舌にできる白い口内炎の種類と、間違えやすい病気

口内炎 アイキャッチ
お悩み

舌に何か白いものができると、悪い病気ではないかと気になるのではないでしょうか。口内炎は口腔粘膜にできることが多く、舌にはなかなかできないので、治りが悪いとがんではないかとさらに不安は強まるでしょう。ここでは舌にできる口内炎の種類と、口内炎と間違えやすい病気について解説します。

口内炎とは?

口内炎のしくみ

そもそも、舌炎も口内炎も同じものです。口腔の中は粘膜で覆われていて、舌も同じ粘膜で覆われています。しかし、粘膜の下が口腔粘膜ではそのまま筋層になっているのに対し、舌は味蕾などさまざまな構造物が存在しているため、性状が変わって見えています。

ですので、舌にできている白いものもほとんどは口腔粘膜にできている口内炎と同じものなのです。

では、口内炎とはそもそも何なのでしょうか。簡単に言えば、粘膜が損傷を受けて修復されている過程のことを言います。口腔内は唾液のような消化液に加えて、食物などさまざまなものが入ってきます。そのようなものから筋層やさまざまな機能を持った組織を守らなくてはなりません。そのため、粘膜という構造を表面に持つことで大事な構造物をカバーして、なおかつ自分自身の消化液で消化されないように粘膜は常に作り変えられ続けるような構造になっています。

しかし、傷がついたり、粘膜を再生する機能が低下したりしてしまうと粘膜が途切れてしまい、粘膜の下の組織が露出してしまいます。そのためすぐに粘膜を修復するために炎症という反応が起こってくるのです。

炎症反応は、感染症が体内に入ってきたとき等にも起こってきますが、白血球が集簇(しゅうぞく)し、身体を守るためにさまざまな物質を分泌して身体を守ろうとする反応です。

損傷した組織では組織を修復するための原料を血液中から呼び集め、修復をします。そのため、最初は多くの材料が集まるために周辺を中心に盛り上がり、また白っぽくなります。修復が進んでくるとだんだんと元通りの粘膜になり、いらなくなった材料が取れていき跡を残さず修復されます。

炎症が起こっていたり、粘膜の下の組織が露出していたりすると、それ自体で痛みを感じるようになります。そのため、口内炎は多くの場合は痛みを伴います。粘膜がかろうじて残るなど粘膜の下の組織が露出していない場合や炎症が軽度の場合は痛みを伴わない口内炎となる場合もあります。

舌にできる白い口内炎の種類

舌にできる口内炎

前述の通り、舌にも口腔粘膜と同じような口内炎ができます。そのため、舌にできる口内炎の分類も口腔粘膜にできる口内炎の分類と同一のものとなります。口内炎の分類は、炎症が起こった原因によってなされます。どのようなものがあるのでしょうか。

アフタ性口内炎

アフタ性口内炎は最も良くみられる口内炎です。原因は端的に言うと、粘膜を作る能力が低下してしまうことによっておこってくる口内炎です。

粘膜を作る能力は、身体の栄養状態や心理状態、全身の疲労度などによって左右されます。すなわち栄養不足やストレス、疲労、睡眠不足などがあると粘膜を作る能力が低下してしまいます。これは、免疫力の低下によっておこってくると考えられています。

栄養は、特にビタミンBの不足によるものが大きいです。ビタミンBは粘膜を作る際に欠かせない栄養素ですが、他の身体の中の重要な役割も担っているため不足するとまず粘膜の合成が犠牲となり、口内炎を引き起こしてしまいます。

アフタ性口内炎はだいたい2~10mm程度の大きさで、ほとんどの場合円形をしています。色は縁が赤く、中が白い構造をしています。中央部は凹んで潰瘍になっていて、粘膜下の組織が見えている状態ですから、触ると痛みを感じることが多いです。また、一つだけではなくいくつかの口内炎が集簇することもよくあります。

基本的には安静とビタミンBの補充で改善してくる口内炎になります。

カタル性口内炎

カタル性は簡単に言えば傷が原因でできる口内炎です。歯のかぶせ物が合っていなかったり食事中に噛んでしまったり、火傷をしてしまったりするとおこってきます。また、ストレスが強いときにかみしめがおこり、そのせいで普段はおこらない場所に歯の接触がおこり、傷がついてしまう事もあります。

口腔粘膜に傷がつくと、先ほどの説明の通り修復するために炎症が起こり、痛みが起こってきます。また、口腔内は常在菌の宝庫ですから、粘膜が傷つくとそこから細菌が入り込み増殖します。それによって赤みを帯びた口内炎となるのが特徴です。また、水疱を形成することもあります。

感染によって周囲も炎症を起こすので、アフタ性口内炎と違い白い縁取りははっきりせず全体に赤っぽくなる事が多いです。

こちらも基本的には経過を見ていれば徐々に改善してきます。ビタミンBの内服は回復を促進させる場合があります。

ウイルス性口内炎

唇が痛い女性

ウイルスが口腔内に感染し、それに対する免疫反応が粘膜面でおこる事によって起こってくる口内炎です。ウイルスとしては主にヘルペスウイルスが原因となります。ヘルペスウイルスは口唇ヘルペスが有名ですが、同じ事が口腔粘膜や舌粘膜でおこるものです。

ヘルペスウイルスは他の人から感染してくることによって口腔内に入り込むこともありますが、多くの人は既に体内にヘルペスウイルスを持っています。一度感染した後、完全には身体から排除されることなく残っていて、ストレスやその他の原因で免疫が弱体化したときにウイルスの増殖が始まり、症状が出てきます。

ウイルス感染が起こった粘膜ですから、白血球をはじめとした免疫担当細胞が集簇し、炎症が起こります。ウイルスは粘膜の中で増殖をしますから、粘膜の中に水分を貯留した水疱を形成します。また、水疱は刺激で容易に破れて潰瘍やびらんとなります。比較的深く、粘膜の下の組織自体も損傷する事が多いため、強い痛みを伴うことがほとんどです。炎症反応も強いですから、局所に熱感を感じたり、場合によっては全身性に発熱をしたりすることも時折あります。

治療は一般的な口内炎の治療に加えて、抗ウイルス薬を使用します。

ニコチン性口内炎

タバコの中に含まれるニコチンによって引き起こされる口内炎です。日常的に喫煙している人におこります。

はっきりとした機序は分かっていませんが、長年にわたりニコチンをはじめとしたタバコに含まれる成分が粘膜を刺激することで粘膜が防御のために過形成を起こすことが原因ではないかと言われています。そのため、だんだんと分厚くなり、白っぽさを増します。痛みを起こすことは多くありませんが、すこし食べ物がしみる程度の症状がおこる事があります。

細胞分裂が活発になっている証拠ですから、がんに移行する危険性も指摘されています。

口内炎と間違えやすい病気

口元が気になり、鏡を見る女性

口内炎ではないものの、同じように口腔内に白を基調とした病変を作るものがあります。一見すると口内炎に見えますが、放置すると重篤化する事もある病気のため注意が必要です。

口腔カンジダ症

カンジダとは真菌、すなわちカビの一種です。元々口腔内に常在菌としていることが多い菌です。一部はウイルス性口内炎と同じように炎症を起こして口内炎となります。このような口内炎をカンジダ性口内炎とも呼びます。

口内炎以外の状態としては、粘膜の上に白い膜を形成する「偽膜性カンジダ症」や、粘膜の表面が赤っぽく見える「萎縮性カンジダ症」、それらの感染状態が慢性化することで粘膜が分厚くなってくる「肥厚性カンジダ症」などに分類されます。

口腔カンジダ症の場合、自覚症状はあまりありません。カンジダ性口内炎になった場合には痛みを感じる場合もありますが、それ以外のカンジダ症はあまり痛みを感じません。

口腔内をみると白っぽいコケのようなものが付着している事が多く、一目で何かおかしいと感じることでしょう。放置するとだんだんと口腔粘膜の肥厚がおこってきて治療に難渋することになりますから、早いうちから抗真菌薬の内服を開始する事が重要です。

白板症

口内白板症ともいいます。これは舌や口腔粘膜に生じる白色の斑点で、中年男性に好発するという特徴があります。

原因はさまざまですが、長期間にわたって舌の一部分が刺激され続ける事が多くの場合原因として認められます。例えば近くに虫歯があって常に感染し続けていたり、義歯によって機械的に圧迫され続けたりと言った刺激が原因となります。喫煙や飲酒も原因となります。

また、一部の原因としてアトピーやビタミンAの欠乏も白板症の原因となっているようです。

症状は、白い斑点ができるだけで痛みは感じません。しかし、経過をずっと見ていると癌化する事があります。そのため、白板症は前がん病変と捉えられており、積極的に治療を勧める口腔外科医もいます。すぐに手術とは行かなくとも、少なくとも注意深く経過を見ることが勧められます。

口腔がん・舌がん

口腔内にできるがんのことを口腔がんと言います。そのなかでも特に舌にできるものを舌がんと言います。口腔がんも舌がんも、粘膜の細胞が癌化することによっておこってきます。基本的には長年にわたって刺激されていることによって細胞が変性しおこってくるものです。中年以降で喫煙者に多いという特徴があります。

刺激が与えられる部分にがんができやすいですから、ほとんどの場合舌の辺縁部にできます。

がんになると白板症と異なり細胞が積極的に増殖する結果、内部の細胞への血液が不足してしまい、壊死を起こします。壊死を起こした細胞は脱落して潰瘍になります。そのため、非常に強い痛みを伴うことが多いのが特徴です。また、出血を伴い、表面が凸凹したいびつな形をしています。一方で、舌の他の部分には影響がないので、味覚障害などの舌の機能障害はきたしません。

治療としては小さいものであれば部分的に切除した上で放射線治療を行います。がんが大きくなった場合は大きく舌を取ったり、場合によっては頸部の組織も取ったりするなど大がかりな手術が必要になることもあります。

舌がんは早期に治療をすることが大切です。通常の口内炎であれば1か月もあれば改善しますから、1か月以上改善しない、出血が続くなど、何かおかしいと思ったらすぐに耳鼻科を受診することをお勧めします。

郷正憲

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。 「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

プロフィール

関連記事