膨満感のある腹痛に桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)

漢方事典

「桂枝加芍薬湯は膨満感のある腹痛によく使われます」

処方のポイント

寒気の感冒に用いられる桂枝湯と構成は同じですが、桂枝湯よりも芍薬が増量され、芍薬と甘草の関係(芍薬甘草湯)によって、より強い止痛効果があります。腹部に張りのある痛み、下痢等に適応します。

過敏性腸症候群にも応用できます。甘辛味で、温服が効果的です。

桂枝加芍薬湯が適応となる病名・病態

保険適応病名・病態

効能または効果

腹部膨満感のある次の諸症:しぶり腹、腹痛。

漢方的適応病態

1)脾虚あるいは気血不足のものの腹痛。すなわち、顔色がさえない、不活発、やや疲れやすい、食が細い、腹満感ありなどの体質で、時に腹痛が有り、温めたり、押さえたりすると軽減するもの。舌質は正常か淡紅、薄白苔。脈は軟やや弦。

2)虚弱者や小児の感冒。

桂枝加芍薬湯の組成や効能について

組成

白芍薬18桂枝9甘草6生姜9大棗6

効能

温陽和絡

主治

脾虚絡瘀

〇温陽和絡:塞がれている脾の陽気を温めて通じさせ、瘀血によって阻害されている血絡(血脈の細い分支)を調和して痛みを止める治法です。

〇脾虚絡瘀:脾気の不足による寒滞血瘀の病証です。

解説

桂枝加芍薬湯は脾虚あるいは気血不足による腹痛に用いる処方です。体表の風寒邪を発汗せずに、誤って下法を用いたため、邪が内に入りこんで生じた腹痛を治療します。

適応症状

◇腹痛

本来、解表法を用いるべき太陽病に、誤って下法を使用してしまうと、邪気が裏の脾陽を損傷し、脾気の運化機能が減退して、体内に寒が生じます。寒邪の凝滞する性質によって気血の流れが滞ると、「不通則痛」となって腹痛が現れます。

◇舌苔白

陽気不通による寒の存在を示します。

◇脈やや緊

疼痛を示す脈象です。

桂枝加芍薬湯の組成は「桂枝湯」と同じであるが、主薬の白芍薬を桂枝の2倍量にして血脈を調和する作用を強め、解表剤ではなく和裏剤となっています。白芍薬と桂枝は陰薬と陽薬の配合であり、陽気を通じさせ陰血を調和して、腹痛を治療できます。甘草、生姜、大棗は脾胃に作用する薬で、中気の運化機能を助けます。

臨床応用

◇腹痛

各種の腹痛に用いられます。本方は大補、大瀉の作用ではなく、穏やかな作用で、陰陽失羹こよる腹痛や虚実が明確でない腹痛に適しています。

腹痛をひきおこす原因によって下記の治療法を併用します。

〇脾虚が強いとき+「人参湯」(温中補脾)

〇痰湿があるとき+「二陳湯」(燥湿化痰)

〇気滞があるとき+「半夏厚朴湯」(理気化痰)

〇便秘するとき+「調胃承気湯」(瀉熱、通便、和胃)

または+大黄(活血通絡。通下)

◇慢性の下痢

腹痛をともなう下痢に用いられます。しかし桂枝加芍薬湯は温性があるので熱をともなう急性の下痢には不適です。

◇险虚による便秘

中国では陰虚による便秘に桂枝加芍薬湯を用いることがあります。桂枝加芍薬湯中には養玲作用のある白芍薬が多量に配合されているので、腸が滋潤を失った便秘に効果があります。日本漢方では過敏性結腸症(裏急後重をともない、残便感のある下痢、あるいは便秘)に使われています。

注意事項

比較的穏やかな方剤ですが、桂枝加芍薬湯全体の薬性は温に偏るので、舌紅、苔黄、口渇などの熱痛には用いないほうがよいです。

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