高血圧治療に用いる薬の種類…降圧薬は一生のみ続けるって本当?

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ここでは高血圧の治療に用いる薬について取り上げます。

降圧薬は飲み始めると一生のみ続けなければならないと言われることがありますが、それは本当でしょうか?

薬を止めた場合のリスクや、薬の量を減らせるケースについても見てきましょう。

高血圧治療で目標となる血圧の目安

高血圧になると治療が必要となってきます。収縮時血圧が10mmHg、拡張期血圧が5mmHg下がったことにより、血管病リスクは脳卒中で約40%、冠動脈疾患で約20%減少することが明らかになっています。

基本の降圧目標値は、140/90mmHg未満です。糖尿病や腎臓疾患の合併症がある場合は、130/80mmHg未満を目標値とし、75歳以上の後期高齢者の場合は、150/90mmHg未満を目標値とします。

目標値は、病院やクリニックを受診したときに測定した値となりますので、家庭血圧ではさらに5mmHg低い値を目標値とします。

高血圧治療に用いられる降圧薬の種類

高血圧の治療に用いられる血圧を下げる薬(降圧薬)は、いろいろ種類があります。降圧薬について、グループ分けをしてみましょう。

カルシウム(Ca)拮抗薬

降圧効果が確実で安全性も高いため、最も使われている降圧薬となります。血管平滑筋細胞内へのカルシウムイオン流入を抑えて、血管拡張作用をもたらします。

副作用としては、血管拡張による頭痛、反射性の頻脈、下肢浮腫があります。

主な薬剤:ニフェジピン、アムロジピン、ジルチアゼム、アゼルニジピン、シルニジピン

アンジオテンシンⅡ(ARB)受容体拮抗薬

血圧を上昇させる物質(アンジオテンシンⅡ)の作用を抑え、血圧を低下させます。

副作用としては、高カリウム血症、血管浮腫があります。

主な薬剤:ロサルタン、カンデサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、オルメサルタン

アンジオテンシン変換酵素(ACE阻害薬)

アンジオテンシンⅡの産生を抑え、血圧を低下させます。

副作用としては、空咳、高カリウム血症、血管浮腫があります。

主な薬剤:エナラプリル、トランドラプリル、イミダプリル

利尿薬

体内のナトリウム(Na)と水分を尿として排出し、体内の水分量(体液)を減らすことで血圧を低下させます。むくみや心不全にも有用なため、他の薬剤と併用して使用されることが多いです。

副作用としては、耐糖能低下、脂質異常症、高尿酸血症、低カリウム血症があります。

主な薬剤:ループ利尿薬(フロセミド)、サイアザイド系利尿薬(ヒドロクロロチアジド、クロルタリドン)、カリウム保持性利尿薬(スピロノラクトン)

β(ベータ)遮断薬

心臓に作用して心拍数を下げて、血圧を低下させます。

副作用としては、不眠、抑うつ、倦怠感、糖脂質代謝の悪化があります。

主な薬剤:β遮断薬(アテノロール、ビソプロロール)、αβ遮断薬(カルベジロール)

α(アルファ)1遮断薬

血圧を上昇させる交感神経の働き(血管の収縮)を抑え、血圧を低下させます。前立腺肥大症の治療にも使用されます。

副作用としては、起立性低血圧があります。

主な薬剤:ドキサゾシンメシル酸塩

アルドステロン拮抗薬

副腎で産生される血圧を上昇させる作用のある物質(アルドステロン)の働きを抑え、血圧を低下させます。

直接的レニン阻害薬

血圧調節に関与しているレニンの作用を抑え、血圧の上昇を防ぎます。

降圧薬は一生のみ続けるって本当?

降圧薬は治療薬でもありますが、予防薬でもあります。高血圧を下げることで、将来高血圧をリスクとして動脈硬化が進むことで合併症を引き起こすのを予防します。

降圧薬は高い血圧を下げるだけで、高血圧自体を治すわけではありません。そのため、降圧薬をやめてしまうと、結局またすぐに元の高い血圧に戻ってしまうのです。

しかし、降圧薬の力を借りながら血圧を安定させたうえで、同時に生活習慣を変える努力を行うことで血圧が正常化できます。そうすると降圧薬をやめることができる可能性があります。

逆に、血圧の薬を飲んでいるから大丈夫と思って生活習慣を変えなかったら、薬の量が増えるだけではなく、糖尿病、高脂血症という他の生活習慣病も併発する心配があります。

自己判断で薬を止めるリスク

自己判断で薬をやめてしまうと、今まで薬の力で下がっていた血圧が突然上がる場合があります。その急な血圧の上昇によって脳卒中や心疾患などを突如起こす場合があります。そうしたリスクを避けるためにも、自己判断で薬を飲むのを止めることは避けましょう。

薬を減らしてもよい場合とは

生活習慣(食事や運動)が改善されて血圧が下がると、飲む量を減らしていくことができます。徐々に薬を減らしていき、血圧が正常化していくと、薬を止めることができるかもしれません。

高血圧に用いられる漢方薬

漢方では身体のエネルギーについて「気・血・水」という指標で考えます。「気」は生命エネルギーや精神・神経活動を、そして「血」は体内を巡る血液を、「水」は体内の水分を指します。

高血圧の原因である自立神経の異常・交感神経機能の亢進状態を、気の失調状態である「気逆」状態と捉え、また体内の過剰な水分を「水毒」と捉え、これらの改善を目指します。

高血圧に保険適応のある漢方薬としては大柴胡湯(ダイサイコトウ)柴胡加竜骨牡蠣湯(サイコカリュウコツボレイトウ)黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)真武湯(シンブトウ)などが挙げられます。

高血圧の随伴症状(頭痛、肩こり、めまいなど)に適応のある漢方薬としては七物降下湯(シチモツコウカトウ)釣藤散(チョウトウサン)などが挙げられます。

漢方薬には直接的な血管拡張作用や自律神経を介した降圧作用の他にも、血管内皮障害の原因となる活性酸素を除去する作用があり、心身のバランスを整え、若くしなやかな血管を保つために有効と考えられています。

いかがでしたでしょうか。高血圧の治療が始まっている方でも、降圧薬というものは補助的な治療です。治療しているから大丈夫ではなく、生活習慣をしっかりと見直して改善できるところは改善することで、降圧薬を減らしたり中止したりできる可能性があります。自身の生活を見直して「将来の健康な自分」をつかみとりましょう。


<執筆・監修>

九州大学病院
脳神経外科 白水寛理 医師

高血圧、頭痛、脳卒中などの治療に取り組む。日本脳神経外科学会専門医。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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