大人も注意が必要なゲーム依存症…脳のメカニズムと健康への影響
今の時代はインターネットやゲームが容易にできるようになりました。コロナ禍での自粛生活をきっかけにスマホやゲームに接する時間が増え、スマホ依存やゲーム依存の人が増えていると言われています。
一日中ずっとゲームに心を奪われて、自分の意思でゲームを止められない状態が続くと、ゲーム依存症の可能性があります。ここではゲーム依存症について詳しく見ていきましょう。
目次
大人も注意が必要なゲーム依存症
ゲーム依存症は、WHO(世界保健機関)によって2019年に国際疾病分類に加えられました。ゲームに熱中し、利用時間などを自分でコントロールできなくなり、日常生活に支障が出る病気です。正式にはゲーム障害といいます。
10年くらい前から、パソコンやスマートフォン、その他のネットに接続できる電子機器が普及したことでゲーム障害が増加しました。以前は10〜20代の子どもや若者の依存として認識されていましたが、最近では30〜40代の依存も増えてきていると言われています。
ゲームに依存する脳のメカニズム
そもそもゲームに依存する始まりはちょっとしたきっかけです。インターネットやゲームは日常生活において当たり前に存在するものであり、きっかけとなる場面はたくさんあります。
のちに依存症になってしまう人も最初は遊びの範囲でネットやゲームをしています。しかし段々とゲームに費やす時間が増えていき、それに伴って何らかの問題(対人的・経済的・身体的・精神的な問題)が生じてきます。
健全なユーザーであればこの時点でゲームを控えることができますが、一部の人はそれができずに昼夜逆転したり、他の予定をないがしろにしてまでゲームを続けてしまいます。この一部の人の脳にはある変化が起きていると言われています。
ドーパミンの影響
ドーパミンは快楽物質であり、これが脳内に分泌されることで生物は快楽や喜びを感じることができるのですが、ネットやゲームを行うことでもドーパミンは分泌されます。
ネットの使用やゲームが習慣化するほどドーパミンが分泌される頻度も増え、快楽や喜びを感じやすくなります。
これだけ聞けばいいことだと思うかもしれませんが、神経伝達物質には限りがあるというところが恐ろしいところです。永遠に分泌され続けることはなく、枯渇してしまいます。すると、それまでの強烈な快楽が得られなくなるためにさらにゲームへの欲求は促進され、ドーパミンは枯渇し、むしろ焦りや不安、退屈感といった不快体験が増えていきます。
このレベルにまで達すると脳は快楽だけを求めて体に指示を出すため、簡単には抗えません。このような経過を経て、やってはいけないとわかっているのだけれどやめられないという依存が形成されてしまいます。
ゲーム依存症の健康への影響
ゲーム依存症は次のような悪影響を引き起こします。
睡眠障害
ゲーム依存症になることで、ゲームに関連する情報を脳が認識したときに興奮しやすくなり、なかなか寝つけず不眠や睡眠障害になりやすいという報告があります。
イライラして攻撃的になる
ゲーム依存症になると、イライラしやすくなったり衝動的になりやすいとの報告もあります。また、ゲーム依存症になると、ゲームをやらないと禁断症状が生じ、ゲームをしたいのにできないことに苛立ちや衝動的な行動をとる場合もあります。
視力の低下
ゲーム依存症はゲーム画面を長時間見ないといけません。そのため、ゲーム画面を見続けることで視力低下が報告されています。また、運動量が減ることから、肺活量の減少も見られます。
ゲーム依存症を改善するには?
ゲーム依存の場合、主に通院治療がおこなわれます。専門医による診察にもとづき、治療方針を立てていきます。カウンセリング、認知行動療法、それでもよくならない場合は入院治療をおこなう必要があります。
カウンセリング
ゲーム依存症になる背景として、孤独感や低い自己肯定感、トラウマ(心的外傷)がある場合があります。その場合、ゲーム依存症が緩和し、ゲームばかりする日々ではなくなったとしても、生きづらさが解消されていないため苦しみは続くかもしれません。そのため、病院や回復施設等でカウンセリングを受け、過去のトラウマ(心的外傷)や孤独感を癒す必要があります。
認知行動療法
認知行動療法は、人の認知(気づきや思考)や行動に着目した心理療法です。ある認知に対する思考や感情を自動思考と呼びますが、認知行動療法では患者さん本人が生きていきやすいように思考や考え方に働きかけ、修正していきます。
入院治療
カウンセリングや認知行動療法などの治療を受けても症状が改善されない場合は入院治療が検討されます。入院治療では2か月程度入院して、物理的にゲームから遠ざけます。入院中はゲームなどができるオンライン機器は使えないようにします。
入院中は、医師や家族と繰り返し話し合いをおこなっていき、退院した後のゲームとの付き合い方についても具体的に決めていきます。また、入院することによって生活リズムを整えることもできます。
ゲームを始める年齢を遅くする
子どものゲーム障害を予防する方法として、まず有効なのがゲームを始める年齢を遅くすることです。すでにゲームを始めている場合は、1日のゲームをしてもいい時間帯・場所を明確に決めることが有効となります。
その際、紙に書いて部屋に貼っておくことや、子どもの意向も取り入れることが大切です。また、ゲーム以外の生活を充実させることでも、ゲーム障害を予防できるといわれています。