血管が細いことの問題点…太くするにはどうすればいい?

お悩み

血管が細いので太くしたいと考えている方もいらっしゃるでしょう。体質的に血管が細い、または何らかの病気が原因で血管が細くなったり、正常ではない細すぎる血管が作られたりすると、さまざまな問題が生じます。

ここでは血管が細いことの問題点と、太くするためにできることを紹介します。

細い血管の問題点

血管が細いことにはいくつもの不都合や、健康上のリスクがあります。

健診などで採血しにくい

健診などでは、基本的には肘の中央部付近の血管から採血しますが、細い血管の人の場合、採血がしにくいうえに、採血時に血液を引くことにより、さらに血管が収縮して細くなってしまうことがあります。

普段は血管が見やすい場合でも、夏や冬になると、脱水や寒さなどのため、血管が見えにくくなり、採血がしづらい細い血管に変化することがありますし、生まれつきや、病気などを契機として、血管が細くなる方もいらっしゃいます。

手が冷えた状態や脱水状態では、血管が細くなって、採血しづらくなりますので、蒸しタオルやお湯、ホットパックなどで暖める、あるいは腕を下げて重力で血管を怒張させるなどの工夫が効果的です。

冷え性になりやすい

冷え性で、手足が冷えてしびれるなどの症状は、四肢を含めた全身の血流が低下することが密接に関係しています。

足周囲を走行している動脈は、足の指先の方面に向かって血管を介して血流を送っています。足の血管が細い人の場合、膝下部に関しては血流の迂回路が形成されにくく、足部の虚血性変化が悪化して、足の冷え性などの症状が重症化しやすいことが知られています。

全身をめぐる毛細血管は、各組織にとって必要な酸素や栄養分を運搬する重要なルートであり、生活習慣病などによって手足の毛細血管が障害を受けると、全身組織に十分な酸素などが行き渡らなくなることで足の冷えや痛みなどの症状を呈することが知られています。

血流不足による間欠性跛行(かんけつせいはこう)

特に、足の血管が細くて、閉塞性動脈硬化症をきたした場合、動脈硬化の狭窄や閉塞が悪化するにつれて、自覚症状が段階的に進行します。

まず、足の冷感やしびれ感が出現し、その後、間欠性跛行になって、しばらく歩くとふくらはぎなどが締めつけられるように痛くなり歩けなくなります。

いったん休憩すると痛みが無くなって再び歩けるようになりますが、血管の狭窄や閉塞が悪化すると、次第に歩ける距離が短くなっていきます。

足の痛みは、足がつったように引っ張られて痛くて動きにくく、皮膚の発赤や脚の皮膚の色が変化することもあります。特に、夜に横たわっているとき、足とつま先が火照って、チクチクするような痛みが現れる場合もあります。

さらに病状が進行すれば、安静時痛に伴って歩かずに安静にしていても痛みが続くことがあります。

最終的には、足の潰瘍や壊死性変化が認められ、皮膚や筋肉の血流が不足して、小さな傷や低温やけどなどをきっかけに、皮膚に潰瘍や壊死を起こし、細菌感染を伴って治癒が難しくなります。

もやもや病によるリスク

もやもや病とは、首から脳へ血液を送るための内頚動脈が脳内に入ったところで狭くなっていく病気です。

閉塞していく血管の通り道を補うように周囲の細い血管が網目状に発達して、画像的にもやもやした塊に見えるため、もやもや病と呼ばれています。

通常は左右両側にみられ、発症する好発年齢は10歳以下の子どもと40歳前後の成人が多いとされていて、厚生労働省の指定難病のひとつに認定されています。もやもや病の明確な発症原因は現在のところ、解明されていません。

成人でも小児でも、脳の血流不足による一時的な症状や脳梗塞を発症する場合がありますし、発達した側副血行路への負担が増していき、それが破綻することで脳出血を起こすことがあります。

血管が細くなる原因

動脈血管は、加齢や不規則な生活習慣、喫煙習慣などに伴って硬くなって細くなる、あるいは狭窄・閉塞することがあり、これらの変化を動脈硬化と呼称しています。

糖尿病など動脈硬化が進行する疾患では、血液中に血糖成分が増加しているため、血中の活性酸素成分が多くなって血管壁を傷つけますし、損傷してダメージを受けた血管壁にコレステロール成分が入って沈着しやすくなり、動脈硬化を引き起こす要因になります。

腕や足のように心臓からやや離れているところまで酸素が含まれている血液を供給する血管を末梢動脈と呼び、加齢、動脈硬化、喫煙などの影響によって、この末梢動脈が狭くなり、腕や足への血流を減少させて、閉塞部位より末梢組織が壊死する可能性があります。

血管の壁に、脂肪成分、コレステロールを含む沈殿物(プラーク)が蓄積して動脈硬化が発生する過程をアテローム性動脈硬化症といい、末梢動脈疾患の最も代表的な原因となっています。

特に、脂質異常症や高血圧、糖尿病があると、全身の血管が細くなるリスクが増加しますし、喫煙者は非喫煙者に比べて末梢動脈疾患が発生するリスクを40%増加させるという報告があります。

普段から喫煙している場合には、禁煙に努めることが必要であり、糖尿病を始めとして高血圧、脂質異常症など動脈硬化の危険因子となるリスクファクターを出来る限り改善することが求められます。

血管を太くするにはどうすればいい?

川沿いをウォーキング

運動を取り入れ、NO(一酸化窒素)を増やすことは血管をよい状態に保つのに役立ちます。

運動を取り入れる

血管を太くするために動脈硬化を改善する、あるいは生活習慣病を予防するうえで、適度な運動を定期的に取り入れることは有効です。

例えば、1回30分程度のウォーキングや軽いジョギング、適度な距離のサイクリング、水泳やエアロビクスなどの運動習慣を毎日の生活に取り入れてみましょう。

特に、ウォーキングは、気軽に実践できます。適度な運動を実施することにより、太りにくい体質に改善することができます。

また、定期的に運動を実施することによって、肥満が解消される以外にも、高血圧や糖尿病、脂質異常症などを改善する効果を発揮できます。

ただし、基礎疾患を有する中高年齢層の方では、あまり激し過ぎる運動も危険ですし、すでに動脈硬化がある程度進んでいる場合には、いきなり運動を始めると心臓や血管に急激な負担がかかりますので、無理のない範囲で運動するように心がけましょう。

普段の生活において階段を上っただけで息が切れてしんどくなる場合には、まずは専門医療機関で精密検査を受けて、どの程度の運動耐容能力があるか評価して、担当医師の指導や指示を受けることをおすすめします。

NO(一酸化窒素)を増やす

NOとは、窒素(N)と酸素(O)が結合した窒素酸化物です。

例えば、米国教授のルイス・J・イグナロ博士らの研究で、NOは血管の筋肉を緩めて、血管を拡張する物質であること、そして体内でさまざまな生理機能を担っていることが報告されています。

脳卒中や心筋梗塞を防ぐために、やわらかくしなやかな血管を保つこと、すなわち血管老化を防ぐために、NO)の産生を増やすことが有効と考えられます。

日常生活において、運動動作でNOを産生させることで血管を太くすることが期待できます。

まとめ

血管が細いことには、さまざまな問題点があります。

その背景には動脈硬化があり、脂質異常症や高血圧、糖尿病などの生活習慣病、あるいは肥満や喫煙習慣が、悪化の要因となることが判明しています。

動脈硬化が進行して生活習慣病を発症すると、全身の様々な臓器に悪影響を及ぼします。

血管を太く丈夫にして老化を予防するためにも、できるだけ早期から自分に適した運動習慣を含む生活スタイルの改善などを意識して、動脈硬化進展や生活習慣病発症を予防するように努めましょう。

今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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