全身性多汗症と局所性多汗症の原因と症状の特徴

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多汗症という病気があります。非常に多くの汗をかく病気ですが、いわゆる汗っかきとは異なります。また多汗症には全身に汗をかく全身性多汗症と、体の一部分だけに汗をかく局所性多汗症があります。それぞれどのような特徴があるのか詳しく見ていきましょう。

多汗症と汗っかきの違い 

多汗症は汗を多くかく病気のことです。一方で、日常的に生活をしていても汗を多くかく いわゆる汗かきの人もいます。では一般的な汗っかきと多汗症はどのように違うのでしょうか。 

汗っかきと多汗症を区別する場合には、汗がなぜ出るのかということについて考えるといいでしょう。もともと汗は、上がりすぎた体温を下げるために皮膚から分泌されるという役割のほか、ストレスを感じた時にそれに対処するために体温が上がるのを防ぐため汗をかくという機能もあります。

 このように暑かったりストレスを感じたりする時に汗が出るのは正常なことです。ですのでこのような状態の時に汗を多くかくのは いわゆる単なる 汗っかきと考えられ、病的なものではないと考えます。反対に暑さやストレスがないのに汗が出てくるものが多汗症と言えます。

多汗症は汗のかき方に特徴があります。例えば寝ている間には症状がなかなか出てこない、左右差がない、日常生活に影響が出る、などです。 

日本人の約10人に1人は多汗症であると言われています。女性の有病率が男性の1.7倍と多く、年代的には20代から30代の有病率が高いと言われています。また遺伝性があることもあり、家族に多汗症の人がいるというのも特徴になります。

原発性多汗症と続発性多汗症 

このように病的な汗が出る状態である多汗症は、原発性多汗症と続発性多汗症とに分類されることもあります。

 原発性多汗症は、何らかの病気によって汗が出るのではなく原因がよくわからないのに汗が出てくるものです。多汗症のほとんどがこの原発性多汗症に分類されます。

一方で続発性多汗症というのは、何らかの病気がある場合にその病気に伴って汗が出るものを言います。例えば、感染症、甲状腺機能亢進症、悪性リンパ腫などで起こってくることがあります。 

全身性多汗症の原因と症状 

全身性多汗症の原因について分類していきましょう。一番多いのが原発性多汗症で原因が分からないものになります。

他の理由としては 温熱性発汗があります。運動や高温環境、発熱によるものです。通常の発汗とも言えますが、通常の発汗以上に多くの汗が出るという特徴があります。

内分泌代謝性発汗としては、更年期障害や甲状腺機能亢進症、糖尿病、肥満などによって起こってくる発汗が挙げられます。 

神経障害による発汗としてはパーキンソン病などの神経系の疾患が原因で起こってくる発汗がこれにあたります。

薬剤副作用として出てくる発汗もあります。主な薬剤としては向精神薬や睡眠導入薬、非ステロイド系抗炎症薬、長期間にわたるステロイド薬の使用などが発汗の原因となってきます。

他に一過性のものとしては、感染症による発汗が挙げられるでしょう。 

症状の特徴

全身性多汗症は、体の一部分に限定して汗が多く出るのではなく、体の様々な場所から汗が多く出ます。汗の量はまちまちですが、1日に何回も服を替えなければならないほど大量に汗が出ることも少なくなく、生活の質は著しく低下します。

しっかり水分を取らないと脱水になってしまうということもあります。

局所性多汗症の原因と症状 

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局所性多汗症の主な原因としては、一番多いのは原発性多汗症です。 

原発性多汗症は原因が分からないとされていますが、遺伝的な原因、ストレス、ホルモンバランスの乱れなどで自律神経系が乱れることで 汗の分泌が活発になっているのではないかと考えられています。

他の原因としては精神的緊張から手のひらや足の裏、脇の下などと特定の部位から汗がよく出る精神性発汗や、辛いものを食べた時に出る味覚性発汗等の他、神経が何らかの原因で障害を受けている場合には神経障害による発汗が起こってくる場合があります。

原発性局所多汗症の症状の特徴

原発性局所多汗症に関しては、次に挙げるように、それぞれ病名がつけられています。

原発性手掌多汗症

手のひらに大量の汗をかきます。症状が重い場合には手からポタポタと汗が滴り落ちるぐらいの量が出てくることもあります。このような場合、手が常に汗で湿っているため、指先が冷たくなりやすく、指先の色が紫色になってしまうこともあります。

また汗が多いことで汗疹が起こりやすく皮膚のめくりや細菌感染を起こしやすいとこともあり、非常に悩ましい 症状となります。1日の中では、昼間に汗が出やすく、睡眠中には汗が出ないという特徴もあります。

原発性腋窩多汗症

脇の下に大量の汗をかくものです。日本人の20人に1人はかかると言われていて決して珍しくありません。汗が多く出ることで、臭いや衣類の黄ばみの原因となり、日常生活に影響を及ぼすこともあります。この多汗症も、左右対称であったり、睡眠中には汗が止まるなどの特徴によって、一般的な汗っかきと区別されます。 

原発性足底多汗症

足の裏に大量の汗をかく症状をみとめます。量が多いと靴下がびしゃびしゃになってしまうほどの量の汗をかきます。原発性手掌多汗症と同時に発症することがよくあります。

原発性頭部顔面多汗症

頭部や顔面に大量の汗をかく症状です。暑かったり、ストレスを感じたりした時に汗が出るのはもちろん、そのような刺激がなくても汗を多くかくというのが特徴で、蒸発しにくくベタベタとした汗をかくのが特徴です。 

続発性局所多汗症の症状の特徴

続発性多汗症は原因疾患によって様々な特徴があります。

全身性疾患に伴う多汗症であれば、局所に多く汗が出るとはいえ手のひらだけ、足の裏だけといった限定的な場所ではなく、手のひらや足の裏両方に汗が出るといった特徴がよく出てきます。また左右対称に出ることが多いです。

一方で、神経障害に伴う多汗症であれば、左右差があり、障害を受けた神経の側に多く汗が出るということもよくあります。

郷正憲

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。 「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

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