食後に動悸や息切れがするのはなぜ?原因と受診の目安

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動悸とは、ドキドキという心臓の拍動を自覚することをいい、不快感や違和感を伴うこともあります。

「食後心臓がドキドキすることがある」、「コーヒーや緑茶を飲んだ時にときどき動悸を感じる」など、動悸は病気によるものから生理的要因が関係しているものまでさまざまです。ここでは動悸や息切れの原因について詳しく解説します。

食後に動悸や息切れがするのはなぜ?

食後に動悸や息切れがする理由としては次のものが考えられます。

胃腸に血液が集中するため

食事は自律神経に影響を与えるため、食事自体が食後の動悸症状につながることがありますし、食事の摂取は自律神経だけでなく心拍数や血圧にも変化を与えます。

食事をすると、食べ物の消化と吸収のために、胃腸へ血流を増やして胃腸が活動しやすい状態を作り出し、食事を食べると食事誘発性熱産生といって吸収した食べ物が熱に代わり体温が上昇します。

これらの要素が組み合わさることで、正常な人であれば食後は心拍数が上昇します。食後は胃と腸が食物を消化して吸収した栄養を体の他の部位に送るために大量の血液が必要になります。心拍数を増やすことで、食後には消化器官への血液供給が急激に上昇します。

血液は心臓から全身に送られるため、消化器官への血液供給が増えると、心臓はより多くの血液を送る必要が出てくると同時に、体温があがることで心拍数が上昇する反応によって、食後に動悸を感じる原因となります。

辛い食べ物やお酒を摂取すると、胃腸に血液が集中して全身の血流が活発になって食後に動悸や息切れを感じることもあります。

食事の量や食べる早さ、飲み物の摂取量など、さまざまな要素が食後の動悸に影響を与えます。

飲み物(カフェイン)の影響

コーヒーや緑茶など口にするものによっても動悸に関係することがあります。

例えば、コーヒーを多量に摂取した場合、カフェインの作用により交感神経を刺激し、動悸やふるえが起こることがあります。

食後の動悸が毎回同じ飲み物を飲んだ後に起こる場合には、その飲み物が原因である可能性もありますので、何をいつ食べたのか、飲んだのかということを記録しておくとよいでしょう。

他にもある動悸や息切れの原因

食後に生じる動悸以外にも、動悸や息切れの原因はいくつもあります。代表的なものを見ておきましょう。

更年期障害

多くの女性は40代頃から更年期と呼ばれるフェーズに入り、この時期には体が火照って疲労を感じやすいなど辛い期間であると考えられていますが、実は更年期には動悸症状の発症とも関連があります。

更年期においては、周囲環境などで過剰なストレスを抱えているなど以外にも、女性特有の要因として更年期前後におけるエストロゲンの分泌量低下が挙げられます。

女性ホルモンのひとつであるエストロゲンには様々な健康リスクから女性の身体を守る働きがあることが知られていて、エストロゲンの分泌量は女性の場合にはおよそ40代頃から更年期の訪れとともに減少し始めて50代の閉経期になれば急激に落ち込みます。

特に更年期を過ぎるとエストロゲンの分泌量が低下して、動悸の症状が出現しやすくなります。

高血圧

一般には、最高血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上、あるいは最低血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上であれば、「高血圧症」と診断されることになります。

多少の範囲であれば血圧が高くても、自覚症状を感じないのが通常ですが、血圧がかなり高い際には動悸症状、頭痛やめまい、肩こり症状などが典型的に認められます。

実際のところは、これらの代表的な症状は血圧とは無関係によく経験されるものですから、高血圧自体は自覚症状だけでは当てにならない面もあります。症状の有無に関わらず定期的に検査や治療を受ける必要があると言えるでしょう。

運動不足

自律神経は、心臓や胃腸の働きを含む体の多くの機能を自動的に制御しています。

不規則な生活習慣や運動不足は自律神経のバランスを乱して、動悸を引き起こす原因となります。

日常的に適度な運動を実施して健康的な生活習慣を維持することで、自律神経のバランスを保つことができます。

ストレス

「脈が速い、脈が強い、脈が飛ぶ」をまとめて動悸と呼んでいて、過度の緊張やストレスで心臓の鼓動が速くなり、「ドキドキ」と動悸を感じた人も少なくないと思います。

緊張やストレスなど、外部から受けた刺激により交感神経が活発に働くことで、動悸の症状が出ることがあります。

これには自律神経が関わっていて、自律神経は興奮した状態のときに働く交感神経と、リラックスしているときに働く副交感神経の2種類があります。

ストレスに伴って強い刺激を感じると、防御反応として交感神経が優位になり動悸が一時的に起こることがあります。

不安を伴うストレスが原因の動悸は、症状のコントロールが難しい場合がありますし、不安が動悸の原因となり、動悸がさらに不安を生むという悪循環に陥ることもありますので、場合によっては不安や動悸症状を緩和するための薬を処方することがあります。

病院を受診した方がよいケースとは?

一般的に動悸の原因は、不整脈など心臓に原因がある場合や、貧血傾向がある、不安が強いなどの心因性、コーヒーや紅茶、アルコールなどの嗜好品によるもの、過労や睡眠不足に伴う場合などが挙げられます。

万が一、動悸症状に加えて、胸が苦しい、息苦しい、意識が飛びそうになるといった症状を伴うときは、すぐに救急外来や循環器内科などを受診しましょう。

それ以外にも、胸が痛くて圧迫感がある、冷や汗が出る、脈が極端に速い、あるいは遅い、30分以上ドキドキと動悸が続いている、意識消失を引き起こすなどの際にも、早急に専門医療機関を受診する必要があります。

まとめ

これまで、食後に動悸や息切れがする原因と受診の目安などを中心に解説してきました。

コーヒー、紅茶、炭酸飲料に含まれるカフェインや、アルコール、タバコなどが動悸の原因となりますし、貧血や高血圧、更年期障害などの疾患が動悸の原因として認められることもあります。

動悸症状について心配されている方は、まずは何が原因であるかを知ることが大切です。

症状が長引く際には、循環器内科など専門医療機関を受診して相談しましょう。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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