急な吐き気の原因は?消化管のトラブルや薬の副作用の可能性も

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みぞおちから胸にかけてむかつきが生じて、嘔吐をもよおす吐き気。別名で悪心(おしん)と呼ばれることもあるこの不快な症状が急に生じることがあります。何が原因なのでしょうか?

ここでは、いくつも考えられる吐き気の原因について詳しく見ていきましょう。

急な吐き気の原因になる消化管のトラブル

急な吐き気に襲われたときは、胃や食道といった消化管に何らかのトラブルが生じている可能性があります。

急性胃炎

胃が荒れるとよく起こるのが急性胃炎です。

例えば、アルコールをたくさん飲むと、胃の粘膜を覆っている粘液がはがれて、そこからアルコールが浸透し、胃酸が直接胃の粘膜にあたります。

アルコール性による急性胃炎の発症頻度はおよそ10%程度と言われており、飲酒の影響のみならずコーヒーなどの過剰摂取などでも急激に胃炎は起こりえます。

胃の粘膜が充血してむくみが生じ、さらに刺激を受けることで胃内に小さな点状の出血やただれのような病変がみられるようになります。

急性胃炎を引き起こす3大原因は、薬剤性、アルコール性、ストレス性と言われていますし、それ以外にも、アニサキスやピロリ菌による感染症も原因となります。

急性胃炎の原因の約半数が薬剤性と言われており、具体的にはアスピリンやイブプロフェンなどの解熱鎮痛剤やステロイド、抗生物質などが挙げられます。

急性胃炎の原因は精神的なストレスがほとんどですが、肉体的な要因に伴うストレスでも急性胃炎は発症する可能性が考えられます。

日常生活における心理的なストレスだけではなく、例えば脳血管疾患や熱傷、外傷などのイベントを体感している時や大きな手術後などで身体的ストレスが甚大に起こっている際にも急性胃炎は起こりやすいと考えられます。

一度急性胃炎を発症すると、みぞおち辺りにキリキリとした痛みや急な吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状が生じます。

胃の粘膜の障害が強い場合には、胃の粘膜からの出血が強くなる結果として吐血をしたり、下血を起こしたりすることもあります。

急性胃炎の症状そのものは安静にすることで数日のうちに改善することが期待できます。

食中毒

食中毒は、食事が主な原因となって下痢や嘔吐などの消化器症状を引き起こす病気であり、その原因によって、「細菌性」、「ウイルス性」、「自然毒」、「化学性」に分類されています。

季節的に、夏場に多い食中毒として、細菌は高温多湿を好んで増殖することからカンピロバクター、腸管出血性大腸菌など細菌性食中毒が代表的ですが、冬に多い食中毒としてノロウイルス、ロタウイルスなどによるウイルス性食中毒が知られています。

年間を通じて、自然毒食中毒は、フグ毒、毒キノコ、トリカブトなどによって発症すると考えられますし、化学性食中毒は洗剤、農薬、有機水銀などの化学性物質を摂取することに伴って腹部症状を呈すると言われています。

食中毒に伴う典型的な症状としては、急な嘔気、下痢や嘔吐に合併して脱水症状を引き起こすことが知られています。

逆流性食道炎

逆流性食道炎は、下部食道括約筋の機能が低下することで、胃酸が逆流を起こして食道に炎症が広がるのみならず、食道の蠕動運動が悪くなると胃の内容物が一時的に逆流した際に迅速に胃に送ることが困難となり、食道にさらに炎症を惹起させることに繋がります。

逆流性食道炎は、加齢・食事の内容・肥満・姿勢などによって、食道を逆流から守る仕組みが弱まるか、胃酸が増えすぎることで胃液が逆流するために起こります。

逆流性食道炎のその他の原因として、脂肪分や蛋白質の多い食事内容を食べ過ぎることで胃酸が過剰に増加するなども考えられています。

強い酸性を呈する胃液や胃で消化される段階である食べ物が食道に逆流して炎症を引き起こすことによって胸やけや吐き気など色々な症状を自覚します。

本疾患は成人の約15%前後が罹患していると推定されており、特に中高年や高齢者に多く発症し、適切な治療を受けない場合は嘔気症状などが持続することで日常生活に少なからず支障をきたすようになります。

胃潰瘍

胃潰瘍はストレスや薬物などが原因で発症することが多く、現代社会における代表的な病気であると言えます。

胃液中に含まれる塩酸やペプシンといった物質が、過剰に産生されて胃を保護している消化管粘膜を消化してしまう、あるいは胃粘膜を防御している因子が減弱することによって胃壁に潰瘍性病変を形成します。

胃潰瘍における自覚される症状の約9割は腹痛であり、そのほとんどが上腹部のみぞおち周囲に腹痛を感じることが多く見受けられ、基本的には食後に痛みが出現しやすく、長時間に渡って腹痛が継続します。

胃潰瘍に罹患しても全く症状を感じないケースもあって、自分で気が付かないままに知らず知らずのうちに潰瘍が悪化して胃に穴が空いて穿孔を引き起こすことによって、初めて腹部の激痛を自覚して胃潰瘍が発見される場合もあります。

胃潰瘍では胃粘膜が胃酸などによって傷つけられて、吐き気や嘔吐症状を引き起こす比較的身近な病気であり、胃の粘膜が強い炎症を起こすために、胃の痛み以外にも急な吐き気、腹部不快感、嘔吐など多彩な症状を呈することがあります。

消化管以外に原因がある場合

急な吐き気の原因は消化管以外にも、次のようなものが考えられます。

メニエール病

メニエール病とは、耳のいちばん奥にある内耳の病気で、原因ははっきり分かっていませんが、過労やストレスがきっかけとなって起こると考えられていて、自分や周囲がぐるぐる回るような激しいめまい症状が出現します。

急な吐き気や冷や汗、動悸を伴うことも多く、めまいの持続時間は30分から数時間、めまいの起こる頻度も連日から年に1回という人までケースバイケースです。

また、めまい症状が起こる前に、耳鳴りや難聴、耳が詰まった感じなどの症状が現れることが多く、ほとんどは片方の耳に起こりますが、その後、20~30%の人がもう片方の耳にも起こります。

メニエール病は反復する慢性疾患であり、多くはめまい発作を繰り返すたびに症状が悪化し、進行の早い人では5年から10年で日常生活に支障を来すほどの高度の難聴になってしまうこともあります。症状を放置せずに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

くも膜下出血

脳の表面にある血管(脳動脈瘤)から出血して脳表が血液で覆われてしまう疾患をくも膜下出血と呼んでいます。

通常であれば、脳の構造は外側から硬膜、くも膜、軟膜と呼ばれる三つの膜で重なるように包まれており、くも膜下腔というのはくも膜と軟膜の隙間を指します。

くも膜下出血とは、脳を覆う3つの層の隙間であるくも膜下腔と呼ばれる空間に出血を生じる病気です。

くも膜下出血は発症すると、意識のある場合には「突然バットで殴られたような激烈な頭痛」や嘔吐症状を生じることが特徴的です。

また、くも膜下腔における出血量が多い場合には脳が圧迫されることで重篤な意識障害を呈することも多く、突然死の原因となり得ます。

さらに、緊急的な手術などの治療によって救命できたケースでも後遺症が残るリスクが高く、非常に恐ろしい病気のひとつです。

脳はそれぞれの場所によって担っている機能がさまざまに異なり、障害された脳の場所によって典型的な症状も違って、くも膜下出血の場合には、強い頭痛症状、あるいは意識障害や言語障害、けいれん発作など多種多様な神経症状が出現する可能性があります。

頭痛は吐き気や嘔吐を伴い、意識が朦朧もうろうとする・意識を失うといった意識障害を生じることも少なくありませんし、脳内に出血を伴う場合には手足の麻痺や言葉が出ないといった神経症状を伴います。

薬の副作用

薬は一般用医薬品と医療用医薬品の二種類に分類できます。

一般用医薬品である市販薬は、軽い病気や不快な症状を改善するために、自分の判断と責任で購入して使用する薬で、ほとんどの市販薬が有効性より安全性が優先されています。

作用が穏やかで、用量、用法をきちんと守って使用すれば、問題が起こることはそれほど多くはありませんが、急な吐き気など副作用症状が全く出ない薬はありませんし、ごくまれに重い副作用が生じることもありますので、市販薬を購入する際は、薬剤師に相談しましょう。

次に、医師の処方箋が必要である医療用医薬品は、医師や薬剤師などの指示通りに服用しなければならず、市販薬に比べて薬剤作用が強く、取り扱いを誤ると吐き気症状を含めて副作用を起こす危険性が高いといえます。

また、薬の副作用には他の薬との相互作用として出現するタイプもあって、主な副作用としては、食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢などの胃腸障害、心悸亢進、ふらつき、眠気、発疹、かゆみなどが代表例です。

それ以外にも、肝臓障害、血液障害、内分泌障害、代謝障害などの副作用もありますので、薬を使用する前には、どんな副作用があるのか、薬剤師に説明を受けましょう。  

まとめ

これまで、消化管のトラブルや薬の副作用など急な吐き気の原因について解説してきました。

吐き気とは、吐くまでに至らない気持ちの悪い状態のことであり、健康な人にも病気の人にも吐き気症状は起きるものです。

日常的な暴飲・暴食、慢性的なストレスなどの日常生活上の原因で起こる場合もあれば、急性胃炎や食中毒、胃潰瘍、逆流性食道炎などの消化管の病気、またはくも膜下出血やメニエール病など消化管以外の病気が原因で引き起こされることもあります。

また、治療目的に使用する薬が原因で副作用として吐き気症状を引き起こすことがありますので、心配であれば担当医や薬剤師に相談しましょう。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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