度重なる性交の中断と拒否で夫婦仲に徐々に亀裂が…どうしてこんなことに?
膣が乾いて挿入するたびに我慢できないほどの痛みがある、子宮の奥の方が痛くて長時間の性行為が苦痛になってしまった……。
それは、もしかしたらプレ更年期(30〜40代)や更年期(40〜50代)に起こりがちな「性交痛」の症状かも!?
そんな自分ではどうにもならない更年期の不調やつらい症状の緩和や体質改善には、漢方薬がよく効くことをご存知でしたか?
「健タメ!」では、読者からの体験談をもとに、お悩みに関する原因や対処法を医師や薬剤師がお答えしていきます。
今回は「更年期の性交痛」をテーマに、薬剤師の竹田由子先生にお話を伺ってみました。
目次
挿入のたびに息もできないほどの痛み!苦悶のうちに終わる性交渉がつらい…
亜由美さん(44歳女性)、主婦の方からご質問をいただきました。
このところ年のせいか、主人との性交渉がつらくて仕方ないんです。
数年前まではたぶん普通の夫婦以上にしていたと思いますし、何より相性がよくて私の方からも求めてしまうほどだったのですが……。
最近は主人に触られても全然濡れなくて、挿入されても痛いだけなんです。痛い痛いと思っているうちに、気持ちの良さなんてどこかに消えてしまって、息をするのもつらいほど。
最近ではなんとかそういう雰囲気にならないように変な努力を続けていたのですが……。
そんな私の性交渉をしたくない空気感に気づいたのか、先日はとうとう主人から「他に好きな人がいるの?」などと見当違いなことを言われてしまい、本当に戸惑っています。
正直に悩みを打ち明ければいいのでしょうが、「あなたとセックスしても濡れなくなって痛いので困っている」というのは申し訳ない気がして言い出せずにいます。
この痛みさえなければ以前の仲良し夫婦に戻れる気がするのですが、このままではどんどん険悪になりそうで怖いです。いったいどうしたらこの症状を改善できるでしょうか?
ご質問ありがとうございます。
性交痛はデリケートな問題なのでご夫婦間であってもなかなか伝える糸口が見つからず、大きな悩みになりやすいですよね。
それでは今回は、更年期の性交痛の原因や改善方法についてお伝えしていきましょう。
性交痛の原因はエストロゲン減少と「気」「血」の滞り
女性は更年期になると、女性ホルモンのエストロゲンが減少します。
これにより膣の粘膜が薄くなって乾燥しやすくなり、十分な体液を分泌できなくなります。
そのため、性交時の潤滑性が不十分になり、性交痛を生じてしまうのです。
エストロゲンの血中濃度が低くなる授乳中も膣は乾燥しやすくなりますし、花粉症などのアレルギー症状を緩和する抗ヒスタミン剤の服用によっても、腟が乾燥することがあります。
東洋医学では、「痛み」が生じるのは何かの滞りがあるため、と考えます。性交痛の場合は、「気(生命エネルギー)」と「血(血液)」の滞りがあり、体は冷えるのに熱が体内にこもって潤いを蒸発させてしまうことから性交痛が起こると考えられています。
次の章では、こうした更年期特有の悩ましい症状に対する具体的な解決方法をお伝えしていきましょう。
痛みにさよなら、性交痛を改善する3つのケア
1.時間をかけた前戯でゆっくりリラックス!
性行為は本能的なものといわれる一方で「性は脳なり」ともいわれているほど、その時の思考や気分が大きく影響してきます。
パートナーとの関係性や痛みへの恐怖、緊張感がストレスとなって腟分泌液が十分に分泌されない、ということもあるため、まずはリラックスすることが大事です。
暗めの照明で親密感のあるコミュニケーションをとりながら、前戯にたっぷり時間をかけましょう。
また、濡れない原因が更年期の症状のひとつであることをパートナーと共有することも大事です。
濡れないのはパートナー本人や、二人の関係性によるものではないことを伝えた上で、理解と協力を求めてみてはいかがでしょうか?
2.性交痛の解消グッズを使ってみよう
膣の乾燥によって挿入時の痛みが苦痛、という方は、潤滑ゼリーを使用して痛みを軽減するのも一つの方法です。
商品を選ぶ際は、デリケートな部分に使用することを念頭に、安全性の高い成分だけで作られた水溶性の潤滑ゼリーがオススメです。
うるおいを補充することで挿入がスムーズになれば、痛みを感じることも少なくなるでしょう。
3.大豆イソフラボン(エクオール)をとる
豆腐や豆乳などの大豆製品に含まれるイソフラボンには、腸内細菌に働きかけて女性ホルモンのエストロゲンとよく似たエクオールを作りだす効果があるため、性交時に十分に濡れないなどの症状の緩和が期待できます。
豆腐や大豆など食品から積極的に取り入れるのはもちろん、エクオールを腸内で作り出せない体質の方もいるため、サプリでもいいので取り入れてみると良いでしょう。
根本的な体質改善には漢方薬が効果的!
性交痛の症状を改善するために、ホルモン補充療法などを受けるという選択肢に加えて、根本的な改善を目的とした漢方薬の服用もオススメです。
特に、今回の相談者様のような症状に悩む方にオススメしたい漢方薬は、八味地黄丸(ハチミジオウガン)です。
冷えた体を温め、「気・血・水(生命エネルギー・血液・水分)」を増やし巡らせる効果があり、下半身の症状に効果的な漢方薬です。一方、ほてりがあり、口の乾燥やむくみが気になる場合は、八味地黄丸から二つの生薬を抜いた、六味丸(ロクミガン)がオススメできます。
また、冷え性で生理痛があり、肌も髪もカサカサと乾燥しがちな「血虚」の状態の方には四物湯(シモツトウ)も良いでしょう。
性交痛を改善してパートナーとの愛を深めましょう
今回は、性交痛に悩む方のためのセルフケアや漢方薬をご紹介してきました。
症状を和らげるには、パートナーとのコミュニケーションや信頼関係が非常に重要です。恥ずかしがらずに悩みを打ち明けることで悩みを共有し、より関係性を深めていきましょう。
また、潤滑油などを使っても効果がなかったり、膣周辺ではなく下腹部に痛みを感じる場合は、他の病気の可能性もあるので早めに医療機関に相談してみることも大事です。