手水虫(手白癬)の特徴は?感染経路や市販薬の選び方を解説
水虫は足にできるもの、とお考えの方も多いと思います。実際には足だけでなく、手にも水虫ができることがあります。ここでは手水虫ではどのような症状が出て、どのように治療をするのか解説します。
手水虫(手白癬)とは
足にできる水虫が手にもできるのが手水虫です。原因は水虫菌、医学的には白癬菌による感染症です。白癬菌はカビ、すなわち真菌の仲間で、非常に多くの種類があります。
白癬菌は土壌など環境中に非常に多く生息しているカビの一種です。しかしそのうちの一部は皮膚の角質にあるケラチンを栄養として成長し、人の皮膚に好んで生着します。とくに高温多湿の環境で多く増殖しますから、足の裏や指の間によく生着します。
手も足と同じように汗をよくかく部分ですから、手に生着して増殖することもあるのです。
白癬菌についてもう少し詳しく説明しておきましょう。白癬菌は皮膚に常在する糸状菌の一種です。糸状菌というのは、その名の通り意図のように細長い菌で、そのなかでも水虫を起こす菌は白癬菌属をはじめとして、表皮菌属、小胞子菌属などがあります。特に日本では白癬菌のなかでもT.rubrumとT.interdigitaleの2種類がほとんどで、白癬症の95%程度を占めています。
白癬症は、白癬菌がどの深さに感染するかによって潜在性白癬、炎症性白癬、深在性白癬に分類されます。このなかでも手や足にできる白癬症は潜在性白癬に分類されています。
白癬菌をはじめとする真菌は細菌とは違い、非常に強固な構造をしています。細菌は人の細胞とおなじような構造をしているのに対し、真菌は非常に強固な細胞壁を持ち、頑丈な殻に包まれた状態です。
そのため、熱や化学物質に対して抵抗性があり、頑固に感染を続けます。すこしこすったぐらいではなかなか脱落してこないのです。
手水虫の症状の特徴
手水虫は、足白癬とおなじような症状が手に起こってきます。多くの場合指と指の間の蒸れやすい部分が垢っぽくなり、ちいさな水疱を来します。また、皮膚がぽろぽろと脱落します。
かゆみも伴い、かくことで皮膚の脱落が非常に強くなります。さらに汗をかくと白く浸軟してきます。かいて脱落した皮膚の跡はびらんになることもあります。
また、足白癬と同じく、爪白癬を来すこともあります。爪白癬はその名の通り爪の水虫で、爪が白濁したり、ボロボロになったりする症状がみられます。
このように、足の水虫と同じように指の間に生じる手水虫のことを指間型白癬と言います。
他の症状としては、手のひらや指自体に水ぶくれがたくさんできる手水虫もあります。このようなタイプを小水疱型といい、指間型白癬から発展して出てくることがあります。このタイプの特徴としては特に強いかゆみが出てくることがあります。
意外なことに、これらの足に多いタイプは手水虫のなかではやや割合が少ないタイプになります。手水虫で多いタイプは角化型と呼ばれるタイプです。角化型の手水虫は手のひらの広い範囲に生じてきます。
その名の通り、手の角化が強く進行するタイプになります。手のひらの皮膚が分厚くなったり、固くなったりします。また、硬い皮膚は水気を含みませんからガサガサになったり、ひび割れが起こったりします。
また、角化型は他の型とことなり、かゆみがあまりないというのも特徴になります。
手水虫の感染経路
手水虫の感染経路として最も多いのは、足に感染してから手に感染するという経路です。感染した足を頻回に触ることで手に感染が広がります。
というのは、手自体は靴下で蒸れる足と異なり、比較的乾燥した環境となり、手洗いも良く行いますから感染が成立しにくくなります。足白癬のようにバスマットなど他の人から感染するような経路ではなかなか手に感染を起こしてくることは無いのです。
しかし、ごく稀に足白癬がないのに手白癬に感染してしまう場合もあります。代表的なのは手に傷がある場合や、免疫力が低下している場合などです。このように感染しやすい環境が整っていると、手白癬に直接感染してしまうこともあります。
手水虫を治す方法
手白癬を治すためには、まず清潔にして乾燥した環境を保つことです。
しかし、前述の通り白癬症の原因となる白癬菌は非常に強固な壁をしており、頑固な感染が起こります。そのため、洗うだけで治ることはまず無く、抗真菌薬の使用が必要となります。しかも、短期間では無く、長期間使用するのが基本です。
具体的な使用期間としては、指間型白癬で2か月以上、小水疱型白癬で3か月以上、角化型で6か月以上の使用が必要となります。この期間、しっかりと外用を続け、休まないことが必要です。白癬菌は増殖力も強いため、薬を休んでしまうと休んでいる間に増殖し、せっかく状態が良くなったのにまた悪化してしまうことがあります。
また、とくに角化型は表在型白癬症とはいえやや皮膚の深いところにまで感染が及びます。そのため、表層に外用の抗真菌薬を塗るだけでは改善は難しいことがあります。そのような場合は内服の抗真菌薬が必要となります。
また、手のかゆみとともに皮膚がぽろぽろと落ちる疾患は白癬症だけではありません。種々の角化症などの皮膚疾患でもおなじような症状が起こってきます。そのような場合は抗真菌薬を使用しても効果はありません。
病院で診断を受けずに治療を開始してしまうと、正しい診断がなかなかできず、治療にも難渋することがあります。ですので、まず試しに市販薬を使用してみて、なかなか治らないから病院を受診するという治し方はあまりおすすめできないのです。基本的には手白癬を疑った場合はまず病院を受診することをおすすめします。
市販薬を選ぶときのチェックポイント
市販薬で治療を開始したいという場合は、症状に合わせて市販薬を選ぶといいでしょう。
市販の外用抗真菌薬には、軟膏、クリーム、液体の3種類があります。
軟膏はベトベトした薬剤です。そのため、広い範囲に塗るのはなかなか難しいですし、特に手の白癬の場合は塗った後に手を使うと他のものに薬がついてしまうこともあります。使うとしても指の間に使うぐらいとなります。
液体の抗真菌薬はさらさらとした水のような薬です。広い範囲に広げやすいのが特徴ですが、皮膚にあまり残らないため効果がやや弱く、広げた後皮膚に対して刺激性を持つことがあります。
クリームは両方の中間の特徴を持ちます。広い範囲にやや強めの効果を発揮し、弱い手でも使いやすいという特徴から手白癬に適した剤形といえます。
皮膚科を受診し、専門家の判断に従って薬を選んでいただくのが良いのですが、どうしても受診できない場合には参考にされるとよいでしょう。