白い糸のような目やにの原因は?結膜炎の種類とよくある目のトラブル

朝起きて目やにが気になった経験のある方は多いことでしょう。白い糸のような目やにが出るなど、通常とは異なる目やにが出るようなら結膜炎の可能性が考えられます。ここでは目やにが出る主な原因である結膜炎について解説します。
目次
白い糸のような目やにが出る理由

最初に目やにがなぜ出るのかについて解説しましょう。
新陳代謝
目やには感染症などがなくても生理的に毎日産生されています。その原料となるのは角膜上皮です。
眼の表面は、結膜と角膜という膜で覆われています。特に目の真ん中、瞳孔の部分は角膜という透明の膜で覆われています。この角膜は、透明な状態を維持するために常に細胞が新しいものに入れ替わる新陳代謝が起こっています。
新陳代謝の中心となるのが角膜のなかでも一番外側にある角膜上皮と呼ばれる組織です。この角膜上皮の細胞は細胞分裂が盛んで、だいたい5~7日程度で古い細胞が新しい細胞に入れ替わっています。入れ替わられた古い角膜上皮細胞は剥がれ落ちて、目やにとなります。
普通に生活していても毎日のように出てくる、朝起きた際に目尻などに付着している少量の目やには寝ている間に排泄された老廃物になります。
免疫反応
一方で、目やにの量が多かったり、白く粘つきを感じたりするような目やにの場合は、免疫反応が起こっていることによって出てくる目やにである場合がほとんどです。
眼やその周囲に何らかの感染症やアレルギー反応が起こると、免疫細胞が集簇(しゅうぞく)して免疫反応が起こります。免疫反応が起こると反応を起こした免疫細胞や異物などが眼の外に排出されます。これが目やにとなります。
いつもと違う目やにがある場合は何らかの異常が起こっていると考えられます。
目やにが増えるよくある目のトラブル

目やにが増える時には、どのような場合があるのでしょうか。代表的なものを紹介します。
ドライアイ
ドライアイというのは、涙の分泌量が不足したり、涙の質が変化したりすることによって、目の表面に涙が均等に行き渡らないことによって起こってくる目の不調のことを言います。
涙には、目を乾燥や異物から守る役割があります。また、角膜に必要な栄養や酸素を届ける役割もあります。このような涙が十分に行き渡らない部分では、目の表面に傷がつきやすくなり、炎症が起こったり視力が低下したりといったことが起こってきます。
ドライアイの原因には、様々なものがありますが、簡単に言うと目を酷使することが原因となってきます。コンタクトレンズを使用したり、乾燥した空気の中で生活したり、瞬きが少なくなったりすることなどです。特に最近では、パソコンやスマートフォンなどのモニターを凝視することによって、瞬きの回数が減少し、ドライアイを引き起こしてしまうことが少なくありません。
ドライアイの症状には、目の疲れや乾燥、かすみ目、眼の充血や目がゴロゴロするような症状などが主にあり、目やにの増加もよくある症状です。
ドライアイは目に致命的な影響を与えるものでないことが多いですが、ドライアイになると細菌やウイルスにも感染しやすくなりますから、対処しておく必要があります。
コンタクトレンズの不適切な使用
コンタクトレンズを適切に使用できていない場合にも、目やにが多くなることがあります。
コンタクトレンズの不適切な使用として代表的なものは、コンタクトレンズに汚れが付着したまま使用している場合や、コンタクトレンズをつけたまま寝てしまい、長期間同じコンタクトレンズを使用している場合、あとはコンタクトレンズやそのケア用品が目に合っていない場合などが考えられます。このようなときに、免疫反応として目やにが出てきます。
コンタクトレンズの不適切な使用でも、多くの場合はまばたきの度に涙で洗い流されますから、あまり気にならないことも多いです。逆に言えば、コンタクトレンズの不適切な仕様によって目やにが多くなっている場合は、目にかなり大きなダメージを与えている可能性があります。
コンタクトレンズを適切に洗浄し、寝ている間はつけないといった基本的な使用法を守ったうえで、それでも目やにがよく出る場合にはコンタクトレンズの種類の変更や、メガネに変更することなどを考えるといいでしょう。
逆さまつ毛
逆さまつげとは、まつ毛が目の表面に触れている状態のことを言います。睫毛内反や眼瞼内反によっておこってくるものです。
これにより目の表面に常に異物が触れている状態になりますから、異物を排除しようとして涙の分泌量が増加します。それに伴って、目やにの分泌量も増加してきます。
このような場合は、手術の検討も視野に入れ、眼科で相談するのがいいでしょう。
麦粒腫(ものもらい)
麦粒腫とは、まぶたの縁にある皮脂腺や毛根に細菌が感染することによって炎症が起こってくる病気です。一般的にものもらいと言いますが、感染症ではあるものの、他の人からうつるものではありません。もともと皮膚に存在する常在菌が、増殖することによって起こってくるものです。
まぶたの縁が赤く腫れて痛みを伴うことが多く、瞬きをした時に違和感や痛みを感じる場合もあります。まぶたが腫れていることによって、眼球が刺激されるため、涙や目やにの分泌量が増加してくることになります。
治療としては抗菌薬の点眼や軟膏、飲み薬を使用することによって概ね対処できます。しかし、それでもなかなか改善しない場合には、切開排膿する場合もあります。
目やにの原因になる結膜炎の種類

このように、いつもと違う目やにが出てきているときにはさまざまな原因を考えますが、多くは結膜炎によるものです。
結膜、結膜炎とは
結膜は角膜とともに目の表面を覆っている膜の一種です。白目の部分と、まぶたの裏側を覆っているのが結膜です。結膜はひと続きになっていて、まぶたの奥の方で折り返されている構造になっていますから、コンタクトレンズなどの異物が眼の後ろに入り込むのを防ぐ膜とも言えます。
結膜炎とは、その結膜に何らかの原因で炎症が起こっているものを言います。
そのほとんどが、結膜表面に細菌やウイルス、何らかの異物が付着することによります。これらの異物や微生物に対する免疫反応が起こることで、結膜の充血やかゆみ、異物感、眼の痛みなどがみられる病気となります。
原因によってさまざまに分類されますので、代表的なものを紹介しましょう。
細菌性結膜炎
細菌性結膜炎は、結膜に細菌が付着して増殖することによって起こってくる結膜炎です。子どもや老人など、免疫力が弱い場合によく起こってきます。
子どもに多いのがインフルエンザ菌や肺炎球菌です。カゼなどの症状に合わせて細菌が感染することで起こってきます。急激に免疫反応も起こり、症状の起こり方も急激です。
一方で、高齢者に起こりやすいのは黄色ブドウ球菌という細菌による結膜炎です。このなかでも、MRSAといって一部の抗生物質に耐性を持つ細菌によって起こることが多いです。これらの菌の感染は急激に起こると言うより、だんだんと起こってくるのが特徴です。また、なかなか治らないというのも特徴です。
細菌性結膜炎の最大の特徴は膿性眼脂です。白っぽく、ネバネバとした眼脂が多く出ます。
治療は抗生物質を配合した点眼薬の点眼になります。
淋菌性結膜炎
淋菌は性感染症の一種です。細菌ではあるのですが、他の細菌性結膜炎と異なる特徴があるので淋菌性結膜炎と呼ばれています。
成人が発症するのは、感染者の精液が眼に入ったり、感染者の性器に触れた手で眼を触ったりすることで感染が成立して発症します。元々性器に感染していますから、本人やパートナーに尿道炎や子宮頸管炎を発症しているのも特徴です。
一方で、淋菌に感染している母親から出生した新生児に、産道で感染することによって発症してくる淋菌性結膜炎もあります。特にこのような結膜炎を新生児膿漏眼と言います。
感染経路は特殊ですが、細菌感染症には変わりありませんので症状はほぼ同じで、膿性眼脂が大量にみられる他、まぶたが腫れたり、充血がみられたりします。
治療は点眼に加えて、性感染症の治療のために抗生剤の点滴も行われます。通常、他の細菌性結膜炎に比較して重症化しやすく、角膜へ淋菌が侵入して角膜が破壊され、失明する恐れもある病気です。
ウイルス性結膜炎

ウイルス性結膜炎は、その名の通りウイルスが結膜に付着してそれに対する免疫反応が起こる事によって発症する結膜炎です。
原因となるウイルスはさまざまで、多いのはアデノウイルス、エンテロウイルス、コクサッキーウイルスなどカゼを起こすようなウイルスです。しかし、他にも単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルスなどさまざまなウイルスによって引き起こされます。
ウイルス性結膜炎では眼脂が増えるのですが、その眼脂は漿液性、すなわちさらさらとしているという特徴あります。この点で、細菌性結膜炎と鑑別がつきます。
他の症状としては結膜の充血や腫脹、まぶたの腫れの他、結膜に濾胞といってブツブツができるのも特徴です。自覚症状としては異物感やまぶしさなどの症状があります。
ウイルスの種類によって、症状が大きく変わります。
アデノウイルス8型などで引き起こされる流行性角結膜炎ははやり目とも呼ばれ、結膜炎の症状が非常に多く出ます。しかし他のウイルス性結膜炎と異なり、全身症状はまずありません。
一方でアデノウイルス3型などで引き起こされる咽頭結膜熱はプール熱とも呼ばれ、小児に流行します。名前の通り、プールで感染が広がりやすいとされている病気で、眼の症状に加えて発熱や咽頭痛を伴います。眼の症状は流行性角結膜炎に比較してやや軽症です。
急性出血性結膜炎はエンテロウイルスやコクサッキーウイルスによって引き起こされる結膜炎です。その名の通り、結膜下に出血を伴うことが多い結膜炎です。出血があるため重症に思われがちですが、実際には眼脂などの他の症状は軽症で済むことが多いです。しかし全身疾患の合併には注意が必要で、四肢麻痺や顔面神経麻痺などの症状を伴うことがあるため経過に注意する必要があります。
これらのウイルス感染の経路は接触感染と言って、ウイルスが存在する眼脂や涙液が患者さん自身の手指を介して結膜に感染するほか、ウイルスが付着した他の人の手やタオルなどを介して結膜に感染することによります。
アレルギー性結膜炎
アレルギー性結膜炎はその名の通りアレルギー反応によって起こってくる結膜炎です。花粉症の時期に眼がかゆい、涙が止まらないといった症状をよく耳にすると思いますが、それがアレルギー性結膜炎の症状です。
発症にはアレルギーの発症が関わっています。原因物質に一定以上触れることによって身体がその物質に対して過敏になり、次にその物質が身体に触れたときに過敏に反応してしまうのが原因です。
対処法としてはアレルギーの原因になるべく触れないようにすることが重要になります。また、抗アレルギー薬の内服や点眼を行うことで症状をなるべく軽くします。
感染性の結膜炎を防ぐ生活習慣
感染性結膜炎は、何らかの原因で結膜に感染症の原因微生物が付着しないと発症しません。そのため、原因微生物が付着した手やタオルで眼をこすると感染が成立してしまいます。
普段から眼をこすらないように習慣づけたり、タオルを別にしたりするといった対処が有効です。
また、アレルギー性結膜炎があるとどうしても目をこすってしまい、その行動によって感染性の結膜炎にかかってしまうこともあります。アレルギー性結膜炎がある場合にはなるべく早期から治療を行い、目をこすらずに済むようにすることも予防に役立ちます。
そして何より、いつもと違う目やにが出てくるような場合には、早めに眼科を受診するようにしてください。