夕方になると眠くなるときに考えられる原因と眠気を抑える方法
夕方になると眠気に襲われ、仕事や勉強が手につかないといったことはありませんか? 眠気を引き起こす原因はさまざまですが、ここでは代表的なものを取り上げ、眠気を抑える方法を紹介します。
目次
夕方になると眠くなるときに考えられる原因
夕方になると眠くなる原因としては次のものが考えられます。
睡眠負債
睡眠負債とは、睡眠不足の蓄積により心身の不調を来してしまう状態のことです。シフトワークなどの多様な働き方や、インターネットやゲームなどによる夜型生活の増加によって睡眠負債を抱えやすいと考えられています。
睡眠負債になると心身にさまざまな不調が現れ、睡眠不足により自律神経のバランスが崩れてしまうと、身体の機能を適切に保つことができず疲労感や倦怠感、イライラなどのメンタル不調が現れます。
睡眠負債は心身の不調をもたらすほか、肥満や高血圧などの生活習慣病を含む病気の発症リスクを高めることも分かっていますし、睡眠不足により食欲を抑えるホルモンである「レプチン」の分泌が減少し食欲を増大させてしまう可能性もあるといわれています。
そのため、睡眠負債によって食べ過ぎによる肥満や、肥満が原因となる生活習慣病を引き起こすリスクにも繋がります。
また、睡眠負債に伴う夕方など日中の眠気は、仕事中の作業能率や注意力の低下を招き、人為的ミスによる事故のリスクを増大させてしまう恐れもあります。
実際、日本でも長距離ドライバーや運転士の居眠りによるトラックや鉄道の事故が問題になりました。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)は、眠り出すといびきをかいて知らぬ間に呼吸が止まってしまい、日中の眠気を含めた過眠症状や高血圧などを引き起こす病気です。
睡眠時無呼吸症候群には、睡眠中に何度も呼吸が止まり周囲の方からいびきをよく指摘される、夜間の睡眠中に頻繁に目が覚める、起床時に頭痛や倦怠感を自覚しやすい、日中の眠気などを経験するといった特徴があります。
睡眠時無呼吸症候群の方は、夜間における深い睡眠が妨げられることによって多大なストレスが蓄積されることによって、血糖値やコレステロール値が高くなることで生活習慣病やメタボリック・シンドローム症候群を引き起こしやすくなります。
血糖値スパイク
通常、血液中のブドウ糖濃度が上昇すると、膵臓から「インスリン」というホルモンが分泌されて、ブドウ糖が肝臓や筋肉、脂肪などの細胞にとり込まれることで、血糖値は再び下がるという仕組みになっています。
健康な人でも食前と食後では血糖値は小さく上下しますが、食後の短時間に血糖値が急上昇、あるいは急降下することを「血糖値スパイク(グルコーススパイク)」と呼びます。
血糖値を急上昇させる食事や食べ方をすることで血中濃度が急激に上がると、膵臓が大量のインスリンホルモンを分泌するために血糖値が急激に下がってしまう結果、夕方の眠気や倦怠感を感じる場合があります。
また、血糖値の急上昇と急降下をくり返すことで膵臓の機能が低下すると糖尿病に移行することがありますし、このような血糖値の急激な変化は血管にダメージを与えて動脈硬化を招き、脳梗塞や心筋梗塞といった命にかかわる疾患につながることがあります。
糖尿病の初期症状
糖尿病は血液中のブドウ糖が増えてしまう病気です。食事で摂取した炭水化物などの糖質は、腸で分解されブドウ糖として吸収されます。基本的にはブドウ糖は血液によって細胞に運ばれ、エネルギーとして使われたり、脂肪として蓄えられたりします。
このときブドウ糖を細胞に導き入れる手助けをしてくれるのが、膵臓から分泌されているインスリンホルモンですが、膵臓の機能低下でインスリンの分泌量が少なくなったり、運動不足などの要因でインスリンが働きにくくなったりすることがあります。
血液中のブドウ糖を減らすことができず、血糖値を一定の範囲に抑えられなくなる状態が糖尿病であり、病状が進行すると過剰な糖成分によって血管が傷つき、将来的に心臓病や網膜症による失明、腎不全など、慢性合併症を起こします。
食後や夕方の強い眠気は、糖尿病の初期症状と言われています。
糖質を大量に食べたとき、急に増えた血中のブドウ糖を処理しようとして、インスリンが過剰に分泌されて低血糖状態になれば、脳にも栄養が行き渡らなくなるため、強い眠気に襲われると考えられています。
概日リズム睡眠障害とは
概日リズム睡眠障害とは、体内時計の周期を外界の24時間周期に適切に同調させることができないために生じる睡眠の障害を指しています。
睡眠のリズムは、体温などの自律神経系、内分泌ホルモン系、免疫・代謝系などと同様に、体内時計によって調節されており、日常生活においては様々な刺激因子を受けることにより、体内時計が外界の周期に同調して調整されています。
もっとも強力な同調因子は光であり、食事や運動、仕事や学校などの社会的な因子も同調因子として働いていると考えられていますが、この体内時計の周期と地球の24時間の周期との間のずれを修正することができない状態が概日リズム睡眠障害です。
概日リズム睡眠障害になれば、望ましい時刻に入眠し、覚醒することができなくなってきますし、夕方の眠気や頭痛、倦怠感、食欲不振などの身体的な不調が現れてきます。
夕方の眠気を抑える方法
夕方の眠気を抑えるのに役立つ方法を紹介します。
カフェインを摂取する
コーヒー、お茶類やチョコレートの原料であるカカオなどに含まれているカフェインに眠気覚ましの効果があります。
カフェインは、神経を鎮静させて眠気を感じさせる「アデノシン」という物質のはたらきを阻害することで眠気を覚ます作用があると考えられますので、夕方の眠気を抑える方法の一つとなります。
部屋を換気する
また、空気のこもった部屋にいて頭がボーッとして眠気を感じる際には、定期的に窓を開けて、部屋の空気を入れ換えることによって眠気覚ましに繋がります。
狭い部屋では空気がこもり、二酸化炭素濃度が高まりやすいと考えられ、空気中の二酸化炭素濃度が高くなると、倦怠感や眠気、頭痛、耳鳴り、息苦しさなどの症状が現れるといわれていますので、換気して二酸化炭素を下げることで眠気が抑えられる効果が期待できます。
日の光を浴びる
日の光を浴びることも眠気覚ましには効果的だと考えられていて、起床時に眠気が強い場合はカーテンを開け、朝の光を部屋に取り込む、あるいは昼休みや夕方に外出するなど、日中に光を浴びておくことで眠気を覚ますことが出来る場合もあります。
食生活を見直す
血糖値スパイクを予防するためには、欠食をせずに、1日3食をほぼ決まった時間に摂取するとともに、炭水化物に偏るような食事内容を避けて、食物繊維が豊富なおかず(野菜・海藻・キノコ類)など栄養バランスが優れたメニューの摂取を心がけましょう。
早食いするとインスリンの分泌が追いつかなくなり血糖値が急上昇や急降下して眠気が襲ってくることもありますので、ゆっくり食べることを意識しましょう。
また、食後にはからだを動かすことで、血糖値の急上昇を抑える効果がありますので、夕食後などに少し歩く、家事をするなどを実践してみるとよいでしょう。
いびき外来を受診する
夕方に眠気があって、睡眠時無呼吸症候群と診断された場合には、その重症度によって様々な理学的療法や手術治療が実践されることになります。
夜間の睡眠中に途中で何回も呼吸が止まって、大きないびきを認める際には危険な兆候であると考えられるので、速やかに病院を受診する必要があります。
いびきを対象としている専門医療施設は多くはありませんが、総合内科、耳鼻咽喉科、循環器内科、呼吸器内科などに併設していびき外来という専門外来の形態で診療が実施されている場合もあります。
いびき外来においては、普段から大きないびきを鳴らす可能性がある睡眠時無呼吸症候群を含めた疾患の有無を調査し、その結果に応じて睡眠中に気道が狭くなる状態を改善する治療を実践することも可能です。
まとめ
これまで、夕方になると眠くなるときに考えられる原因と眠気を抑える方法などを中心に解説してきました。
食事の後や夕方にうとうとと眠気に襲われることもあり、少しくらいの眠気なら、健康な人でもある程度経験する自然な現象と言えるでしょう。
ただし、強い眠気が長時間続いてしまうときは一定の注意が必要であり、睡眠負債、睡眠時無呼吸症候群、血糖値スパイク、糖尿病の初期症状などが考えられます。
日々のセルフケアを行いつつ、それでも症状が長引く際には、糖尿病内科、耳鼻咽喉科、心療内科、いびき外来など専門医療機関を受診して相談しましょう。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。