ベーチェット病とは?口内炎が治らないときに考えられる病気

口内炎がなかなか治らずに困っている人はいないでしょうか。もしかしたらその口内炎は何かの病気の症状かもしれません。ここでは、なかなか治らない口内炎をきたすベーチェット病や口内炎と間違いやすい病気について解説します。
目次
口内炎はどれくらいで治る?

口内炎はどれくらいで治るのでしょうか。基本的な治る過程はどのような口内炎でも同じですが、大きさや種類によってある程度治り方に差が出てきます。
小さいアフタ性潰瘍であれば、最初は黄色い色をしていてだんだんと粘膜組織が再生し、上皮化が起こってくると灰色になってきます。これぐらいになってくると、しみるような痛みもなくなってきます。だいたいこの状態になるまでに7日から10日ぐらいかかります。
一方、1cmを超えるような大きいアフタ性潰瘍になってくると、治るのに少し時間がかかります。だいたい10日~40日と、比較的長い期間かかって治ってきます。そしてこのようなアフタ性潰瘍だと、治った後も瘢痕となり後が残る場合が出てきます。
ヘルペスウイルスによって起こってくる、ヘルペス性潰瘍の場合にはだいたい10日程度治るのにかかるとされています。
ベーチェット病とは

ベーチェット病は膠原病の一種です。膠原病というのは自分自身の免疫が誤って自分自身を攻撃してしまうことで起こってくる病気の総称で、自己免疫疾患の一種です。
免疫は自分自身の身体に入ってきた異物や微生物、あるいは自分の身体の中で産生された物質など、自分自身が必要としないものを排除するためのシステムのことです。自分自身にとって必要なものなのか、必要ないものなのかを区別するのは非常に精密なシステムによって制御されているため、普通であればなかなか異常が起こることはありません。
しかし、何らかの理由で免疫に異常をきたしてしまうと、自分自身の身体の中でさまざまな異常が起こってきます。よくみられる免疫の異常としては、花粉症があります。花粉は自分自身にとって異物ではありますが、過剰に反応する必要はない物質です。しかし、免疫に異常が出てくると花粉が少し体内に入ってくるだけでも免疫が異常に反応して鼻水やくしゃみなど、様々な花粉症の症状を発症するのです。
花粉症の場合、花粉に対して特異的に結合して免疫を異常に亢進させる物質として、抗体が関わっています。多くの自己免疫疾患では、自分自身の細胞に結合する特異的な抗体が見つかることが多く、この抗体が産生されるようになるのが病気の発症のスイッチとなります。
ベーチェット病も、そのような免疫の異常で起こってくる病気の一種です。しかしベーチェット病では特異的な抗体がなく、原因ははっきりと分からない事が多いと言う特徴があります。
約半数のベーチェット病患者でHLA-B51という遺伝子がみられます。多くの場合はこの遺伝子異常を持っているところに何らかの感染が加わることで免疫が異常に働くようになり、様々な症状をきたしてくると考えられています。
遺伝子異常があるからといって生まれてすぐに症状が出てくるわけではありません。概ね20歳から40歳頃の間に症状が出てくる人がほとんどです。
ベーチェット病の症状

ベーチェット病では全身の様々な場所で免疫細胞が異常な行動を起こし、様々な症状を起こしてきます。
アフタ性潰瘍
ほとんどの場合、初発症状としてみられるのが口腔粘膜のアフタ性潰瘍です。アフタ性潰瘍は口内炎の一種で、口腔粘膜に何らかの原因で免疫細胞が集簇(しゅうぞく)して炎症反応が起こり、そのせいで粘膜が欠損している状態のことを言います。
アフタ性潰瘍の特徴としては、普通の口内炎以上に非常に痛いということがまず挙げられます。通常の口内炎では粘膜表面からダメージが起こってきてだんだんと深くなってくるため、粘膜がある一定以上深くなってくると痛みが出てきます。しかしその頃には修復も同時に進んでいるため、痛みはそこまで強くないことが多いです。
しかしベーチェット病の潰瘍は、粘膜の深い層から損傷が起こってくるため、潰瘍自体が非常に深く、一気に進行するので痛みが非常に強くなります。また、同じような反応が口の中で同時に、あるいは時間差で起こってきますから、口内炎が多発したり、治ってもすぐに別の場所にできたりといったことが起こってきます。
その他の症状
他の症状としては、おもに3つが挙げられます。
1つ目がぶどう膜炎です。ぶどう膜というのは眼球を構成する膜の一種ですが、そこに炎症が起こってきます。特に瞳孔の中に膿がたまる前房蓄膿はベーチェット病に特徴的な眼症状とされています。
2つ目が外陰部の潰瘍です。口内炎と同じように、外陰部の粘膜などに有痛性の潰瘍が多発し、治っても再発を繰り返します。
3つ目が皮膚症状です。特に多いのが下腿部に結節性紅斑という、赤みを帯びた固い結節を生じます。他にも毛嚢炎用発疹といって、毛穴の周りが赤くなる皮膚症状や、静脈血栓による血管拡張や皮下硬結が見られることがあります。
5つの副症状
この3つに加えて前述の口腔内のアフタ性潰瘍を合わせた4種類を主症状といいます。
また、頻度は低いですが他にも症状が診られ、主に5つが挙げられます。この5つの症状を副症状と言います。
副症状に挙げられるのは、髄膜炎などの中枢神経病変、関節炎、消化管の潰瘍などの消化器病変、精巣上体炎、静脈炎や動脈瘤などの血管病変の5つです。これらの症状は、頻度は主症状ほど多くはありませんが、この内のいずれかは主症状に合わせて発症することが多くなります。
主症状のうち、4つ全てがそろうものを完全型のベーチェット病と言います。また、3つの主症状がみられるものや、2つの主症状に加えて2つの副症状がみられるもの、眼症状に合わせて1つの主症状がみられるもの、眼症状に合わせて2つの副症状がみられるものを不全型のベーチェット病と言います。
口内炎と間違えやすい病気

難治性の口内炎となると、ベーチェット病以外にも多数の病気が挙げられます。簡単に触れておきましょう。
口腔がん
口腔内のがんは、時に痛みを伴い、自然に治癒する事はありません。
がんは細胞が異常に増殖してしまう病気です。口腔がんは、口腔内の粘膜を構成する細胞が癌化し、異常に増殖してくることで起こります。そのため、最初は局所の粘膜が肥厚してきます。
しかし進行するに従って、増殖した細胞が壊死してしまい、粘膜の表面が剥がれ落ちて潰瘍となります。特にがんの中心部に多く起こります。この潰瘍は周囲の細胞増殖をきたしていますからゴツゴツしており、また中心からはがんのための血管増生を反映して出血が起こりやすいのも特徴です。
さらに進行してくると、がんがどんどんとおおきくなり、頻繁に出血するようになります。
一方で、痛みを検知するセンサーもなくなり、口内炎なのにむしろ痛みがないということも多くあります。痛みがないのにひどくゴツゴツし、出血している病変となると口腔がんを疑う所見になります。
血液のがん
血液がんでも口内炎ができる場合があります。
血液がんの場合、白血病に代表されるように免疫機能が低下することでさまざまな症状が起こってきます。風邪を引きやすかったり、疲れやすかったりといった症状が起こってきますが、口内炎も初発症状の一つです。
口腔内の免疫機能が低下することによって、粘膜の産生、再生が滞ってしまい口内炎がすぐにできてしまいます。
ただ、血液がんで口内炎のみの症状ということはなく、少なくとも倦怠感はあるはずです。また、易出血性による皮下出血の多発などもよく起こってきます。
金属アレルギー
歯科治療の被せ物で使われる銀歯は、金や銀、パラジウムなどの合金によって作られています。これらの金属を合わせることによって、耐久性が良く、加工しやすいものができるのです。
一方で成分の一部であるパラジウムは金属アレルギーを起こしやすいという特徴があります。他には少量ですが、ニッケルやコバルトクロムなども使用されることがありアレルギーの原因となります。
金属は唾液や汗に触れるとイオン化して、タンパク質と結合することによってアレルゲンとなります。一定の許容量を超えてイオン化した金属が増えると、金属アレルギーの発症につながります。
歯科治療による金属アレルギーは、大きく分けて2種類に分かれます。1種類目が接触性皮膚炎です。銀歯が触れている場所が、アレルギー反応を起こして変性します。特に接触している口腔粘膜や舌に口内炎ができることで気づくことがあります。
もう1つが全身性金属アレルギーです。口腔内だけではなく、体の様々な場所に掌蹠膿疱症などの症状として現れてきます。手のひらや足の裏にぶつぶつとした水泡ができたり、かさぶたのようなものができたりします。
診断はパッチテストと言って、歯科治療に使われている成分を皮膚に当てて、反応が起こるかを見ます。陽性だった場合には、歯の被せ物や詰め物の種類を変えるなどの対応が求められます。
白板症
白板症は歯茎や舌の側面、頬の内側の粘膜といった口の中の粘膜に現れる病変です。こすっても除去できない白斑状の病変を示します。明らかな原因は不明ですが、詰め物や入れ歯などの慢性的な刺激によって起こってくるとされています。それに加えて飲酒や喫煙などの刺激が常に加わったり、栄養不足があったりといった条件が重なると、発生しやすくなります。
白板症を放置してはならないのは、そのまま放置するとガン化する可能性があると言われているからです。白いものが見えてなかなか治らない場合には、病院を受診した方がいいでしょう。
扁平苔癬
扁平苔癬は、皮膚や粘膜にできる炎症を伴う角化性の難治性炎症のことです。外見の特徴としては、粘膜の上に白いレース状の角化病変が見られ、周辺に赤みを伴います。よく起こるのは頬粘膜ですが、舌や歯肉、口唇にも生じてきます。多発することもあります。また口腔だけではなく爪や手背、四肢、陰部などの皮膚にも生じることがあります。
炎症が起こっていますから、触ると痛みを感じたり、水分がしみたりといった症状が見られます。他には出血や味覚異常、灼熱感などを伴います。
扁平苔癬の原因ははっきり分かっていません。ただし前述のように、銀歯などの歯科用充填物によってアレルギー反応が起こり、これによって扁平苔癬が起こっているという説もあります。
扁平苔癬の場合、口腔粘膜以外の病変や、ウイルス性肝炎、肺線維症などといった合併症を起こす場合があります。
初期には、口内炎と見分けがつかないこともよくあります。しかし、それでも10日以上治らないとなると口内炎ではなく、扁平苔癬ではないかと考えることが多いです。気になる症状があるようなら病院を受診しておいた方がいいでしょう。
なかなか治らない口内炎の症状に注意
基本的に口内炎は、1週間から長くても2週間程度で治ってきます。また、よほど栄養状態が偏っているのではなければ再発しても1か月程度で全ての口内炎が落ち着いてくることがほとんどです。
ですので、それ以上の期間一つの口内炎が治らなかったり、治ってもすぐ再発するといったことを繰り返すような場合には何らかの病気があることを疑います。当てはまるようなら、まずは内科を受診して相談するようにしましょう。