手の血管にこぶができるハンドベイン…病気じゃない?痛い?

震える手を抑える女性
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手の血管が気になって人前で手を出したくない、手の血管のせいで老けて見えないか心配……。これはハンドベインと呼ばれる状態かもしれません。ハンドベインの特徴や治療法について見てみましょう。

ハンドベインとは

震える手を抑える女性

ハンドベインとはそもそも病名を表す医療用語ではなく、手の甲や前腕にくっきりと浮き上がる血管のことをそう呼んでいます。

手の甲の血管や前腕の血管が数㎜~5㎜程度に拡張して、浮き出てくる状態に悩まれる方は少なくありませんが、これら手の甲や前腕の血管拡張は、弁不全など病的な状態が背景にあるわけではありません。

ハンドベインとは、手の甲や腕の血管が浮き出て視覚的に目立って見える状態であり、手や腕のだるさや痛みの原因となるケースもあります。

ハンドベインは病気ではない

ハンドベインは決して病気ではありませんので、放置していても手に病的な影響を与えることはありませんが、手というパーツは日常的に目に触れる部分です。

自分でも憂鬱な気分になるでしょうし、他人の前で手を出すことがためらわれるでしょう。

ほとんどの場合、ハンドべインは生理的な静脈拡張によるもので血行面で異常はありませんが、肉眼的に気になって、精神的に大きなストレスを感じる方が多いのも事実です。

痛みが出ることがある

ハンドベインは、時に手・腕の血管の逆流防止弁が壊れて病的な逆流が生じて、静脈が拡張して痛みを呈する例があります。

先天的に動脈と静脈の間に交通(シャント)が生じて静脈が拡張している例もあり、そのようなケースでは手を下げると、腕や手が腫れて、痛みを感じることが多いです。

ハンドベインの原因

ハンドベインの原因はいくつも考えられます。

血管・皮膚の老化

血管が浮き出るひとつの要因として加齢に伴う血管や皮膚の老化が考えられます。

加齢によって血管の弾力がなくなると、血管が広がって太くなり、さらに皮膚自体にも弾力性がなくなることで、手の甲や腕の血管が浮き出てきます。

また、加齢とともに肌の弾力を保つのに必要な真皮内のコラーゲンやエラスチンの量が減少し、皮膚の細胞の再生が減って、皮膚の菲薄化が進むと、手や腕の肌表面の血管が太く浮き出ているように見えてきます。

特に、女性の場合は女性ホルモンの影響も受けて浮き上がる血管が目立ちやすくなります。

女性ホルモンは真皮のコラーゲンの生成を促進し、紫外線の影響を受けにくくするといわれていますが、年齢を重ねると女性ホルモンの分泌が急激に減少するために、コラーゲンの減少や新陳代謝の低下による肌の老化が進みます。

また、皮脂腺の活動も低下して、肌を柔らかく保つ天然の軟化成分である皮脂を生成する力が弱まる結果として、皮膚の弾力が低下してたるむことで、血管の浮きあがりが目立つように変化します。 

皮下脂肪が少ない

皮下脂肪が少なくて、痩せている方は皮膚の表面の血管が目立ちやすい傾向があります。

皮下脂肪が多いと皮膚と静脈の間が皮下脂肪で占められるため、静脈が皮下の脂肪内に埋め込まれるように目立たなくなります。一方、皮下脂肪が少なすぎると皮膚に隣接して静脈が走行するため、より目立ちやすくなります。

遺伝の影響

生まれつき肌が弱い人と強い人、衰えにくい人と衰えやすい人がいて、親族に自分と同じように血管が太く浮き出ている人がいれば、それは遺伝による原因の可能性が高いといえます。

人の顔や体つきが違うように、肌の状態も人それぞれで異なり、体質や遺伝の影響によって、血管が拡張しやすい場合もあります。

ハンドベインの治療法

ハンドベインは病気ではないので積極的に治療を必要とするものではありませんが、これにより精神的に非常に大きなストレスを抱えている方は少なくありません。

血管の弾力を維持するためには、各種のビタミン・ミネラル・ポリフェノールの摂取が重要であるといわれています。

また、皮膚のコンディションを良好に整えるためには、常日頃から紫外線を避けて、皮膚の清潔を保ちながら、保湿してスキンケアすることが大切です。

ハンドベインの治療策としては、主に硬化療法とレーザー治療があります。

硬化療法というのは、手の甲の浮き出た血管(直径1~2mm)に対する治療法であり、静脈に親和性が高い特殊な薬剤を、ハンドベインに最適な濃度に調整し、目立つ血管に注入します。

その結果、注入した血管は一時的に固まって3か月ほどで自然に吸収されるのが期待できます。

さらに、専門的な治療を希望している場合には、下肢静脈瘤の血管内治療で用いるレーザー治療の技術を応用した治療が実施されることもあります。

血管内レーザー治療は、従来しばしば用いられていた硬化療法と異なります。血管を完全につぶさないように治療をすることも可能であり、治療後は一時的に内出血や腫れが生じて皮膚の感覚の回復にしばらく時間を要しますが、日常生活には特に問題は生じません。

血管の周囲にヒアルロン酸を注入して血管の盛り上がりを目立たなくさせる美容治療も選択肢として存在しますが、血管が目立たなくなる効果があったとしてもその効果は一時的で、手や指が腫れる合併症のリスクが指摘されています。

まとめ

これまで、手の血管にこぶができるハンドベインの原因や治療法などを中心に解説してきました。

ハンドベインとは、手の甲や腕の血管が浮き出た状態のことです。

静脈はもともと血管の壁が薄く、加齢とともに血管の弾力が低下することで、より太くなり浮き出やすくなりますし、皮下脂肪が少ない場合には皮膚の表面の血管が目立ちやすくなります。

また、日頃から手や腕の筋肉をよく使う運動や仕事をしている方の場合は、血管内を流れる血流も多くなり、血管も拡張しやすくなるため、血管が浮き出やすくなります。

ハンドベイン治療には、レーザーで血管を内部から焼灼して吸収させるレーザー処置や薬剤を血管に注入する硬化療法などがあります。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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