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病気なのか、性格特性なのか?アスペルガー症候群の人の特徴【Doctors’ Columns #03-2│河野和彦】

コラム

最近、発達障害の話題がマスメデイアに多く流れるようになりました。あなたの周辺でも、そういう話題になることはありませんか。間違った知識で偏見が生まれてもいけないし、思い切って医者を訪ねることでバラ色の気分になれることもあります。ぜひ、ご一読ください。

2回目の今回は、自閉スペクトラム症(ASD)の中でも特にアスペルガー症候群を取り上げます。

アスペルガー症候群

才能のある歌手や芸術家が、自分はASDだと告白することがあります。このようにASDは脳のアンバランス発達ですから、吃音症で話しにくい人は天才に多いことも知られています。

社会生活で支障が出る理由は、コミュニケーションが上手ではないからです。交渉能力と言いますか、「大阪のおばちゃん」のように値切るようなことはできないですね(私もです)。

ASDは、物に強くこだわるため、意見が分かれる仲間とは、ものわかれになります。ASDの映画監督は、俳優が倒れるまで撮影し直しますね。IQが100以上であれば、学生生活までは障害と気づかれませんが、社会人になるとみずから問題解決をしなければならないので、他人と共同して壁を乗り越える行動は不得手です。

「発達障害が増えている」というのは、社会構造の変化で、商店から大企業になって、チームワークを必要とする仕事が増えたために、ASD気質の方が、能力を発揮できなくなるからです。個人商店の「変わったおやじ」は個性ですまされたのですが、大企業では通りません。

ですから、自分の不安や不満が満たされないときに、癇癪をおこして地べたに屈服して暴れまわる子どもはだいたいASDであって、衝動性、爆発性、易怒で親を困らせます。大人のASDでは、強迫的、常同的特性からアルコール依存、ギャンブル依存、カード破産で離婚になりやすいわけです。

ASDの子どもを持つ親は、技術を身につけて1人でできる仕事をめざすようにもってゆくのが安全ですし、無理して高い学歴をめざし叱咤激励することのないように気をつけてほしいですね。ASDは神経過敏という生物学的特性があるため、親の罵声は10倍に聞こえ、トラウマになります。将来の親殺しとか犯罪に結びつくタネになりえます。

アスペルガー症候群と精神病

私は、今回の連載で「隠れ発達障害」を解説したいのですが、認知症を長年やってきて、高齢になると認知症をおこす病気を2~3種もつようになるのですね。そうなると、いわゆる「診断基準」というものが役に立ちません。

発達障害もそうですが、「ADHDとASDが半数で合併している」という言い方はおかしいと思っています。幼少時から病気が重なるわけないではないですか。みな少しずつグラデーション状に持っていると思います。

ですからASDで怒りっぽい中年に、ADHD治療薬を処方するということはしょっちゅうです。仕事のミスが減れば、注意されなくなり、ASDの怒りも沸かないではないですか。

ASDは神経過敏なので、「マイクロサイコーシス」と言って、よく聞くと幻聴に近い感覚(風の音が声に聞こえるなど)を持つ人がいます。これは統合失調症に近いわけですし、現に両者の遺伝子変異部位は共通点があります。

また、双極性障害にもなりやすいと指摘されています。ASDは完璧主義で「こうあらねばならない」と思うことが強いため、相手のミスを許さない、相手が倒れるまで叱りつけるところがあって、当然離婚につながります。

私は、そのような特性を把握できれば、医療介入として抗精神病薬(クロルプロマジン、リスペリドン)を少しだけ処方し、離婚を防止できると確信しています。よく外来で配偶者の口撃に涙される方がいますが、「ASDの人と話し合っても、たぶん無理。薬でマイルドにしてからでいいですよ」ときっぱり言いますね。

大塚明彦先生の「精神病の正体」1を一度ぜひお読みいただくといいと思います。精神病という病気はない。すべて発達障害の表面に出た症状に病名をつけただけだ、というのです。

ASDは病気なのか、性格特性なのか。それはケースバイケースですし、時期によっても変わります。社会に迷惑がかかっているなら病気、それほどではないから性格と理解すればいいです。だから隠れアスペルガーはいくらでもいます。

あなたが苦痛なら、相手は病気なのだと思って自分が大人の対応をすることで軋轢をさけてゆくのです。そして、私はきれいごとが嫌いですからさっさと処方します。話せばわかりますよ、なんて言わない。少し薬を飲むことで、自殺も、喧嘩も、犯罪もなくなるという事実を皆さんに知ってもらいたいですね。

睡眠導入薬も脳に悪いからといって処方してくれない医師がいますが、それは違うと思います。寝ることで明日の活力が生まれるのです。昼間仕事をしないから眠れないのですよ、なんて正論は吐けないですね。アルツハイマー型認知症も寝ないとアミロイドβが排泄されなくて認知機能が悪化します。薬でもいいから寝たほうがいいです。

  1. 大塚明彦:精神病の正体。幻冬舎、2017。 ↩︎

河野和彦

医師 河野和彦 名古屋フォレストクリニック院長。医学博士。近畿大学医学部卒業。名古屋第二赤十字病院で全科ローテ―ト後、名古屋大学医学部大学院老年科博士課程修了。名古屋大学医学部老年科講師、JA愛知海南病院老年科部長、共和会共和病院老年科部長、平成21年名古屋フォレストクリニック開院、現在に至る。 趣味はYouTubeで月2回発信することなど。@user-bv6up1bg5p 「私のYouTubeには、大人の発達障害、食事療法など盛りだくさんの内容(3年半で連載110回)ですからぜひご参考になさってください」 名古屋フォレストクリニックHP:http://www.forest-cl.jp/

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