数値を下げるには?CEAが高くなる癌や長期喫煙などの原因

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CEAはがんの早期発見や治療効果の判定に用いられる腫瘍マーカーです。ここでは腫瘍マーカーとはどのようなものなのか、中でもCEAにはどのような特徴があるのかについて詳しく解説します。

腫瘍マーカーとは

悪性腫瘍の存在を示す目印になる物質を腫瘍マーカーといいます。

腫瘍マーカーとは、がんの種類によって特徴的に作られるタンパク質などの物質であり、腫瘍マーカーに関連する検査は、がんの診断の補助や、診断後の経過や治療の効果をみることを目的に実施されます。

腫瘍マーカー検査は、採血や採尿で簡便に検査することができて、体への負担はほとんどありませんが、がんの有無やがんがある場所は、腫瘍マーカーの値だけでは確定できないため、画像検査などの検査結果も合わせて医師が総合的に判断します。

通常、腫瘍マーカーは、がん細胞の数や、がん細胞が作る物質の量が多くなると、値が高くなります。

一方で、肝障害、腎障害、飲酒や喫煙などの生活習慣、いつも飲んでいる薬、がん以外にかかっている病気などの影響によって、がんの有無とは無関係に腫瘍マーカーが高値を認めることもありますし、その逆にがんがあっても値が高くならないこともあります。

このように、腫瘍マーカーだけで悪性腫瘍の確定診断はできないため、多くの腫瘍マーカーは、あくまで参考値として、診察や画像検査の結果などと合わせて総合的に判断されます。

CEAとは

腫瘍マーカー検査は、がん診断の補助に加えて、治療の効果や、再発や転移が無いかを調べるために、肺がん、食道がん、胃がん、大腸がん、前立腺がん、乳がん、子宮頸がんなど様々な悪性腫瘍で実施されることがあります。

CEA(日本語表記名:癌胎児性抗原)は腫瘍マーカーのひとつであり、甲状腺がん、非小細胞肺がん、食道がん、胃がん、大腸がん、膵臓がん、胆道がん、乳がん、子宮頸がんなど、消化器系悪性疾患を始めとする様々ながんの診断に用いられています。

また、がんの治療中の経過観察や治療効果を判定する目的で測定されることもあります。

CEAが高値の場合は消化器系のがんの可能性も

CEAは胎児の早期の受精卵細胞と共通するタンパク物質であり、胎児の消化管には比較的多くあります。

ところが、成人健常者の体内にはわずかしか存在せず、成人の場合には消化器系のがんが発生するとCEAが合成されるようになるため、CEAが高値を示す場合には消化器系のがんの可能性が疑われることになります。

一方で、悪性腫瘍があってもCEAが上昇しない場合があり、炎症性の消化管疾患、肝硬変、腎不全、糖尿病など他の慢性疾患の影響で高値を示す場合もありますし、高齢者や喫煙者では特に病気でなくても高値になることもあります。

したがって、CEAの数値単独では確定的な診断を下すことはできず、あくまで診断の補助として用いられて他の諸検査の結果も参考にして総合的に判断します。

がんの可能性が疑われる数値の目安

CEAの基準値は5.0ng/mL以下が一般的であると言われており、この数値よりも高い場合にがんの可能性が疑われます。

CEAは腫瘍の大きさを反映して増減するとされていますが、その基準値は検査方法や検査機関によって異なる場合があることに留意しておきましょう。

CEAが高くなる癌以外の原因

CEAは癌以外にも、次に挙げる原因によって値が高くなることがあります。

肝炎、肝硬変

がん検診などでCEAの数値が高くなったとしても、すぐに「がん病変がある」というわけではありません。

CEAの数値は、一般的には大腸、肺などの癌で陽性となりますが、時に慢性肝炎や肝硬変などの疾患においても陽性を示すことがあります。

ただし、これらの場合のCEA値は、がん疾患と比較して、あまり高くはなりません。

糖尿病

体内に腫瘍が出来ると、健康なときはほとんど見られない特殊な物質がその腫瘍により大量に作られて血液中に出現し、このような物質が血液中にどのくらい含まれているかを調べるのが腫瘍マーカー検査です。

もともとCEAは、胎児の早期の受精卵細胞と共通する物質で、胎児の腸にみられるたんぱく質であるため、大腸がんに反応しやすい腫瘍マーカーといわれています。

しかし、大腸がんだけでなく、糖尿病でも数値が増加することがわかっています。

ただし、糖尿病に伴う膵臓がんのスクリーニング検査には、CEAよりもCA19-9という腫瘍マーカーのほうが適していると考えられています。

クローン病、潰瘍性大腸炎

CEAは、肝臓疾患や糖尿病だけでなく、クローン病や潰瘍性大腸炎など炎症性腸疾患がある場合に上昇することもあります。

クローン病は、消化管の粘膜に炎症や潰瘍ができ、腹痛や下痢、体重減少などの症状を引き起こす病気であり、患者さんの多くは10~20代の若い世代で、詳しい発症原因が明らかになっていないため、国から難病のひとつに指定されています。

CEAは、内胚葉由来の消化管粘膜の癌化の際に特異的に出現するので、大腸がん等の消化器癌を中心に汎用される代表的な腫瘍マーカーですが、時に潰瘍性大腸炎でも若干高値を示すことが知られています。

長期喫煙

腫瘍マーカーは癌細胞または癌に対するからだの反応によって作られ、血液や尿、組織などで増加している物質のことですが、癌細胞だけでなく、正常細胞でもつくられますので、健常な人の体内にもわずかに存在します。

一般的にCEAが高いといわれる基準値は、5.0ng/mlとされていますが、喫煙量に比例して上昇するといわれています。CEA値は喫煙量に比例し、正常値上限の2倍位まで上がる場合もあります。

CEAが高いときに受ける精密検査

CEAが高値を示すとがんの存在が疑われますが、これだけで診断を下すことはできませんので、診断を確定するためには精密検査が必要です。

まず、CEAが上昇している原因が喫煙や検査の非特異的な反応の可能性が指摘される場合は、CEAの再検査が行われ、特に喫煙が原因と考えられる場合には、禁煙をしてから再び検査することになります。

検査の非特異反応が考えられる場合には、検査室で検査に使う試薬を別なものに変えて検査を行いますし、AST、ALTなどの肝酵素項目をはじめ、他の腫瘍マーカーなどを含めてCEA以外の別項目の血液検査が実施されるでしょう。

これらの検査によって全身状態を評価でき、何か病気が起きている臓器の予測を立てることにつながります。

また、慢性肝炎によってCEAが高値を示している可能性がある場合には、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスなどに関連する検査も実施されることがあります。

大腸がんでは便が大腸を通過する際に、がんの表面を傷つけて出血することがあるため、大腸がんによってCEAが高値を呈していると疑われる際には、便に血液が含まれているかどうかを調べる便潜血検査が有効となります。

ただし、痔や月経の血液が混ざった場合でも便潜血検査は陽性になるので、検査のタイミングや結果の解釈は一定の注意を払うことが重要です。

それ以外に、CEAが高値を示す場合に、精密検査で行われることが多い検査手段としては、超音波検査、内視鏡検査、CTやMRI、病理検査(生検)などが挙げられ、実際にどのような検査が実施されるかは、疑われるがんの種類によって異なります。

超音波検査は、体の表面に機械を当てて行う検査であり、患者さんの体に害がない超音波を当てて肝臓や膵臓、乳腺などの臓器を簡便に観察することが出来る有用な検査方法です。

大腸内視鏡では、肛門から内視鏡のカメラを入れて大腸を観察し、大腸がんや炎症が起きていないか直接調べる検査であり、臓器を直接見ることができるので病変が分かりやすいと考えられています。

CEAは経過観察や治療効果の判定にも用いられる

CEAはがん患者さんの治療中に測定されることもあって、この場合には主に経過観察や治療効果の判定を目的として測定されます。

仮に、以前よりも数値が下がっていれば治療効果が出ているといった判断の手がかりにすることができますが、CEAだけで全ての状態を判断することはできないため、他の腫瘍マーカーや画像検査などと併せて総合的に判断されます。

CEAが異常値を示し続けていても治療効果が出ていないと決めつけることはできないため、CEAの数値だけで自己判断せず、治療中の経過についてはかかりつけ医師や専門医からの説明をよく聞いて十分相談しましょう。

CEAの数値を下げる方法はある?

仮に、日々の喫煙習慣によってCEAが上昇している場合には、喫煙をしていると、CEAの上昇が喫煙によるものなのか病気によるものなのかの判断が困難になりますので、禁煙を1~2か月することでCEAの数値が低下する可能性があります。

ただし、禁煙してもすべての人でCEAの値が改善するわけではないので、評価する際には注意が必要ですし、他のCEAが上昇する原因は病気や加齢によるものが大多数なので、生活習慣によって改善させることはできません。

したがって、CEAが高値になっている原因や背景を詳細に調査することが重要です。

まとめ

これまで腫瘍マーカー「CEA」について解説してきました。

CEAは腫瘍マーカーの一種であり、数値が高い場合には体の中にがんが存在する可能性があります。

身体のどの臓器で悪性腫瘍が発生しているかについてはCEAの腫瘍マーカー検査だけでは特定が難しく、がんの診断を確定するためには精密検査が必要不可欠です。

また、喫煙習慣や加齢、検査の試薬との相性によってCEAが高値になることもあるため、他の検査結果も見て総合的に判断することが大切です。

CEAの結果から要精密検査となった場合には、忘れずに検査を受けるように意識して、精密検査でがんの存在が否定された場合でも、定期的にがん検診を受けて病変を早期発見できるように努めましょう。

がんの存在が確認された場合には治療効果の判定などにCEAを始めとする腫瘍マーカーが測定されて評価することもありますので、かかりつけの医師とよく相談したうえで結果を解釈するようにしましょう。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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