病院は何科?咽頭クラミジアの症状と淋病との違い
クラミジアは日本で多い性感染症のひとつです。性器や尿道に症状が現れるほか、喉の痛み、発熱、咳といった風邪とよく似た症状がでることがあります。
ここでは特に喉に症状が出る咽頭クラミジアを取り上げ、症状の特徴や他の感染症との関係について解説します。
咽頭クラミジアとは
咽頭クラミジアとはどのようなものなのでしょうか。まずは何が原因で感染が起こるのかや、性器クラミジアや淋病などとの違いについて解説します。
咽頭クラミジアの原因菌
咽頭クラミジアの原因となるのはクラミジアという細菌です。クラミジアは一般的な細菌とは異なり、リケッチアやマイコプラズマと同じように非定型細菌と呼ばれます。
そもそも細菌というのはおよそ1.0μメートル程度の生物で、単細胞生物です。DNAとRNAを両方持ち、自分自身で増殖可能な能力を持っています。
一方でクラミジアは、およそ0.3μメートル程度のちいさな微生物です。単細胞生物という点は一般的な細菌と共通しているのですが、自分自身の能力で増殖することはできません。どのようにして増殖するのかというと、何らかの動物に寄生し、動物の細胞の中で増殖をします。感染した動物の細胞を顕微鏡で観察すると、封入体といってクラミジア本体が細胞内に寄生している状態を観察することができます。
こうした特徴は抗生物質の効き方にも関連してきます。よく使われるβラクタム系と言われる抗生物質は、細菌の細胞壁合成を阻害する事で効果を発揮する抗生剤です。しかし動物の細胞の中には移行しづらく、細胞内で増殖するようなクラミジアには中々効きにくいのです。そのため、細胞内に移行するような特殊な抗生物質を使用する必要があるのです。
クラミジアの中でも人に感染するクラミジアは3種類あります。トラコーマクラミジア、肺炎クラミジア、オウム病クラミジアです。その中でも咽頭クラミジアの原因となりやすいのはトラコーマクラミジアになります。
性器クラミジアとの関係
性器クラミジアも、咽頭クラミジアも、いずれもトラコーマクラミジア感染による感染症です。いずれもおなじ病原体が原因で、もともとは性器クラミジアとして感染している人がほとんどでした。
しかし近年、性行為の中でもオーラルセックスを行う機会が増えたことから咽頭にも感染することが増え、また咽頭に感染したクラミジアがキスなどによって感染することによって咽頭クラミジアの症例数が増えてきたという経緯があります。
淋病との違い
淋病もクラミジアと同じく性感染症の一種です。淋菌と呼ばれる細菌による感染症です。顕微鏡で細菌を見ると、空豆状の形をした菌が2つ並んでいる様子が見られるのが特徴です。
症状としては、尿道の不快感や外尿道口からの排膿、おりものの増加などの性器感染症としての症状はクラミジアと淋病では比較的似ています。また、クラミジアと同じようにオーラルセックスの増加によって咽頭感染をするケースも増加してきています。
性感染症としての頻度としては、クラミジア感染症に比較してやや少ないという特徴があります。クラミジアは女性にやや多いのですが、淋病は男性の方に多いという特徴があります。ただし、これは判明しているだけの数であり、感染に気づかない、あるいは気づいていても受診をしていない等の状況によって数がマスクされている可能性があります。
咽頭感染した場合の症状は、淋病の場合比較的症状は少なく、感染に気づかないことも多々あります。その場合、不顕性感染として感染源となり続ける場合があります。
また、淋病とクラミジアに共通して気をつけなければならないのが、お互いに混合感染の可能性です。すなわち、淋病であればクラミジアを合併している可能性を、クラミジアであれば淋病を合併している可能性を考えなければなりません。
クラミジア肺炎との違い
クラミジア肺炎は、クラミジアによる肺炎を言います。前述の肺炎クラミジア、あるいはオウム病クラミジアによる感染で発症します。これらのクラミジアは、性的接触がなくても、一般的な飛沫によっても感染が成立します。
飛沫によって感染が成立しますから、空気の流れによって気道の奥から肺の方まで入り込んできて、そこで感染が成立します。そのため、レントゲンを撮影すると肺炎の中でも比較的広い範囲の肺に異常影が見られるようになります。
一般的な肺炎は高齢者に多く起こってきますが、クラミジア肺炎は若年者から高齢者まで、全ての年代で見られます。咳や発熱が長引き、特に咳は非常に激しいものです。
中でも、鳥類の飼育歴があり、熱が比較的高く、頭痛や肝臓脾臓の腫大が見られる場合には特にオウム病クラミジアによる感染でオウム病を引き起こしている可能性を考えます。
また、一部性器クラミジアのクラミジアが原因で肺炎を起こす場合があります。それが母子感染による新生児の肺炎です。母親がクラミジア感染を起こしていると、産道を通った赤ちゃんに感染を起こし、肺炎を引き起こすのです。
いずれにしても、咽頭クラミジアと比較して咳が非常に強く、重篤感が強いのが特徴です。重症化することもありますので、早期受診・治療の必要があります。
咽頭クラミジアの症状の特徴
では咽頭クラミジアにはどのような症状があるのでしょうか。
喉の痛み
咽頭クラミジアは感染してすぐに症状が出るわけではありません。だいたい1週間から3週間程度の潜伏期間を経てから症状が出現します。
まず出てくる症状がのどの痛みです。のどで感染が成立すると、その場所でクラミジアはのどの細胞に入り込み、増殖を開始します。その感染した細胞に対して自分自身の免疫細胞が攻撃をする免疫反応が起こります。この際に炎症反応が起こり、免疫細胞が活性化されます。炎症反応が起こると、その部分は知覚が過敏となり、赤く腫れてきます。知覚が過敏となった結果、少しのどに唾液や空気が触れただけでも痛みを感じるようになります。
発熱
炎症が激しくなると、発熱もあります。免疫細胞は若干熱がある方が活発に働くことができるため、炎症反応が起こると体温を上げるように体は反応し、次第に熱が出てくるようになります。熱に伴って倦怠感や関節痛を伴うこともあります。
ただし、細胞内に寄生するクラミジアでは、細胞の外に多く存在するほかの細菌感染症に比較して免疫細胞の活性化が弱く、炎症反応が不十分となる結果、あまり熱が出ないことも稀ではありません。
咳・痰
咽頭クラミジアを引き起こすと、のどの腫れから、咳や痰を来すこともあります。ただし、その頻度はあまり高くなく、クラミジア肺炎のように頑固な咳となることは少ないです。
このように、咽頭クラミジアではのどの痛み、発熱、咳や痰と言った症状がさほど強くなく表れます。風邪とおなじような症状です。検査なしに風邪と鑑別することは困難ですから、咽頭クラミジアの可能性を疑ったら病院を受診するようにしましょう。
病院は何科を受診すればいい?
病院を受診すると言っても何科を受診すれば良いのか迷われると思います。基本的にはのどの感染症ですから、耳鼻咽喉科や内科が担当となるでしょう。感染症専門の病院やクリニックでなければ、感染症専門の開業医の先生はなかなかいないでしょう。
もし近くに性病専門のクリニックがあるのであればそちらを受診するのもひとつの方法です。ホームページで咽頭クラミジアの検査を行っていることを明示している病院も多いですから、そうした情報を調べて受診をすると良いでしょう。