頬骨に痛みを感じる原因は?すぐに病院を受診すべき?
ほおぼねのことを頬骨といいます。この頬骨が痛むときにはどのような病気が考えられるのでしょうか。ここでは頬骨の痛みの原因と、病院を受診するかどうかの判断の仕方について解説します。
頬骨に痛みを感じる原因は?
頬骨に痛みを感じる場合、まずは外傷がなかったかを考えましょう。外傷でなければ、症状が出てきてから痛みが強くなってくるまでの期間を考えます。これらによって、さまざまな病気がある程度鑑別できます。それぞれどのような原因なのかをみていきましょう。
頬骨骨折
外傷の場合、一番心配されるのが骨折かどうかです。頬骨骨折を起こすと、患部が強く腫脹してきます。また、顎を動かすと痛みを感じます。
頬骨骨折に特徴的なのは開口障害の症状です。顎を動かす筋肉は、頬骨と頭蓋骨の間を通っています。側頭骨と顎を結ぶように走行するこの筋肉が、頬骨骨折を起こすと引っかかってしまい、顎を動かしにくくなってしまうのです。
顎を動かせないまでも、動かしただけで非常に強い痛みが走り、少ししか開けられないようであれば骨折している可能性があります。
頬骨骨折は、放置するとずれたままで固定され、開口障害の症状が残ってしまいます。また、治療をしようにも時間が経って固定されてしまった後だと手術も難しくなってしまうのです。
頬骨骨折を疑う場合は、早期に受診するようにしましょう。
急性副鼻腔炎
外傷以外の頬骨の痛みで最も多いのは副鼻腔炎です。
副鼻腔というのは、頭蓋骨の中に空いている空洞のことで、全ての副鼻腔は鼻腔と繋がっています。鼻の奥に洞窟の入り口があり、入り口をくぐり抜けると広い空間が広がっているというイメージです。
副鼻腔がなぜあるのかについては現在でもさまざまな説がありますが、鼻を通過する空気の加湿・加温、頭蓋骨全体の温度調節などを行っていると考えられています。
副鼻腔の内側は粘膜になっていて、副鼻腔内は常に加湿されています。しかし、入り口が狭いために異物が入り込んだら出ていきにくい構造となっています。そのため、副鼻腔の中には繊毛という構造が存在します。細い毛のような構造物が粘膜面に無数に存在しているのです。異物が侵入すると、この繊毛が動く事で異物を出口の方へ動かし、排出するようになっています。
しかし、鼻炎がおこっている場合や、もともと鼻中隔が彎曲しているなど、副鼻腔の出入り口が狭くなってしまうと、異物を出そうとしてもなかなか出せなくなってしまいます。このときに細菌などの感染症を引き起こす微生物が入り込んでしまうと、副鼻腔の中で感染が広がり、炎症を引き起こします。これが急性副鼻腔炎です。
副鼻腔炎がおこると、副鼻腔の中は粘膜が腫れて、熱を持ちます。また、体表面から副鼻腔のある場所をトントンとたたくと強い痛みを感じます。たたくだけではなく、周囲からの振動でも痛みを感じますから、急性副鼻腔炎がおこっている時には噛んだだけでも痛みがジンジンと響く場合があるのです。
急性副鼻腔炎は抗生剤による治療によって軽快します。また、鼻炎が原因の場合は鼻炎が落ち着くと副鼻腔の出口が広がり、自然に副鼻腔の内容物が排出されて軽快してくることもあります。しかし急性副鼻腔炎がしっかりと治療されなかったり、何回も繰り返したりした場合には炎症が長期化し、粘膜の正常が変化してきます。このような状態を慢性副鼻腔炎と言います。
慢性副鼻腔炎になってしまうと、粘膜が肥厚し、より出口が狭くなってしまいます。そのため、出口を広げるような手術が必要になることもあります。
特に副鼻腔のなかでも上顎洞と呼ばれる副鼻腔は、頬骨の近くまで広がる副鼻腔です。ですので、上顎洞に副鼻腔炎がおこると頬骨の痛みが感じられるようになります。
胸骨の痛みのなかでも、比較的急に、おおむね1週間程度をかけて痛みが強くなってきた場合で、噛んだときに痛みを感じるようなら急性副鼻腔炎を疑います。
帯状疱疹後神経痛
帯状疱疹というのは、水痘帯状疱疹ウイルスによる感染症です。しかし普通の感染症と異なり、ウイルスが体に侵入してくることで起こってくる症状ではありません。
もともと水痘帯状疱疹ウイルスは、幼少期に感染を起こすことがほとんどです。これが初感染で、いわゆる「みずぼうそう」です。みずぼうそうにかかると、ウイルスは免疫細胞によって攻撃を受け、数日経つと感染による症状は落ち着きます。しかし、ウイルスは死滅することはなく、体内の神経細胞の中に潜伏するのです。
潜伏したウイルスは、体の免疫が増殖を押さえ込んでいるのでそのままでは無害です。しかし、体が極度に疲労したり、ストレスを受けたりすると免疫の力が低下し、ウイルスが増殖を始めます。
増殖したウイルスは神経の走行に沿って増殖していきます。そのウイルスの広がりに伴って、神経の痛みが出現し、また少し遅れて皮膚に水疱を形成します。これが帯状疱疹です。
帯状疱疹の痛みは神経の痛みで、「ビリビリ」「ジンジン」といった表現をされる痛みになります。多くの場合は片側だけです。市販の痛み止めはなかなか効きません。最初は皮疹がなく、原因が分からないのですが、暫くすると皮疹が出てきて帯状疱疹に気づきます。
帯状疱疹は早くから治療を開始しないと神経痛が残ってしまいますので、早期に皮膚科を受診することが大切です。
三叉神経痛
三叉神経というのは、顔面の知覚を伝える神経です。この神経は、顔面の皮膚にあるセンサーが感知した感覚を、脳の方まで伝えます。
首より下の体の感覚はいったん脊髄に伝えられ、そこから脊髄を通って脳まで伝えられます。しかし、三叉神経は直接脳に入ります。
この三叉神経が脳に入るところのすぐ近くには大きな動脈が走行しています。この動脈が三叉神経を圧迫することで痛みを感じる事があり、これを三叉神経痛と言います。ただし、三叉神経痛の多くはこのように動脈で圧迫されることによる痛みですが、一部例外もあります。
いずれにしても、神経が圧迫されることによってズキンズキンとした痛みを感じます。特に動脈に圧迫されていることによって痛みが起こっている場合は、動脈の拍動に合わせて痛みがおこる事があり、痛みの特徴から三叉神経痛であると推定されることがほとんどです。
多くの場合は痛み止めで対処します。しかしどうしても痛みが治まらない場合は手術によって動脈と神経を離すこともあります。
上顎がん
上顎癌は、上顎に発生する癌のことです。多くの場合、先ほど説明した副鼻腔のなかでも上顎洞という副鼻腔の中から発生します。副鼻腔の中にある粘膜の細胞が癌になることで増殖をはじめていきます。
しかし癌になっても、表面からは見ることができず、発症初期にはほとんど症状がありません。しかしだんだんと大きくなってくると、骨に浸潤することもありますし、粘膜が腫脹して副鼻腔の出口を防いで急性副鼻腔炎を引き起こすこともあります。このように、さまざまな原因によって痛みを生じてきます。
また、上顎洞のすぐ上には眼球があります。上顎洞の癌が上の骨の方に浸潤していくと、上顎洞の上側の骨は非常に薄いのですぐに眼球の近くにまで癌が進展してしまいます。こうなると、眼球を動かす邪魔となり、眼球運動障害が出現してくることもあるのです。
急性副鼻腔炎を起こした場合は比較的急な痛みとして感じますが、そうでなければだんだんと痛みが強くなってくるという事が多いです。また、痛みがわずかなのに眼球運動障害で気づく場合もあります。
歯性上顎洞炎
歯性上顎洞炎というのは、歯の感染症が上顎洞まで広がった状態を言います。上の歯の根元は上顎洞に非常に近くなっています。そのため、虫歯など歯や歯茎の感染が起こると、骨を通じて上顎洞に炎症が広がっていくことがあるのです。
この場合、症状としては前述の急性副鼻腔炎と同じような症状に加えて、歯の痛みがある事が多いです。しかし原因が歯からの菌の侵入ですから、鼻の方の出口が開いているかどうかは関係がありません。歯や歯茎の方の治療をしなければ治癒しません。
頬骨の痛みに加えて歯も痛いという場合は、まずは歯科を受診するのが良いでしょう。
すぐに病院を受診するかどうかの判断方法
ここまで説明してきたように、頬骨の痛みはさまざまな原因でおこります。しかしいずれの病気や外傷も、早く治療をしないと後遺症が残ってしまうものがほとんどです。そのため、頬骨の痛みがある場合には早めに受診をすることがすすめられます。
特に急ぐべきなのは帯状疱疹でしょう。治療をしても永続的な神経痛に悩むこともありますので、1日と待たず受診をするべきです。
また、外傷や急性副鼻腔炎、歯性上顎洞炎など、頬骨をたたくと響く痛みがある場合には早めに治療を開始することで、短期間で治療が終了することが多くなります。ですので、そのような場合には数日以内に病院を受診しましょう。
そうでない場合でも、1か月近く痛みが治まらない場合は病院を受診することをおすすめします。頭蓋骨に関わる問題なので、痛みが治まらないということは何らかの重篤な異常である可能性があります。