肩こりを伴う喉の痛みの原因に!慢性上咽頭炎の治療法
喉の痛みがある上に、肩こりもあるような方はいらっしゃいませんか。偶然2つの痛みが出ている場合もありますが、もしかしたら慢性上咽頭炎によって、喉の痛みと肩こりが出ているかもしれません。ここでは、症状が全身に広がることがある慢性上咽頭炎について解説します。
上咽頭の役割と特徴
喉の部分の中でも口と鼻とか繋がっている部分のことを咽頭と言います。咽頭よりもさらに進んだところにある、気管と食道を分岐する部分のことを喉頭といいます。
咽頭は、さらに上咽頭、中咽頭、下咽頭に分かれます。その中でも上咽頭は、鼻の奥の方 を言います。 もう少し進んで口の奥とつながる部分のことを中咽頭と言います。ですので、上咽頭は口と鼻がつながるよりも、もう少し鼻側の部分と考えるといいでしょう。
上咽頭は、左右の鼻の穴から吸い込んだ空気の流れを下方へ変える働きを持っています。簡単に言えば空気の通り道です。しかしその空気には様々なウイルスや細菌などの異物が含まれます。ですので感染を防ぐために体には様々な防御機構が備わっています。
上咽頭の表面は、繊毛上皮と呼ばれる粘膜で覆われています。これは絨毯の表面のように、無数のひだが表面に突出している構造を言います。この構造によって入ってくるウイルスや細菌などを物理的に吸着し、それよりも奥に入っていかないように防御しているのです。
さらに物理的に防御しているだけではなく、リンパ球を中心とした様々な免疫細胞がここには常駐しています。感染してくるような物質が体の中に入ってくると免疫細胞が働いて、体に感染が起こさないようにするのです。
肩こりの原因にもなる慢性上咽頭炎
感染対策の最前線である上咽頭の部分には様々な ウイルスや細菌がやってくるため、 線毛上皮やリンパ球がどれだけ働いても感染を起こしてしまうことがあります。
小児の頃であれば、感染を起こしても一旦炎症が起こるものの、しばらく免疫反応が続いた後はきれいに治っていきます。これが急性の炎症として起こってくる、 急性上咽頭炎です。いわゆる喉の風邪として、喉の痛みや熱などの症状が出て数日で治っていきます。
しかし、特に成人で同じように感染を起こした時に、免疫によってウイルスが退治された後も上咽頭に炎症やうっ血が残ることがあります。これが慢性上咽頭炎と言われる状態です。
実はこの慢性上咽頭炎という考え方は、日本独自の考え方です。まだ診断基準がはっきりしているわけではなく、耳鼻科でもなかなか異常を見つけられないことも多いものです。
というのも、 急性上咽頭炎の状態と違い、慢性上咽頭炎の場合は血液検査など体の他の部分で検査をしてもなかなか異常が出ていないことが多いからです。診断をつけるためには、 内視鏡などで上咽頭部分のうっ血を見つけるしかありませんから、疑って検査をしなければ なかなか見つからないのです。
慢性上咽頭炎を疑う症状としては
- 風邪をひいた後に咳がいつまでも続く
- 喉の痛みがずっと続く
- 鼻水が喉を流れて落ちてくる
- 喉の奥に詰まった感じが続いている
- 痰がよく絡む
などの風邪が慢性化したような症状が挙げられます。
特徴的なこととして、肩こりや背中の痛みなど、他の体の痛みが合併してくるということがあります。このような関連症状から診断に至ることもあります。
慢性上咽頭炎の症状が全身に広がる理由
慢性上咽頭炎には他の症状が全身に起こってくるという特徴があります。なぜこのような症状が起こってくるのでしょうか。
関連痛・放散痛
実際に炎症が起こっている部分とは違う部分に痛みが生じることを関連痛と言います。慢性上咽頭炎の場合、上咽頭に炎症が起こっていることで周囲の神経が刺激されることによって、頭や首、肩に痛みが生じてくることがあります。
また炎症が咽頭に限局せず、広がることによって筋肉などの痛みが出てくることがあります。このような痛みを放散痛といい、関連痛と同じように頭や首、肩に、痛みが生じてくることがあります。
二次疾患の症状
上咽頭で炎症が起こり、そこで活性化された炎症細胞や物質が血流によって全身に巡ることによって、様々な炎症を他の場所で起こします。このような二次疾患が起こっている場合、上咽頭炎のように炎症が元々起こっている場所のことを「病巣炎症」、それによって生じた 他の場所の炎症のことを「二次疾患」と呼びます。
二次疾患としては、
- IgA腎症
- ネフローゼ症候群
- 関節炎
- 胸肋鎖骨過形成症
- 掌蹠嚢疱症
- 乾癬
- 慢性湿疹
- アトピー性皮膚炎
などが挙げられます。皮膚や関節に多く起こってくるのですが、時々腎臓に症状が起こることもあります。
自律神経の乱れによる症状
上咽頭炎がある場合、原因ははっきり分かっていませんが、自律神経の調節異常を起こしてくることがわかっています。自律神経の異常が起こってくると、めまいや吐き気、胃の不快感、便の異常、全身倦怠感、うつ症状などが現れます。
原因については、自律神経の中枢である視床下部が上咽頭のすぐ近くにあるため、炎症が何らかの異常を惹起しているのではないかと考えられています。
慢性上咽頭炎の治療法
上咽頭炎の治療は、消炎鎮痛剤を内服することによって、炎症を抑えて状態が改善してくるのを待つのが第一歩です。
しかし、それではなかなか改善しないことも多くあります。その場合に行われるのが、Bスポット療法と呼ばれる治療法です。
Bスポット療法というのは、上咽頭に塩化亜鉛などの消炎剤を直接塗布させる治療法です。 これにより激しい炎症が起こっている部分の炎症を抑え、症状の改善を期待します。
実際この治療を行うと、腎臓や皮膚などに起こっている二次疾患の状態が改善するケースもあり、効果が期待できる治療です。
塩化亜鉛は鼻の中や口の中から綿棒で上咽頭に塗布します。病的な上咽頭炎がある場合、 塗る際に綿棒に血液が付着するほか、痛みをある程度感じます。中には数時間痛みを感じることもありますが、その後症状が改善していきます。
急性上咽頭炎の場合には、1度の治療だけで症状が軽快する場合もありますが、慢性上咽頭炎の場合には、1度の治療だけでは改善しないこともあります。そうした場合は、週に1~2回治療を行うことで、2~3か月程度で症状が改善してくることが多いです。