横腹が痛くなる理由とは?可能性のある病気や異常

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運動をしたり食事をしたりすると横腹が痛くなることがあります。横腹の痛みは正常な生理的な反応のこともあれば、何らかの病気を原因としていることもあります。ここでは横腹が痛くなるメカニズムや関連する病気について見ていきましょう。

日常生活で横腹が痛くなる理由

運動時に脇腹の痛みを訴える女性

日常生活で横腹が痛くなる理由はいくつも考えられます。代表的なものを確認しておきましょう。

運動時の横腹の痛み

運動時の脇腹の痛みは、多くの人が経験したことのある不快なものであり、痛みが激しい場合には本当に運動することが困難になり立ち止まってしまうほどです。

走っているときに起こる、肋骨下や腹腔全体の差し込むような痛みの原因はさまざまありますが、そのなかでも特に「横隔膜とその付近の筋肉や内臓への血流不足、酸素の供給不足」が主たる原因です。
痛む部位は肝臓が位置する右側が圧倒的に多いようですが、肝臓自身に問題があるのではなく肝臓がぶら下がっている横隔膜の攣縮などが不規則に現れて、比較的短時間で収束する痛みであると考えられています。
横隔膜は息を吸ったり吐いたりする度に上下に動いていますが、ランニングなど運動するときには、体内の臓器も身体の動きに伴って揺さぶられることになります。
それによって、横隔膜や呼吸に関係する筋肉が痙攣し、脇腹が痛くなるというのが、運動時の横腹の痛みが引き起こされるメカニズムと考えられています。

食後の横腹の痛み

食後にみぞおちや横腹が痛むというときには、機能性ディスペプシアなどの病気が疑われます。
機能性ディスペプシアに見られるその他の症状としては、胃もたれ、あるいは食事の途中で満腹を感じて充分量を食べられない早期膨満感などが挙げられます。

また、脂っこいものやアルコールを摂取したあとに横腹の痛みなど腹痛が生じるときには、慢性膵炎などの病気が疑われます。
慢性膵炎に認められるその他の症状としては、背中の痛み、下痢、体重減少などが挙げられます。

毎食後に腹痛が起こるような場合には、食生活の乱れ、過労やストレスなど以外にも、ピロリ菌感染症といった病気も疑われます。

横腹が痛いときに考えられる病気や異常

食事中に腹痛を訴える女性

何らかの病気が原因で横腹が痛くなることがあります。代表的な疾患を見てみましょう。

消化器の病気

横腹が痛いときに考えられる消化器の病気としては、「急性膵炎」が挙げられます。

男女ともに比較的中高年に多くみられる急性膵炎は、何らかの原因によって膵臓に炎症が起こってしまう病気です。
急性膵炎を引き起こす原因で最も多いのはアルコールの大量摂取であり、次に多いのは胆石症で、その他の原因は脂質異常症・薬剤性・外傷性・先天性などです。
急性膵炎は、女性より男性に多く発症し、その比は約2倍であり、発症年齢では女性70歳代・男性60歳代の方が多いことがわかっています。

急性膵炎では、「突然始まる激しい腹痛」が特徴で、重症化すると合併症を起こしてショック症状に陥ることもある病気です。
急性膵炎で最も多い症状は、非常に強い上腹部の痛みであり、膵臓は胃の裏側に位置しているため、背中の痛みを訴える方もいます。
その他の症状としては、多い順に嘔吐・発熱・食欲低下・腹部の張り・全身のだるさなどがあります。

病状が悪化すると、重症化して周囲の臓器へも炎症が進み、黄疸・意識障害・ショックなどを引き起こして、全身状態悪化の危険もありますので注意が必要です。

急性膵炎が起こった場合は、絶食して肝臓を休ませ、薬物療法で水分補充・炎症改善・消化酵素分泌抑制などを行います。
重症化すると、炎症は膵臓だけにとどまらずに肺・腎臓・肝臓などへも影響を及ぼす場合があるため、早めに適切な治療を行うことが大切です。

泌尿器の病気

横腹が痛いときに考えられる泌尿器の病気としては、「尿路結石症」が挙げられます。

一般的に、腎臓で濾過された尿は、尿管を通過し膀胱へ溜められ、尿道を通って排泄されることが知られており、この腎臓から膀胱、そして尿道の間にできる石を「尿路結石」と言います。
尿路結石の発症には食生活が大きく関係していると分かってきており、特に日本人の場合は、シュウ酸カルシウム結石症と呼ばれるものが圧倒的に多いです。
日々の生活における食事内容などでこのシュウ酸を摂りすぎることによって結石の主な原因に繋がるといわれています。

小さな結石が腎臓にできても無症状な場合がほとんどですが、尿路結石が腎臓から流れ出た途中で詰まってしまうと、わき腹から下腹部などの激しい痛みや血尿などの症状が出現することになります。
さらに、尿が下流の膀胱へと流れないために上流で尿が貯留して淀んでしまうため、腎盂腎炎などの尿路感染症を引き起こして腎臓の機能障害などが生じることになります。

筋肉や神経の異常

肋間神経痛

横腹が痛いときに考えられる筋肉や神経の異常としては、「肋間神経痛」が挙げられます。
脇腹や背中から胸にかけて、ビリッと電気が走るような痛みを肋間神経痛と言います。
肋間神経痛は、肋骨に沿って走っている肋間神経が痛む状態であり、主に脇腹、背中から胸にかけて電気が走るような鋭い痛みを呈するのが特徴のひとつです。

肋間神経は肋骨を引き上げたり、腹圧を加えたりするための指令を伝えるための神経であり、主に背中から胸腹部にかけて分布する末梢神経です。
肋骨の上部7対は、肋骨に沿って胸骨に向うように走行しており、下部5対は前下方に走行しており腹部に分布しているため、胸や背中、脇腹などに痛み症状を自覚します。
冬場など寒い時期になると起こりやすいのが特徴で、痛みがひどい際には内科など医療機関を受診することが大切です。

皮膚の病気

横腹が痛いときに考えられる皮膚の病気としては、「帯状疱疹」が挙げられます。

帯状疱疹は、水痘(すいとう)帯状疱疹ウイルスを原因として発症する病気です。
帯状疱疹の好発年齢は中高年齢層であると言われており、日常的に過大なストレスや加齢による水痘ウイルスに対する免疫力の低下を契機として、免疫機能の低下などに伴って体内に潜んでいたウイルスが再活性化することによって帯状疱疹を発症します。

帯状疱疹になると、発症の初めの段階では皮膚がぴりぴりするような痛みを自覚して、時間が経つと帯状に赤みや水疱形成などの典型的な皮膚症状が出現します。
帯状疱疹の発症には、加齢や疲労、ストレスなどによって免疫力が低下することと深く関係しています。
帯状疱疹にともなう神経合併症としては帯状疱疹後神経痛が多いと指摘されています。

まとめ

これまで、横腹が痛くなる理由、可能性のある病気や異常などを中心に解説してきました。

日常生活で食後や運動時に横腹が痛くなるメカニズムとしては、機能性ディスペプシアや慢性膵炎などの疾患が隠れていて食事の際に腹痛が生じる、あるいは運動する際に横隔膜の痙攣や酸素不足が引き起こされてお腹が痛くなるなどが考えられます。
また、横腹の痛みを呈する病気として、急性膵炎、尿路結石症、肋間神経痛、帯状疱疹などが考慮されます。

心配であれば、消化器内科や泌尿器科、一般総合内科や皮膚科など、それぞれの専門医療機関を受診して相談しましょう。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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