加齢による影響も?心臓弁膜症の原因と症状の特徴

心臓弁膜症は心臓の弁に障害が起きる病気です。65歳以上の約10人に1人が罹る病気といわれています。無症状のことも多く、気づかない人もいます。
心臓弁膜症の進行はゆっくりと進みますが、悪化した場合には心不全や不整脈につながります。心臓弁膜症の症状を見逃さないことが大切です。ここでは心臓弁膜症を取り上げ、原因や症状の特徴について解説します。
心臓弁膜症とは

心臓の弁の役割と心臓弁膜症の特徴について見てみましょう。
心臓の弁の役割
弁は心臓の内部で、血液が流れる時には開いて、それ以外の時には閉じて血液の逆流を防いでいます。
血液の流れを一方向に維持し、逆流を防止するために右心室と左心室の入り口と出口にはそれぞれ弁があります。
右心室の入り口(右心房と右心室の間)の弁が三尖弁、右心室の出口(肺動脈の間)の弁が肺動脈弁であり、左心室の入り口(左心房と左心室の間)にあるのが僧帽弁、左心室の出口(左心室と全身をめぐる大動脈の間)にあるのが大動脈弁です。
心臓弁は、血液が常に一方向に流れるように維持し、逆流を防止する役割を有しています。
狭窄と閉鎖不全
心臓の弁に障害が起き、本来の役割を果たせなくなった心臓弁膜症には大まかに2つのタイプがあります。
狭窄は弁の開きが悪くなって血液の流れが妨げられる状態である一方で、閉鎖不全は弁の閉じ方が不完全なために、血流が逆流してしまう状態です。
心臓弁膜症はどの弁でも起こりますが、海外では大動脈弁と僧帽弁が97%を占めていると報告されています。
弁は本来、血液が流れるときに開き、流れ終わったら閉じて、血液が逆流しないように機能しますが、何らかの理由で弁の機能に異常が起きると、弁の開きが悪くなります。
血液の流れが悪くなる状態が狭窄症、正常に閉じなくなることで逆流を起こしてしまう状態が閉鎖不全症(逆流症)となります。
心臓弁膜症の症状の特徴
心臓弁膜症と診断を受けても、長らく無症状が続くケースも少なくありません。
また、無症状であっても、心臓超音波検査で進行が認められた場合など、手術が推奨される弁膜症もあります。
心臓のポンプ機能が正常に働かなくなり症状をきたした状態が心不全であり、心臓弁膜症は心不全の原因のひとつです。
心不全の代表的な症状は、息切れ、むくみ、体重増加などです。
また、一部の弁膜症は、進行とともに不整脈を合併することがあります。
特に僧帽弁閉鎖不全症や僧帽弁狭窄症では、心房細動などの不整脈を合併することがあり、その場合には、動悸や息切れなどの症状を伴うことが少なくありません。
弁膜症では、体内に侵入した細菌が、心臓内に住み着きやすいことが知られていて、細菌感染により弁が破壊された場合には、急激に症状が悪化することもあります。
心臓弁膜症から心不全へ
はじめは弁という心臓の一部分の病気ですが、進行すると心筋(心臓を動かしている筋肉)が障害され心臓全体の病気になります。
そのような状態になると、いくら一部分である弁に対しての治療を行っても心筋の障害は回復せず、心臓は元通りに働くことができなくなります。心臓弁膜症は自然に治ることはないので、進行すると心不全を起こす可能性もあります。
心不全とは、心臓の働きが低下し、心臓に負担がかかった状態であり、一つの病気ではなく、心臓弁膜症や心筋梗塞などさまざまな心臓疾患が最終的に至る状態です。
息切れ、胸の痛み、動悸など心臓弁膜症の症状には特有のものがなく、安静時の症状だけではなく、動いたときの呼吸困難も代表的な症状です。
特に、高齢の方は無意識のうちに活動量を減らす傾向があるため、体の変化に気づきにくい可能性があるので、心臓弁膜症の症状に早く気づくためには自分の日常生活における活動性に注目しましょう。
また、「症状が出てから治療しよう」と思う方がいますが、心臓弁膜症は重症であっても症状を自覚していないことがあります。
重症まで進んだ後に手術を受けたとしても、予後(手術後の見通し)が悪くなる可能性が高くなりますので、自宅などにおいて一定の活動性の確保を心掛けて、典型的な症状を見逃さないようにしましょう。
心臓弁膜症の原因

心臓弁膜症の原因はいくつも考えられます。
加齢の影響
近年では、高齢化の進行とともに、加齢に伴う弁の変性や石灰化による心臓弁膜症が増えています。
心臓弁膜症の有病率は、年齢とともに上がる傾向にあり、65~74歳で8.5%、75歳以上で13.2%と報告されており、心臓弁膜症は65歳以上の約10人に1人が罹る病気です。
日本の総人口において、65~74歳で約140万人、75歳以上で約260万人の潜在患者がいると推測されています。
特に、大動脈弁狭窄症では、大動脈弁の開きが悪くなり、血液の流れが悪くなっている状態であり、加齢に伴う変性・硬化、先天性(二尖弁、四尖弁など)、炎症性変化などが原因となります。
リウマチ熱
かつては、リウマチ熱の後遺症として心臓弁膜症になることが多かったのですが、現在は抗生物質の普及により、リウマチ熱を原因とする心臓弁膜症は減少しています。
昨今では、加齢に伴う弁の変性や石灰化による心臓弁膜症が、高齢化の進行とともに増えています。
その他
心臓弁膜症の原因は加齢による変性や、慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患のほかにも、先天性(二尖弁、四尖弁など)、大動脈弁輪拡張症、結合織異常、感染症(感染性心内膜炎)、外傷、二次性(心筋梗塞・心筋症・心房細動などによる心拡大に伴うもの)などがあります。
まとめ
これまで、加齢による影響もある、心臓弁膜症の原因と症状の特徴などを中心に解説してきました。
心臓は、健康的な生活のための最も大切な臓器であり、心臓内には4つの弁があります。
心臓弁膜症は、どの弁にどのような障害が起きているかによって、複数のタイプに分類され、心臓弁膜症は心不全を引き起こすリスクファクターのひとつです。
心臓弁膜症の原因には、先天性と後天性(リウマチ熱、動脈硬化、心筋梗塞、変性など)があり、原因を特定できないものも多くあります。
心臓の病気を早期に発見し、重症化する前に適切なタイミングで治療をすることが、心不全の予防や増悪の防止において重要なポイントです。
心臓弁膜症はゆっくりと進行しますが、症状が出始めると急速に予後が悪くなりますし、症状を放置すると心不全や不整脈になる可能性があります。
心臓弁膜症に関連する代表的な症状の出始めを見逃さずに、早期に病気を発見して適切に治療することが大切です。
今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。