症候群には前兆がないのではないかと言われているのです。
仮に死んでしまう前に呼吸が荒いとか、痙攣があるかなどの前兆があったとすると、心臓や脳などの異常がある可能性が示唆されますから、乳幼児突然死症候群の定義からは外れることになります。
乳幼児突然死症候群の危険因子
乳幼児突然死症候群は突然に発症しますが、危険因子が存在すると言われています。
最大の危険因子と言われているのがうつぶせ寝です。乳幼児突然死症候群は仰向けで寝ていても、うつ伏せで寝ていても発症することがあるのですが、圧倒的にうつ伏せで寝ている方が発症率が高いと言われています。
別の因子としては、粉ミルクの使用です。こちらも完全母乳育児でも、粉ミルクを併用する場合でも、完全粉ミルク育児でも、いずれでも乳幼児突然死症候群は発生しますが、確率としては母乳育児を行っている方が発症率が低いとされています。
また、親の喫煙も危険因子の1つです。これは妊娠中の喫煙も、産後の親の喫煙も含まれています。妊婦が喫煙すると胎児の低酸素をきたします。これにより、胎児の体重増加にも影響があるほか、呼吸中枢の発達にも悪影響を及ぼし、呼吸が未熟なまま生まれてしまう可能性があると言われています。これは、妊婦自身の喫煙も当てはまりますし、周囲の人の喫煙による受動喫煙でも起こると言われています。
生まれた後に新生児が受動喫煙することも、酸素化の低下をきたします。また、神経系の発達にも影響があると言われていますので、呼吸中枢の発達の未熟から突然死症候群が起こってしまうということが示唆されています。
新生児突然死症候群への対策方法
このような乳幼児突然死症候群はどのような対策をすることで予防できるのでしょうか。
非常にシンプルに言えば、危険因子を1つ1つ排除していくことが予防につながります。具体的にどんなことに気をつければ良いのかをみていきましょう。
あおむけに寝かせる
うつ伏せで寝ることが発症の危険因子ですから、仰向けに寝させることが重要です。1歳になるころまでは、たとえ昼寝のときでもうつ伏せにしないようにして仰向けで寝させるようにしましょう。
とはいえ、4か月頃になって非常に悩ましいのが、寝返りが始まることです。特に寝返りができるけれども寝返り返りができない状態、すなわち仰向けで寝かせても自分でうつ伏せになってしまい、その後仰向けに戻れない状態はリスクが高いと言えます。
このような時期には、うつ伏せになっても窒息しないようにやや硬めの寝具を選び、赤ちゃんの周りにぬいぐるみやタオルなど、顔を覆ってしまうものをおかないようにすることで、うつ伏せになっても窒息することがないように工夫するのが良いでしょう。
添い寝や添い乳をやめる
この時期には添い寝をしないとなかなか寝付かない、母乳を与えながらでなければ寝付いてくれないなどの問題に直面すると思います。
寝付かせのときに添い寝をする、沿い乳をするというのは寝かせのために必要ですが、そのまま一緒に寝てしまうことは避けましょう。
となりに親が寝ていると、乳児の寝返りを妨げることとなってしまい、うつ伏せのまま仰向けになかなか戻れないという状態になってしまうことがあります。そのため、寝付いたら乳児は乳児だけで寝かせる方が安全なのです。
できるだけ母乳育児をする
母乳育児の方が粉ミルクよりも乳幼児突然死症候群が起こりにくいという事は先に説明しました。実は、母乳中には免疫に必要なタンパク質が非常に多く含まれており、粉ミルク単独の育児に比べて免疫系が強いと言われています。
乳幼児突然死症候群の原因の一端に免疫系の未発達があると言われていますから、そこを補うために、母乳育児をすることで乳幼児突然死症候群を予防することができると考えられています。
もちろん、完全母乳育児はなかなか難しいという事情もあるでしょう。そのような場合でも、混合乳として少しでも母乳を飲ませることで免疫を補えば、乳幼児突然死症候群の予防につながるでしょう。
喫煙をやめる
妊娠中はもちろん、産後も喫煙をやめましょう。これは母親だけでなく周囲の大人にも当てはまります。
前述のように、妊娠中も、産後も喫煙の影響は胎児の呼吸器系に多大な影響を与えます。喫煙を避けることで突然死の可能性を下げることができます。
これらの対策全てを行っても乳幼児突然死症候群は起こりえますが、少しでも可能性を減らし、元気に育てられるように工夫していきましょう。