頭痛だけじゃなくて首も痛い!首のコリが引き起こす緊張型頭痛

お悩み

頭痛の原因は多くありますが、緊張型頭痛と呼ばれる頭痛は肩こりからくる頭痛で、首や肩がこっているせいで痛みが生じてくるものです。首のコリはどのような原因で起こるのか、そして、それがどのようにして頭痛に繋がるのか解説します。

負荷がかかりやすい首の構造

首は、頭をささえる重要な役割を担っています。首を支えている頭の重さは平均で5~6キロです。頭が脊椎の上にまっすぐに乗っていれば、胸や背中の筋肉を利用してうまくバランスを取れる構造になっています。

しかし、脊椎が支えるバランスのよい場所から頭がずれると、それを支えようとして脊椎の周りの筋肉は緊張します。例えば、頭が脊椎の真上から15度ほど前へ傾くと、首や肩にかかる頭の重さは通常の2倍である12キロに、さらに60度ほど前に傾くと約6倍の25~30キロほどにもなってしまうのです。

頭を直接支える首は負担が強くかかってしまう場所になります。背中や腰の部分であれば多くの筋肉が支えているため、骨や筋肉にかかる負担はある程度軽減されます。しかし、首は限られた筋肉のみで支えられており、負担はその分大きくなります。

首のコリの原因

スマホで悩みを検索する女性

どのような事をすると首にこりがたまってしまうのでしょうか。首のコリの原因を確認しておきましょう。

スマートフォンの長時間使用

スマートフォンの長期使用やパソコン作業は首に負担がかかりやすくなります。

スマートフォンを使用している時の首の角度は約60度前傾姿勢になります。頭が前に突き出て背中が丸まった姿勢となり、先ほど説明した25~30キロほどの力が首にかかります。

こうした姿勢を長時間続けると、頭を支えている頸椎や脊椎全体、その周辺の筋肉の荷重バランスが崩れてしまいます。そして、首筋の筋肉は上下に引っ張られる事になります。この状態が長く続くと、首のこりの原因となってくるのです。

また、このような状態が続くと、頸椎の並びがゆがんできます。元々前方に凸のカーブを描くように配列している頸椎が、まっすぐに並んでしまいます。これをストレートネックと呼びます。

ストレートネックになってしまうと、頭が脊椎の真上に乗っている状態であっても、力の分散がうまくいかずに頸椎に力がかかり続け、首のこりがひどくなってしまうのです。

眼精疲労

目の使いすぎによって眼球周辺の筋肉が疲れることを眼精疲労といいます。眼精疲労が生じると、ものを見たりピントを合わせたりするのに労力を要し、また同時に肩の周りの筋肉に力が入ります。

肩に力がかかると、姿勢が悪いときと同じように肩のこりにつながります。長時間のスマートフォンの使用は姿勢の悪化を来して肩こりの原因になりますが、眼精疲労を生じさせることによっても首のこりの原因になってしまうのです。

歯ぎしり、食いしばり

咀嚼に関わる筋肉を咀嚼筋といいます。咀嚼筋はそれだけで動くのではなく、肩や首の筋肉とも連動して動くことで力を発揮します。

歯ぎしりや食いしばりといった歯を強く噛む運動をしてしまうと、その力が余計に首にかかり、首の筋肉の緊張を来します。首の筋肉の緊張はやはり肩や首のこりの原因となってしまうのです。

加齢による骨の変形

年齢を重ねるとだんだんと骨が変形してくることがあります。特に頸椎は力が加わる事が多く、だんだんと摩耗して骨自体が変形したり、骨の並びがゆがんだりすることがあります。

このように骨の変形が起こってくると、それを支える首の周りの筋肉にかかる負担も大きくなり、筋肉が張るようになってきます。それによって首や肩のこりに繋がってくることがあるのです。

首のコリが引き起こす緊張型頭痛とは

このように様々な原因で首のこりは起こってきます。そして、首のこりが引き起こす頭痛が緊張型頭痛です。

僧帽筋の緊張と緊張型頭痛

緊張型頭痛というのは、別名筋緊張型頭痛とも呼ばれる頭痛です。肩こりから起こってくる頭痛として知られています。

肩を支える筋肉は様々ありますが、最も大きい筋肉が僧帽筋です。僧帽筋の名称は僧侶が着ていたフードの形に似ていることから名付けられました。現代でいえばパーカーのフードの形と言ったらわかりやすいでしょうか。ただし、パーカーのフードと違い下向きだけに三角形になっているのではなく、実際には菱形のような形をしています。左右の頂点が肩甲骨、下の頂点が腰椎付近、上の頂点が後頭部に付着する大きな菱形をした筋肉です。

僧帽筋は肩を支える筋肉の中でも最も大きい筋肉ですから、頭を前に傾けた時に最も力がかかる筋肉ともいえます。頭を傾けた姿勢を長い時間取ると僧帽筋がだんだんと硬くなり、首筋のこりの原因となってきます。

また、首筋がこるだけではなく、筋肉が付着している場所にも強い力がかかり続けるため、痛みを生じてきます。肩はもちろん、後頭部にも引っ張られる力がかかり続け、痛みを感じるようになります。これが緊張性頭痛の元となる痛みです。ただ、これだけで痛みが説明できるわけではなく、様々な機序が提言されています。

末梢性疼痛メカニズムと中枢性疼痛メカニズム

その機序は大きく分けると末梢性疼痛メカニズムと中枢性疼痛メカニズムです。

末梢性疼痛メカニズムは、筋肉の緊張が続くとサブスタンスPやグルタミン酸などの神経伝達物質が分泌され、その物質の刺激でプラジキニンやプロスタグランジンなどの痛みを感じる物質が精製されるという機序です。

一方で、中枢性疼痛メカニズムは、筋肉の緊張が長時間続くと、痛みを感じづらくする下降抑制系という経路が弱まって痛みを感じるようになるという機序です。

いずれの場合にも、僧帽筋の血流が低下していることが認められており、運動によっても血流があまり増加しないことが分かっています。このことによって痛みが強くなっているのではないかともいわれています。

頭痛の頻度による分類

緊張性頭痛は発生頻度によって分類されています。稀発反復性緊張型頭痛は3か月以上痛みが続くもののうち、平均1か月に1日未満の頻度で出る頭痛、頻発反復性緊張型頭痛は3か月以上痛みが続くもののうち、平均1か月に1~14日の頻度で出る頭痛、慢性緊張型頭痛は1か月に15日以上の頻度で出る頭痛とされています。

また、頭痛の診断基準もあります。片頭痛や他の頭痛と区別するために、両側であること、締め付けるような頭痛であること、吐き気がないこと、光過敏や音過敏がないこと等が基準として挙げられています。

血流改善で緊張型頭痛を予防

緊張性頭痛は、僧帽筋の血流不足によって痛みが強くなっている可能性が示唆されています。運動などによる血流の改善によって痛みの軽減を期待できます。

まずは、正しい姿勢を心がけることが重要です。ストレートネックになりにくいようにするという意味もありますが、血流が正しく流れるためにも正しい姿勢を維持する事で血流を維持するようにします。

その上で、様々な血流改善法を取り入れるとよいでしょう。マッサージやストレッチなどを行って短期的に血流を改善させることも良い方法です。それに加えて蒸しタオルなどで首から肩の付近を暖めたり、入浴時にぬるめのお湯に長時間つかったり、定期的に水分を飲みしっかり睡眠を取ることが推奨されます。また、バランスのよい食事をとること、禁煙することは血流悪化を防ぐのに役立ちます。

郷正憲

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。 「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

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