足の指が黒くなる原因は?チアノーゼの特徴と考えられる病気
冷たいプールに長時間入っていると唇が紫色になることがあります。これと同じようなことは手足にも起こり、中には、治療が必要な病気が原因になっていることもあります。
チアノーゼとは、血液中の酸素が不足することをきっかけとし、くちびるや指先などの皮膚や粘膜が青紫色に変化した状態を指します。ここではチアノーゼの特徴と考えられる病気について解説します。
手足の指が黒くなるチアノーゼ
チアノーゼは、全身の中でもくちびる、口の中の粘膜、鼻先、耳たぶ、指先、爪の下(爪床)などにみられます。
これらの部位は毛細血管が豊富に張り巡らされており、皮膚の表皮が薄く、メラニン色素が少ないという特徴があります。毛細血管内を流れる血液の色が透けやすく、皮膚や粘膜が青紫色にみえやすくなります。
また、重度のチアノーゼでは皮膚そのものも変色します。
血液中の酸素が足りなくなると、血液中には酸素と結合していない還元ヘモグロビンが増加します。
チアノーゼは、血液中のヘモグロビンのうち、還元ヘモグロビンの割合が増えることで現れます。
具体的には、毛細血管を流れる血液中の還元ヘモグロビン濃度が5g/dl以上になると現れるとされます。
チアノーゼの種類
チアノーゼには、主に中枢性チアノーゼ、末梢性チアノーゼ、血液性チアノーゼの3種類があります。
中枢性チアノーゼ
中枢性チアノーゼとは、顔の中央部分や体幹など、全身の皮膚や粘膜にチアノーゼが現れ、原因としては、呼吸機能の障害や生まれつきの心臓病などが挙げられます。
呼吸機能障害の代表例としては、泣き入りひきつけ、クループ(オットセイの鳴き声のような咳)、気道に異物が詰まる、間質性肺炎、呼吸窮迫症候群、生まれつきの心臓病であるファロー四徴症などが挙げられます。
末梢性チアノーゼ
末梢性チアノーゼは、動脈や静脈がふさがって毛細血管の血流速度が低下したり、末端への血液循環量が減ったりすることで、指や爪、鼻先などの末端部のみにチアノーゼが現れます。
末梢性チアノーゼは、寒い環境や冷たい水などにさらされること(寒冷暴露)、あるいは閉塞性動脈硬化症、下肢静脈瘤などが原因となります。
血液性チアノーゼ
ヘモグロビンの異常により、チアノーゼが現れるものを血液性チアノーゼといいます。多くの場合には、血液中に酸素を運搬することができないメトヘモグロビンが増える、メトヘモグロビン血症が原因となって起こるといわれています。
手足の指が黒くなる病気
手足の指が黒くなる代表的な病気を確認しましょう。
糖尿病足病変
糖尿病に伴う足病変として、より末梢の足の指の血管障害によって足先が黒くなる症状が認められることがあります。
特に、足の指の血管や陰茎の血管は細く、動脈硬化などの影響を受けやすいとされています。
下腿の足の血行は、通常3本の血管によって栄養されており、後脛骨動脈という下腿の後面から足底の血行を支配する血管が重要になります。
末梢血管障害を認めると指先の色調が紫色(チアノーゼ)になり、足が冷たく感じる、安静時にも足が痛いなどの症状を認めます。
病状が進行すると足の指先から黒く変化し、いわゆる足壊疽を起こすこともあります。
中枢の太い血管が狭窄する場合には間欠性跛行といって休み休みしか歩けないような症状が出現することがあります。
代表的な治療法としては、病変部の責任血管を拡張する薬を使用する、進行例ではカテーテルを用いた経皮的血管拡張術、血管の新しい通り道を作るバイパス術などがあります。
閉塞性動脈硬化症
心臓の冠動脈や脳の動脈と同様に、足の動脈の壁にコレステロールがたまり、動脈がつまって硬くなり、足への血の巡りが悪くなる病気を閉塞性動脈硬化症と言います。
閉塞性動脈硬化症の患者さんでは全身的な動脈硬化を伴っており、自覚症状の有無にかかわらず、心筋梗塞、脳卒中など心血管疾患による死亡の危険性が高くなりますし、重症虚血肢を発症するリスクが上昇します。
重症虚血肢とは、足への血流がほとんどなくなり、壊疽(腐ること)になっていく状態を指し、足先の皮膚は、灰色から黒色に変化していき、潰瘍ができたりします。
さらに、患部に細菌が感染して、熱が出たり、足が腫れ上がったりすることも少なくありませんし、細菌が血液の中に入り敗血症の状態になると、生命にかかわる状態になります。
このような状態を防ぐために、足を切断せざるをえない場合があります。一般的に、閉塞性動脈硬化症の患者さんのおよそ15~20%が間歇性跛行から重症虚血肢に移行すると推定されています。
脂肪皮膚硬化症
下肢静脈瘤を長期間放置すると、うっ滞性皮膚炎を起こし、次第に皮膚や脂肪織が肥厚・線維化を起こし硬くなってきます。
脂肪皮膚硬化症とは、うっ滞性皮膚炎が重症化して、皮下脂肪が炎症によって硬くなってしまった状態です。
患部が赤く腫れて皮膚と皮下脂肪がカチカチに硬くなり痛みを伴いますし、症状を放置しておくと、皮膚に穴があく潰瘍になります。一度潰瘍になると治るまでに数か月かかってしまいます。
脂肪皮膚硬化症は、血液のヘモジデリンという成分が血管外に漏れ出て色の変化を起こしている状態ですので、皮膚が黒くなると元の皮膚の色には戻りません。
下肢静脈瘤
下半身の静脈血が心臓に戻ってくる際には、血液の逆流を防止する静脈弁が重要な役割を果たしていますが、静脈弁の機能が低下するなどによって逆流する血液が多くなると、血液が下半身にたまって血管が拡張して盛り上がる状態が下肢静脈瘤です。
下肢静脈瘤は年齢とともに発症率が増加し、30歳以上の男女において約6割の人に下肢静脈瘤が認められ、患者数は1000万人以上存在すると推定されています。なかでも40歳以上の女性に多く認められることが知られています。
また、出産経験のある女性の約半数の割合で下肢静脈瘤が発症すると言われ、発症要因には遺伝性の関連があって両親とも下肢静脈瘤を発症している場合には将来的にその子供も90%以上の割合で発症すると指摘されています。
妊娠時には、女性ホルモンの影響に伴って静脈が柔らかくなって弁が壊れやすくなるため下肢静脈瘤を発症しやすくなります。また調理師や美容師など普段から立ち仕事が多い人は発症しやすくなります。
肥満や便秘なども下肢静脈瘤を悪化させる因子ですし、静脈弁自体に問題がある以外にも、深部静脈血栓症や骨盤内腫瘍など静脈以外に病変を有するがゆえに下肢静脈瘤ができる場合も想定されます。
基本的に自然に治ることはなく、時間の経過と共にゆっくりと進行し、代表的な症状としては主に血管が浮き出て下肢が重くだるいような疲労感やほてり感を自覚する、下肢が痛み浮腫が認められる、足に湿疹が形成されて皮膚炎や色素沈着になるなどが考えられます。
まとめ
これまで、足の指が黒くなる原因、チアノーゼの特徴と考えられる病気などを中心に解説してきました。
手足の指が黒くなる病気としては、糖尿病足病変、閉塞性動脈硬化症、脂肪皮膚硬化症、下肢静脈瘤などが挙げられ、症状が進行してひどくなればチアノーゼを引き起こす場合があります。
チアノーゼはさまざまな原因、環境により引き起こされます。全ての場合で治療が必要というわけではありませんが、急激にチアノーゼが進行している場合は、何らかの原因により全身状態が悪化している可能性もあります。
心配であれば、早急に専門の医療機関を受診しましょう。
今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。