産後の胃痛の原因は?育児中のストレスや高血圧に注意
育児中のストレスは、想像するよりもずっと大きく、ストレスによって原因の思いつかない胃痛や腹痛が起きたり、不眠傾向になることも珍しくありません。
ここでは産後の胃痛を取り上げ、ストレスや高血圧の影響について詳しく解説します。
目次
産後のストレスによる胃痛
産後は、出産の疲れが取れる間もなく子育てで大忙しの日々を送ることになります。
赤ちゃんの世話に追われる一方で、心と体のトラブルに悩まされているケースも少なくありません。
「なんとなく胃が痛いな…」と気になりつつも、やり過ごして様子を見ている人もいるのではないでしょうか。
一般的に、胃痛の原因として考えられるのは、主にストレスによる自律神経の乱れ、あるいは食べすぎ・飲みすぎ・刺激物による胃の炎症、ほかにもピロリ菌などの細菌感染などが挙げられます。
産後に胃痛が見られる場合、多くは育児ストレスによるものと考えられます。
出産を機に生活スタイルが大幅に変わるうえに、授乳やおむつ替えで睡眠不足になっている、あるいは乳児を順調に育てるというプレッシャーを感じているせいで、ストレスが知らず知らずのうちに溜まっているのかもしれません。
過度なストレスがあると、胃腸の働きをコントロールしている自律神経が乱れて、胃酸が過剰に分泌されることで、胃の粘膜が傷ついて炎症を起こし、胃痛につながることがあります。
妊娠高血圧症候群に伴う胃痛
妊娠高血圧症候群とは、一般的に妊娠20週以降から分娩後12週までにかけて妊娠期の妊婦さんや産褥婦において高血圧がみられる状態を意味します。
高血圧のみならず蛋白尿の兆候を伴う場合もありますが、あくまでも病態の主体は高血圧であって蛋白尿や随伴する浮腫症状は高血圧に伴って合併するという概念で捉えられるために、妊娠中毒症から「妊娠高血圧症候群」へと名称変更された経緯があります。
妊娠高血圧症候群になりやすい人
妊娠高血圧症候群とは、妊婦さんに発症する高血圧症であり、放置すると胎児にも様々な悪影響が出るため、慎重な対応が必要となる疾患です。
これまでの調査でこの病気を引き起こす明確な原因や病態は解明されていませんが、リスク因子としては年齢が15歳以下40歳以上である、あるいはBMI25以上の肥満である、初産で多胎妊娠をしているなどが考えられています。
また、基礎疾患として甲状腺機能異常症、糖尿病、原発性腎疾患、全身性エリテマトーデス、抗リン脂質抗体症候群、本態性高血圧症などを有している人は本疾患に罹患しやすいとも言われています。
さらに、日本における妊娠高血圧症候群で最も有力な原因として、胎盤の血管の形成異常や血管内皮の増殖などによる影響が挙げられています。
高血圧になるメカニズム
前提となる背景として、人間の胎盤はその形成過程で一度子宮側に位置するらせん動脈と呼ばれる血管構造を破壊して、より多くの血液や栄養分が胎児に行き渡るように概ね妊娠10週から15週前後にかけて血管壁の構造を作り直すと伝えられています。
しかし、妊娠高血圧症候群を患っている妊婦さんの体内では、この血管壁の再構成が不十分である結果、胎盤を経由して胎児に本来到達するべき栄養素や酸素の供給が完全ではなくなってしまいます。
そうして、母体はその課題を何とかしようと、自らの体を出来る限り高血圧にまでして胎盤を通じて胎児に栄養分などを送ろうとするがゆえに妊娠高血圧症候群を発症すると考えられています。
妊娠高血圧症候群の症状
妊娠前には高血圧ではなかった人が、妊娠20週から産後12週までの間に高血圧を発症した場合を、妊娠高血圧症と呼びます。上の血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上、下の血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上の場合が高血圧に該当します。
さらに、蛋白尿(尿中の蛋白が1日あたり0.3g以上)が認められる場合は妊娠高血圧腎症と呼び、この2つを総称して、妊娠高血圧症候群と呼びます。
妊婦の20人に1人が発症するといわれており、重症になるとお母さんには脳出血や肝臓、腎臓などの機能障害を引き起こす可能性がありますし、赤ちゃんの発育が悪くなる可能性もあり、最悪の場合は赤ちゃんが亡くなってしまうこともあります。
また、高血圧や蛋白尿に加え、母体が自覚できる症状としてはむくみがあります。
高血圧による頭痛やめまいなどの症状がでることもありますし、病態が悪化して胃痛・嘔吐・痙攣を引き起こすことがあります。
妊娠初期に起こる胃痛の可能性も
妊娠初期の胃痛は、つわり(悪阻)によるものが代表的です。
嘔吐する際に胃酸が逆流してしまって、逆流性食道炎のような状態になってしまいます。
また、もともと妊娠前に胃痛の既往があった方、胃酸が出やすいタイプの方も、妊娠を機にやや悪化しやすい傾向があると思います。
妊娠初期の胃痛は、つわりの一種のようなもので、通常は時間の経過とともによくなることが多いですが、稀に急性胃炎や胃潰瘍などの病気が隠れている場合もあります。
妊娠・出産と関係のない胃痛の原因
産後の胃痛が出産や子育てとは関係のない、別の原因によって生じていることがあります。例えば、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、機能性ディスペプシアなどが挙げられます。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃潰瘍は、一般的に胃角部のあたりにできやすいが、高齢者は、胃底部の噴門の近くにもできやすく、十二指腸潰瘍は、胃酸の影響を受ける十二指腸の始まりの部分、十二指腸球部にできやすいといわれています。
一般的に、男性に多く発症し、胃・十二指腸潰瘍の患者例の男女比は約3対1になっています。
胃・十二指腸潰瘍の誘因としては、日々のストレスや過労、喫煙や飲酒習慣、香辛料や熱すぎる・冷たすぎる食べ物、消化の悪いものを過剰に摂取すると罹患しやすいです。
胃・十二指腸潰瘍の症状には、みぞおちや胃の痛み、胸やけ、吐血・下血などが挙げられます。
特に、胃の痛みは、空腹時に起こることが多く、胸やけはとくに十二指腸潰瘍で起こることが多いですし、潰瘍が血管を傷つけることで、出血が起こって、口から血を吐く場合を吐血、血の混じった便がでることを下血と呼んでいます。
逆流性食道炎
逆流性食道炎とは、胃酸を含む胃の内容物が食道に逆流することで食道に炎症が生じる病気です。
食道と胃の境目には下部食道括約筋と呼ばれる筋肉があり、食道を通った飲食物が胃へ流れ込むとき以外はきつく閉じられているため、通常は胃の内容物が食道へ逆流することはありませんが、下部食道括約筋が緩むことで胃の内容物の逆流が生じることがあります。
食道に炎症が生じると、一般的には胸やけや食後の胃痛などの症状が現れますが、中には無症状で内視鏡検査などで初めて発見されるケースも少なくありません。
機能性ディスペプシア
機能性ディスペプシアとは、検査で明らかな異常がないにもかかわらず、慢性的なみぞおち辺りの痛みや胃もたれなどの上腹部症状を現す病気を指します。
慢性的な胃痛などの腹部症状は、胃や十二指腸の炎症、潰瘍、がんなどの病変(器質的異常)によって引き起こされることが多いですが、病変が認められない場合もあります。そうした際には、胃や十二指腸の機能的な問題によって症状が引き起こされていると考えられます。
機能性ディスペプシアの罹患率は約15%とされ、通常であれば命に関わることはありませんが、生活の質に大きく影響するため、我慢せずに適切な治療を受けることが大切です。
まとめ
これまで産後の胃痛の原因や、育児中のストレスや高血圧に注意するポイントなどを中心に解説してきました。
産後のストレスを放置すると体調不良として現れることもあり、ストレスサインとして胃痛や食欲不振、胃もたれなどの症状を自覚することがあります。
これらは、胃の働きや機能をつかさどる自律神経がストレスによって乱れることが原因と考えられます。
セルフケアで改善しなければ、消化器内科や産婦人科など専門医療機関を受診して相談しましょう。
今回の情報が参考になれば幸いです。