体が熱くなるさまざまな疾患…新型コロナや熱中症を見分けるには?

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体が熱くなって心配になったことはないでしょうか。様々な原因で体が熱いという症状は出てきますが、中でも気になるのは新型コロナウイルスに感染して発熱しているのではないかということでしょう。ここでは体が熱くなる症状がどのような原因で起こってくるのか紹介します。

体が熱くなるさまざまな疾患

まずは体が熱くなる様々な疾患について紹介していきましょう。

更年期によるホットフラッシュ

ホットフラッシュというのは更年期の時期になってきてホルモンバランスが乱れることによって起こってくる症状です。多くの女性は閉経する前から症状が出始め、およそ6割の女性が症状を感じると言われています。

最初のうちは体がカーッとするように感じることから始まりますが、およそ1割の人はそれが体調不良に繋がり、日常生活にも支障をきたすほどの重症になってきます。

多くの場合、2分から4分ぐらい暑さを感じた後、汗がざっと出てきて脈拍が増加します。このようなほてりや汗などの症状は最初は顔面に出てきます。それがだんだんと頭や胸に広がってくるという特徴があります。

このホットフラッシュが起こってくる原因としてはエストロゲンという女性ホルモンの減少が関係しています。このエストロゲンは自律神経系の調節をになっていますから、自律神経のバランスが乱れることによって、急に暑くなったり汗が出たりといった症状が出てきます。

ホットフラッシュは何をしなくても出てくることもありますが、ドライヤーを使用するなど体に熱い刺激がかかってくることによって起こってくることもあります。

対処法としては、ホルモン剤の内服のほか、通気性の良い衣服を着て涼しい部屋で休むというのも一つの方法です。リラックスした環境を整えることが大切です。

自律神経失調症

自律神経は交感神経と副交感神経からなる神経のことです。この2つの神経が互いにオンオフを繰り返すことによって、体全体のバランスを整えてくれます。体温の調節や汗の出方なども自律神経が調節しています。

そのため自律神経の調子が悪くなってしまうと、体の中に熱がこもってしまったり、急に汗が出てきてしまったりといった症状が出てくることがあります。こうした症状を熱として捉えることがあるのです。

自律神経はもともと体全体の調節をしています。女性ホルモンのエストロゲンによっても調節されていますし、体全体の様々な要素によって自立神経は調節されています。精神的なストレスによっても自律神経の調節は変わってきます。

このような調節は主に脳にある視床下部というところが行っています。視床下部は生命維持の中枢ともいえます。

神経自体を診察することはできませんので自律神経失調症の診断は非常に難しく、多くの場合、まずは他の病気を調べ、何も異常が見つからなかった時に自律神経に異常があるせいで症状が起こっているのではないかという推察をしていきます。

甲状腺機能亢進症

甲状腺は喉仏のところにあるホルモンを分泌する臓器のことです。甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンは、簡単に言えば体全体のスイッチを入れるためのホルモンです。

甲状腺ホルモンの値が高くなることによって血圧は上がり、脈拍数も上がり、呼吸も早くなり、血糖値は上がり、様々な代謝が亢進します。それに伴って、体全体が産生する熱の量も上昇しますから、体温も急激に上昇してきます。

甲状腺ホルモンがこのように無秩序に分泌されていては体全体のバランスが崩れてしまいますから、甲状腺ホルモンの分泌は厳密にコントロールされています。

甲状腺ホルモンの分泌を調節しているのは、脳から分泌される甲状腺刺激ホルモンというホルモンです。甲状腺ホルモンの値が高すぎると甲状腺刺激ホルモンの分泌量が減少することによって、甲状腺から甲状腺ホルモンがあまり分泌されないようになります。一方で甲状腺ホルモンの量が少ないと、甲状腺刺激ホルモンが多く分泌されることで、甲状腺から甲状腺ホルモンが多く分泌されるようになるという仕組みです。

しかし、甲状腺刺激ホルモンが何らかの理由で無秩序に分泌されてしまうことがあります。こうなってしまうと甲状腺からホルモンが出続けてしまいますから、甲状腺ホルモンによる作用が強く出過ぎてしまい、体が熱いという症状が出てきます。

あるいは、甲状腺ホルモンを分泌する細胞自体が腫瘍性に増殖してしまうことで、ホルモンが無秩序に分泌されてしまうことがあります。

診断は血液中の甲状腺ホルモンや甲状腺刺激ホルモンの値を調べることで行います。

高血圧症

高血圧が続くことによっても顔面がほてるような症状を感じることがあります。とはいえこれは直接高血圧が影響しているわけではありません。高血圧の治療薬によって起こってくるのです。

高血圧に対して血管を広げてあげることで血圧を安定させるような治療薬を使用します。このような治療を行うと血管が開くことによって顔面の血管も開き、血流が増えることによって顔面のほてりを感じることがあるのです。

ただし基本的には投与しているうちに症状は落ち着いてきますから、継続して投与しているのに症状が出てくる場合には他の原因がないかを探すのが一般的です。

真性多血症

真性多血症というのは、血液を作る細胞が腫瘍性に増殖することで、赤血球という血液の成分が非常に多くなってしまう病気のことです。血液の増殖の程度によって様々な状態の症状が生じてきます。

血液の量が多くなりすぎると血液が濃くなってしまい流れにくくなるために、頭痛やめまい、ほてり、のぼせなどの症状が出てきます。

診断は血液検査をすれば多血症であることはすぐに分かりますので、原因検索をしていくうちに真性多血症と診断がつくことが多いでしょう

新型コロナや熱中症を見分けるには?

熱っぽいとなると気になるのは新型コロナウイルス感染症や、熱中症ではないでしょうか。これらを見分けるポイントを紹介します。

新型コロナウイルス感染症の特徴

新型コロナウイルス感染症を疑う場合には、まずは感染者と接触していないかどうかを考えるのが先決です。人が多くいるような場所に出向いたとか、感染している人としばらく会話をしたとか、何らかの思い当たる節があれば新型コロナウイルス感染症を考えるのが自然でしょう。

そして、新型コロナウイルス感染症の場合には熱だけであることは比較的少なく、喉の痛みや咳、痰といったいわゆる風邪のような症状を併発していることがほとんどです。

このような症状がある場合には、少なくとも風邪、場合によっては新型コロナウイルス感染症ではないかと考えるのが自然な流れです。

新型コロナウイルス感染症に感染しても熱しか症状が出ないということもよくあります。このような場合には検査をしてみないと分かりません。熱の原因が分からないときは、まずは検査をしてみるというのは適当な考え方といえるでしょう。

熱中症の特徴

暑い時期に体が暑いとなると、やはり熱中症も考えなければなりません。屋外で長時間活動する場合だけでなく、家の中にずっといるだけでも熱中症は起こってきます。

熱中症が原因の場合、熱が出るほど症状が進んでいるようなら、頭痛や吐き気などの症状を伴っています。また熱の割に汗があまり出ていないのも特徴です。水分不足のせいで起こっているというのが熱中症の特徴ですから、汗を出す余裕がないのです。

このような場合には、生活の状況を思い返してみるといいでしょう。水分を取らず、室内とはいえエアコンをかけずに生活をしていた、といった場合は熱中症の疑いが強くなってきます。

また、熱中症の場合には、新型コロナウイルス感染症のように喉の痛みや咳や痰などの症状は見られないという特徴があります。

郷正憲

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。 「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

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