虫刺されによるアレルギーの症状と薬の使い方…成分による違いは?

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虫に刺されるとかゆみが引き起こされたり、痛みを感じたりします。しかしそれだけではなく、アレルギー反応が起こることがあります。

アレルギー反応の最も強いものはアナフィラキシーといって命に関わることも多く、ハチによるアナフィラキシーは非常に怖い病態として知られています。ここでは虫刺されによるアレルギー反応について解説します。

虫刺されによるアレルギーの特徴

虫刺されによるアレルギーには特徴があります。食物や薬品のように口から体内に物質が入って来ることによってアレルギーが起こるわけではなく、ほとんどの場合、体表面に虫が触れて、何らかの刺激が肌に伝わることでアレルギーが起こります。

ごく稀に、小麦粉に発生したダニを食べてしまうことによって起こるアレルギーもありますが、ここでは一般的な虫刺されによるアレルギーについて見てみましょう。

虫に刺されたときの症状

虫に刺されたときの症状はどのようにしておこるのでしょうか。虫刺されの症状が起こる原因には次の3種類があります。

虫の針が皮膚に刺さることで症状が出る

1つ目は実際に刺すことによっておこる症状です。ハチなど、針が皮膚に刺さることによって起こります。この場合、皮膚の中に毒液が入ってきたり、針自体に皮膚が反応したりするため、すぐに症状が起こることが多くなります。

吸血によって症状が出る

2つ目は、針を刺すことには違いが無いのですが、吸血によって起こってくる症状です。蚊やダニなどが該当します。

この場合、針は刺されますが人体に対して攻撃性のある物質が利用されたり、強く皮膚を傷害したりするわけではありませんから、すぐには症状が出ないことが多いです。ただし、蚊などは皮膚を刺されたことに気づかれないように感覚を麻痺させる物質を注入してから吸血するため、その物質に対するアレルギー反応が遅れて起こってきます。

接触性の障害によって症状が出る

3つ目は、単に触れるだけで症状が起こってくる接触性の障害です。毛虫などがそれに当たります。皮膚に虫が触れることによって、体内の免疫細胞が集まってきて、赤く腫れたりかゆみがでたり、やや遅れて症状が出現します。

このように、虫刺されの際の症状は虫がどのように皮膚に影響するかによって変わってくるのです。

即時型反応と遅延型反応

アレルギーは医学的にはI型からIV型までの4種類に分類されます。

I型アレルギー

一度生体にとって異常と判断された物質が体に触れると即時に起こるアレルギー反応です。食物アレルギーや気管支喘息などがこれにあたります。

一度、異常な物質が人の体内に入ると人の免疫システムはそれを記憶し、次にその物質が体に侵入してきたときにすぐに対応できるように免疫システムを構築します。

そしてその物質が再度、体に入ってきたときにはヒスタミンという物質が一気に分泌されることで免疫反応が急激に活性化され、異物に対する反応が起こります。急激な免疫反応によって体でさまざまな反応が起こってくるメカニズムです。

II型アレルギー

体内の細胞に対して免疫が誤って攻撃してしまうアレルギーです。あまり虫刺されには関与しません。

III型アレルギー

免疫を担当する体内の物質が体のさまざまな場所に沈着することで起こってくるアレルギーです。腎障害や、関節リウマチなどが相当し、こちらもあまり虫刺されには関与しません。

IV型アレルギー

遅延型アレルギーとも呼ばれるアレルギーです。異常な物質が体内にあると検知してから、免疫細胞が集合することで免疫反応が起こります。免疫細胞の集合に時間がかかるため、遅延型アレルギーと呼ばれるのです。

皮膚に付着した物質によるかぶれなどの接触性皮膚炎やツベルクリン反応がこれに該当します。

虫刺されによるアレルギーはI型アレルギーとIV型アレルギーが該当します。機序から分かるように、I型アレルギーはすぐに起こる即時型反応を起こし、IV型アレルギーは遅延型反応を起こします。

ただし、I型アレルギーで注意したいのは、基本的には1回目の虫刺されのときには症状が起こらず、2回目以降の虫刺されのときに起こるということです。1回目に体に入り込んだ物質に対して体が免疫システムを構築した後に、再度その物質が体内に入り込んだときにアレルギーが起こることになります。一方で、IV型アレルギーは初めての虫刺されのときから起こることがあります。

虫の種類によって症状が異なる

アレルギーによる症状は虫がどのように皮膚に影響するかによって変わってきます。また、同じように皮膚に影響を与えるとしても、虫の種類が違えば毒性が変わってきたり、針が侵入する深さが変わってきたりしますから、症状が大きく変わってきます。

特に遅延型アレルギー反応は虫ごとにさまざまな症状がありますから、症状から虫の特徴を推察できることもあります。

アナフィラキシーを起こす場合もある

アナフィラキシーはI型アレルギーの重症型です。I型アレルギーは体に一度侵入してきた物質に対して体が免疫システムを構築し、再度その物質が侵入してきたときに急激に反応が起こることによると解説しました。

しかし、その急激な反応が過剰になってしまうと、免疫反応のために分泌されるヒスタミンが体の各所でさまざまな反応を起こしてしまい、ときには命に関わる症状を引き起こすことがあります。

アナフィラキシーとは、定義として皮膚症状に加えて、何らかの全身症状が1つでも起こることをいいます。例えば、ヒスタミンによって血管が拡張してしまい血圧ががくっと下がってしまう、喘息発作のように気管が狭窄し、呼吸困難を引き起こしてしまう、などです。

しかも、これらの症状が15分以内に起こることも稀ではなく、救急車を呼んでも治療が間に合わないこともある非常に危険な状態です。とくにスズメバチのアナフィラキシーは重篤化することで有名で、注意が喚起されています。

過去にアナフィラキシーを起こした人は再度起こすことが多く、さらに2回目以降のアナフィラキシーはさらに重篤化することが多いため、すぐに治療できるように手持ちの治療キットを処方されることもあります。

虫刺されによるアレルギーへの対処法

虫刺されによってアレルギーが起こった場合、どのように対処すれば良いのでしょうか。アナフィラキシーが起こった場合はすぐに専門的な治療が必要ですが、ここでは市販薬や漢方薬で対応できるケースについて見ておきましょう。

抗アレルギーの飲み薬を服用する

とくにI型アレルギーの場合はヒスタミンという物質が関与すると説明しました。ですので、ヒスタミンの放出を抑えることでアレルギー反応を抑える飲み薬がよく使用されます。

市販のアレルギー薬も多くがヒスタミンの作用を抑える抗アレルギー薬になります。抗アレルギー薬の内服によってかゆみや赤み、膨らみなどを抑えてくれます。

ただし、ヒスタミンの作用を抑えると、眠気が起こってしまいます。アレルギーの薬で眠気が起こるのはこのためです。近年ではヒスタミンの作用に直接作用しない抗アレルギー薬も開発され発売されていますから、眠気が気になる場合はそちらを選択するのも良いでしょう。

症状に合った塗り薬を塗布する

塗り薬にはさまざまな種類があります。というのは、虫刺されの症状は多岐にわたり、即時型アレルギー反応と遅延型アレルギー反応ではそれぞれ機序が異なるため、それぞれにあった薬を使用する必要があるからです。

具体的には、かゆみだけの場合はヒスタミンによる即時型アレルギー反応が起こっている場合が多いので、このような場合には抗ヒスタミン成分の入った塗り薬の使用がすすめられます。

一方で、赤みや腫れがある場合は遅延型アレルギー反応が考えられます。この場合はヒスタミンによるアレルギーではありませんから、抗ヒスタミン薬を塗ってもあまり効果がありません。このような場合にはステロイドが配合された塗り薬が効果的です。

また、かゆみだけであってもかゆみが強い場合にはステロイドが有効な場合があります。ただしステロイドには副作用もあるため、必要最小限の使用にとどめることが大切です。

なお、市販の塗り薬には単一成分だけで売られているものはあまりなく、それぞれさまざまな物質が混ぜられています。特に多いのが、局所麻酔薬が配合されている製剤です。局所麻酔薬を塗布することで、かゆみや痛みの感覚を麻痺させて症状を緩和してくれます。

市販薬であればほとんどの場合リドカインという局所麻酔薬が配合されていますから、リドカイン配合のものを選ぶと症状を抑えてくれるでしょう。

虫刺されに使う塗り薬の成分

虫刺されに使う塗り薬の成分について詳しく見てみましょう。

抗ヒスタミン成分

まずはヒスタミンをブロックする抗ヒスタミン成分がメインとなります。飲み薬と同じように、I型アレルギーの際にヒスタミンが分泌されますので、それを抑えることによってかゆみや赤み、膨らみなどを抑えてくれます。

抗ヒスタミン成分の中でもよく使われるのは、ジフェンヒドラミンやクロルフェニラミンなどです。虫刺されに対して使用される塗り薬は、これらの成分が含まれていることがほとんどです。

症状が痒みだけの場合には、抗ヒスタミン成分を含む薬でも十分効果があることが多いです。

ステロイド成分

ステロイドは、炎症を抑える作用があります。虫刺されによってアレルギーが起こると、皮膚で炎症が起こり、この炎症のせいで赤みが起こったり、かゆみや痛みなどの症状が強くなってきます。炎症を抑えることによって、これらの症状を抑えるのがステロイドになります。

ステロイドは副作用が怖いという風に言う人も多いですが、確かに内服薬の場合には副作用が多くて注意して使用しなければなりません。しかし塗り薬の場合には、強いものを長期間にわたって使用した場合には皮膚が薄くなってくるなどの症状が見られますが、短期間使用するだけであればそのようなこともありません。

むしろ、痒みが残って引っ掻いてしまうと傷口になって治りが悪くなるので、強いかゆみがある場合や、赤みを帯びた炎症の激しいような皮疹になっている場合にはステロイドでしっかりと症状を抑えることが重要になります。

ステロイドにはたくさんの種類があって、効果の強弱によって5つのランクに分類されています。弱い、普通、強い、とても強い、最も強いの5つのランクです。

ドラッグストアなどで購入できる市販の外用薬には、この中でも弱い方から3つ、弱い、普通、強いの成分が含まれています。弱いものとしてはプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン酢酸エステルなどがあります。普通のものとしては、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステルやトリアムシノロンアセトニドなどがあります。強いものとしてはベタメタゾン吉草酸エステルなどがあります。症状に応じて選ぶといいでしょう。

局所麻酔薬

かゆみを伝える神経が、過度に興奮することによってかゆみはより強くなります。それを防ぐために、局所麻酔薬を使用することで神経を麻痺させ、かゆみをブロックするのが局所麻酔薬です。ジブカインやリドカインなどが代表的です。

その他

その他に含まれる成分としては、抗生物質があります。ジュクジュクしたり化膿したりしてるような傷口には、抗生物質が含まれている外用薬を使用するといいでしょう。代表的なものとして、ゲンタマイシンなどがあります。

また抗炎症成分として、サリチル酸メチルや、グリチルリチン酸などが入っている場合もあります。

漢方の活用

漢方はもともと症状に応じて治療を行うというより、その人の体質を見極め、体質を改善することで症状を緩和することを目的にすることが多くあります。

虫に刺されやすい体質の改善

虫刺されに対する漢方の使用法の1つ目は、虫に刺されやすい体質を改善するための使用が挙げられます。同じ場所にいても虫に刺されやすい人、虫に刺されにくい人がいますが、こうした違いに対する漢方医学的な解釈があります。

漢方医学の多くの先生に共通して見られる解釈、処方というものははっきりしていませんが、代謝が良くなかったり、熱っぽかったりする人に虫刺されが多いようです。そのような体質の改善に漢方を使ってみると虫に刺されしにくくなるようです。

症状の緩和

虫に刺された後の症状が強いという人にも漢方で症状が起こりにくくする処方が考えられています。具体的には虚弱体質、消化器系の虚弱、あるいはかんしゃく持ちの場合に症状が強くなりやすいようで、そのような症状の改善を漢方で行い、虫刺され時の症状を緩和する方法があります。

用いられる漢方薬の一例

虚弱体質の改善によく用いられるのが補中益気湯(ほちゅうえっきとう)です。特に消化器症状が伴うような虚弱の場合は便通を改善することで体質を改善します。また、補中益気湯は体の免疫力を高めるとされているため、アレルギー体質も改善する効果が期待できるようです。

六味地黄丸(ろくみじおうがん)も同じように虚弱体質の改善に役立ちますが、特に先天的な虚弱体質を改善する効果があります。

抑肝散(よくかんさん)は気の巡りを安定させることで、かんしゃくを起こしにくくします。これにより、かきむしることで余計にひどくなる皮膚症状を抑えることができます。

他にもさまざまな処方によって虫刺されしにくくしたり、虫刺されによる症状を抑えたりすることができると考えられます。体質改善を求める人は、一度漢方専門医に相談してみるとよいでしょう。

郷正憲

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。 「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

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