タバコの匂いが気になる…異臭症の特徴と嗅覚障害の種類

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周りにタバコを吸っている人や、タバコのにおいを含んだ衣類などがあるわけでもないのに、タバコの匂いが気になることはないでしょうか。タバコに限らず、様々な匂いがあるわけでもないのにあるように感じてしまうことを、異臭症と言います。ここでは、異臭症や臭覚障害について見ていきましょう。

においを感じるメカニズム

匂いを感じるメカニズムについて確認しましょう。

音であれば空気の振動が伝達することによって感じます。においはというと、においそのものの物質が体の中に入ってくることによって感じます。においを発する物質のことを、におい分子と言います。

におい分子が鼻腔内に入ると、鼻腔の天井部分の粘膜にある粘液に物質が溶け込みます。この部分の粘膜のことを、特に嗅粘膜と言います。物質が嗅粘膜に付着すると、そこにある嗅細胞が興奮し、電気的な信号を発生させます。この電気的な信号が、神経によって伝達されることによって匂いを感じるのです。

伝達する神経は、まずは嗅神経です。嗅神経は嗅細胞につながっている神経で、無数の神経が骨を貫いて頭蓋骨の中に情報を伝達します。嗅神経から情報を受け取るのが、嗅球と呼ばれる組織です。嗅球からは、再び神経が脳の方へと情報を伝達します。脳の中にある、嗅覚野と呼ばれる嗅覚を司る中枢に情報が伝達されて、においを感じることになります。

嗅覚の受容体は、人では約400種類あると言われています。刺激される受容体からの信号のパターンや、強度の組み合わせによって様々なにおいを嗅ぎ分けられます。

嗅覚障害の種類

嗅覚障害は、においを感じる経路のどこで障害が起こるかによって、3つに分類されています。

気導性嗅覚障害

1つ目は、気導性嗅覚障害です。これは、におい物質が鼻から入って嗅粘膜に付着するまでのルートに何らかの異常があることによって、物質が届かなくなり、それによってにおいを感じられなくなる状態を言います。

このような障害を起こす原因としては、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎によって、鼻粘膜が肥厚して空気の通り道が狭くなる場合や、鼻中隔弯曲症によって空気の通り道が悪くなる場合などがあります。

このような嗅覚障害は、空気の通り道を確保してあげると嗅覚障害が改善することが多いです。内服薬によってアレルギーを抑えることによって粘膜の浮腫を改善させたり、手術によって空気の通り道を確保するなどが考えられます。

嗅神経性嗅覚障害

嗅神経性嗅覚障害は、その名の通り嗅神経に何らかの異常が起こり、においの伝達が途中で止まってしまうことによって起こってくる嗅覚障害です。

一時的なものとしては、感冒などのウイルス感染症や薬剤の影響などによって、嗅神経が影響を受け、においを感じなくなることがあります。

また、稀に転倒などで頭部を打撲した際に、その衝撃で嗅神経が千切れ、神経伝達ができなくなる場合があります。この場合には治療で改善することが少なく、嗅覚障害が永続する可能性があります。

中枢性嗅覚障害

中枢性嗅覚障害は、嗅覚を感じる嗅覚野が何らかの原因で影響を受け、正しく匂いを感じることができなくなることを言います。

頭を強く打ち、脳挫傷を起こした場合や、脳腫瘍や脳出血、脳梗塞など、脳の機能に影響する病気によって生じることがあります。

他にはパーキンソン病やアルツハイマー型認知症のように、神経が変性する病気も中枢性嗅覚障害を起こすことがあります。

量的嗅覚障害と質的嗅覚障害

嗅覚障害は、大きく分けて2つに分類されます。量的嗅覚障害と、質的嗅覚障害です。

量的嗅覚障害というのは、簡単に言うと匂いを感じる感覚が減弱した状態を言います。普段なら強く感じている匂いが弱く感じられ、匂いがあるかどうかの判断もできなくなることがあります。

においの感覚が減弱した程度であれば嗅覚低下といい、全く匂いを感じない状態であれば嗅覚脱失となります。

一方、質的嗅覚障害は、においを感じる様子に変化が生じた状態です。異常な匂いの感じ方をする状態と言えます。異臭症もこの中に分類されます。

タバコの匂いなどが気になる異臭症の特徴

異臭症というのは、鼻の匂いを感じる細胞が病気や加齢、ストレスなどによって、体や他のものから様々な特異なにおいを感じる病気と言われています。

異臭症を起こす原因は、嗅粘膜の炎症や、嗅細胞や嗅神経の異常な興奮が関与していると言われています。タバコのにおいが気になることもありますが、焦げた匂いやガソリンのような匂いが突然発生してくることもあります。

異臭症の原因は多岐にわたります。ストレスなどもありますが、生活習慣の乱れや食事生活、病気などが関係してくることもあります。生活習慣としては、不規則な生活や過度な運動不足、睡眠不足などが関係している可能性があります。

病気としては風邪などの上気道炎がきっかけとなることがあります。上気道炎によって嗅細胞が傷つくことによって、においの信号が誤って中枢に送られてしまって異臭症が発生するのではないかと言われています。

ただこの場合には鼻の機能が正常に回復すれば、においの症状も元に戻ってくることが多いと言われています。空気の通り道に異常が起きる状態としては、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などの気導性嗅覚障害も関与してくることがあります。

また、加齢が原因となることもあります。匂いを感じる嗅細胞が加齢によって変性し、異常な信号を発するようになることもあるのです。

異臭症が何らかの重篤な病気によって起こっている可能性も否定はできません。異常を感じたときは病院を受診し、原因を検索する必要があります。

郷正憲

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。 「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

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