かかとが痛くなる原因と足底腱膜炎の治療法
特に運動をしたわけでもないのに、寝起きにかかとに痛みを感じることはないでしょうか。もしかしたらその症状は、足底腱膜炎による症状かもしれません。ここでは足底腱膜炎を中心に、かかとが痛くなる原因について解説します。
目次
土踏まずやかかとの構造と働き
もともと足の形というのは、土踏まずが存在してかかとと指の付け根で体重を支える構造になっています。この構造を作っているのが足底腱膜で、かかとと指の付け根を結び、弓の弦のように引っ張ることで、骨のアーチ構造を作っているのです。
このように足の裏がアーチ状をしていることは、足にかかる負担を和らげるために役立っています。アーチ状の構造というのは上下にかかる力を分散するので、アーチの端に力を集中させ、アーチを構成する他のパーツに強い力がかかりにくいようになっているのです。
足というのは体重を支える静的な力がかかるだけではなく、ジャンプしたり飛び降りたりしたときにかかる非常に強い力を支えなくてはなりません。そのような力がダイレクトに足の骨や、足首の骨にかかってしまうと骨に多大な力がかかり、骨折をしてしまう可能性があります。
そのため、アーチ構造を維持してクッションのように体を支えるというのは非常に重要な働きとなるのです。
ちなみに、下腿の骨はかかとの骨の真上についているのではなく、足の骨が構成するアーチの上に乗っかるようになっています。これによって、足をついたときの衝撃がまずアーチで吸収され、その上に乗っている下腿の骨に伝わるようになっています。
ですので、かかとの骨は斜め下に向けて突き出るような構造をしており、アーチ構造を維持しつつ、しっかりと体重を支えられるように強い力を発揮するようになっているのです。
かかとの痛みの原因になる足底腱膜炎
足底腱膜炎は、そんな足のアーチを形作る足底腱膜に炎症が起こる病気です。これは若い頃には起こりにくいのですが、加齢と共に起こりやすくなってきます。好発年齢は中高年で、解剖学的な理由から女性に起こりやすいと言われています。稀に、非常に強く負荷がかかる若年の男性にも起こってくる事があります。
足底腱膜に限らず、全身の腱は加齢と共にだんだんと柔軟性が失われていきます。そんなところに、ジョギングやジャンプ、重労働など強い負荷がかかってしまうと、柔軟性が失われている腱膜がどんどんと引っ張られて痛んでしまいます。
腱膜が痛んでしまうと、修復のために炎症反応が起こります。これが足底腱膜炎の正体です。
足底腱膜炎は腱膜であればどのような場所にも起こるのではありません。最も力がかかりやすい場所に集中的に力がかかり、炎症が起こります。ほとんどの場合は、かかとの骨に足底腱膜が付着している場所に最も力がかかりますから、その場所の痛みを訴える人が多くなります。
また、足底腱膜がもともと緩んでアーチ構造が崩れている場合にも足底腱膜炎は起こりやすくなります。足にかかる力が分散されなくなりますから、接地するかかとの部分に強い力がかかり、炎症が起こりやすくなるのです。
痛みにも特徴があり、寝て起きたときに症状が起こるのがほとんどです。今まで足に負荷がかかっていなかったのに急に負荷がかかったときに痛みを感じるというわけです。
この状態で放置すると、炎症がひどくなり、骨にも影響が出てきます。骨は異常な力が加わると変形し、トゲのように表面がギザギザになります。そして、そのトゲのせいで腱膜が刺激され、更に痛みが強くなってしまうことがあるのです。
さらに、骨だけではなく腱膜自体も損傷と修復を繰り返すため、炎症によって血管が増生してきます。こうなってくると、軽度の刺激で炎症がすぐに起こってしまいますから、治ってもすぐに症状が起こってくる、再発がしやすい状態となってしまいます。
ですので、足底腱膜炎かもと思った場合には早期から治療を開始する必要があります。
足底腱膜炎の治療法
足底腱膜炎と診断されたらどのような治療を行うのでしょうか。
保存療法
まず行われるのは保存療法です。足底、特にかかとに負担がかかってくることで足底腱膜炎は増悪しますから、かかとに負担がかからないような工夫が求められます。
まずは安静を基本とします。運動をよく行っている場合は運動をいったん中止します。その上で炎症を抑えるために湿布や内服薬を使用します。
患部の炎症を抑えるために、ステロイド薬の注射もよく行われる治療法です。
また、足首にテーピングをすることで、かかとではなく足先で体重を支えられるように工夫する治療も行われます。
さらに一歩進んだ治療として、特に土踏まずがつぶれて平になってしまっているような状態の場合には、アーチ構造が維持できるようなサポーターやソールを使用する事で負担を軽減し、また再発を予防するような治療が行われる事もあります。
このときに使用するインソールとしては、特にかかとの内側を高くして、やや外側に力がかかるようになるインソールが使用されます。
体外衝撃波治療
体外衝撃波治療は足底腱膜炎に対しても行われます。この治療は多くは尿管結石に対して行われる治療なのですが、整形外科疾患としては足底腱膜炎が保険適応となっています。
他にもアキレス腱炎、膝蓋腱炎、偽関節など骨や関節に炎症が起こって、様々な組織が異常に増生しているような場合に使用して治療効果が得られると言われています。
この治療は、衝撃波を皮膚の上から患部に照射することで、異常な組織を破壊することで治療効果を得ようという治療です。
前述の通り、足底腱膜炎では早期にはあまり変化はありませんが、慢性化してくると骨が変化して骨棘ができたり、血管が新生してきたりして、それによって症状が慢性化、悪化してきます。体外からの衝撃波によってこれらの組織を破壊することで症状、病状の緩和を図ります。
もちろん、衝撃波によって異常組織が破壊されたとしてもかかとへの負担がかかり続けている場合には再発のリスクがありますから、インソールや安静などの治療と併用して行うのが通常です。
手術療法
手術療法も、体外式衝撃波治療と同じく、異常に新生した部分を破壊する事で症状の改善を図ります。最近では内視鏡を使用した治療が主となります。足底腱膜を切除する手術や、骨棘を切除する手術を行う事によって症状の改善を図ります。
しかし、直接的にかかとにかかる力を改善させるわけではありませんから、手術をしても症状が完全に改善する事はあまりなく、あくまで慢性化している状態を増悪させないための治療といった位置づけです。
リハビリテーション
繰り返しになりますが、足底腱膜炎は足底腱膜が柔軟性を失って足のアーチが不十分となってしまうことで発症、増悪しやすくなってしまいます。そのため、リハビリテーションを行って足底腱膜を柔らかくすることで症状を軽快させたり、再発を予防したりする事ができるようになります。
具体的にはボールを足の下で転がしたり、足の指でタオルをつかむような運動をしたりする事で、足底腱膜のストレッチとなり、再発を予防することができるようになります。
これらの運動は特殊な機材を必要とするわけではありませんから、朝起きたときにかかとが痛いと思ったら、まずやってみてもいいでしょう。
ただし、慢性化のリスクもありますから、これらのストレッチを行っても症状が改善しない場合には病院を受診するようにしましょう。
かかとが痛くなるその他の原因
かかとが痛くなる原因には、足底腱膜炎以外にどのようなものがあるのでしょうか。
アキレス腱炎
1つ目に考えられるのは、アキレス腱炎です。アキレス腱は足首の後ろ側にある腱のことで、ふくらはぎの筋肉と踵を繋いでいる腱になります。この腱は比較的長く、刺激が続くことによって炎症を起こしやすい場所とされています。足首を曲げたり伸ばしたりを繰り返す時に、炎症が起こってきて、痛みが生じてくることがあるのです。
一般的によく症状を訴えるのは、ランニングなどの運動をした時です。普段は痛みがなくても繰り返し足を動かした時に痛みを感じ、慢性的になってきます。
治療は安静にすることが最も大事で、痛みが強い時には消炎鎮痛薬を使用することによって痛みを和らげます。
踵骨骨棘
骨棘というのは、骨自体の表面が平滑ではなく、一部分にトゲのようなものができたものを言います。踵骨骨棘は踵骨に骨棘ができたものを指します。
骨棘は、繰り返し同じ場所に刺激が加わることによって、骨が防衛反応によって変形してくることによってできてきます。長時間立っていたり、底の硬い靴を履いたまま仕事をしたり、足をよく使うスポーツをしたりすることで踵骨骨棘ができます。
レントゲンで骨のトゲを見つけることで診断が可能です。治療は軽症であれば様子を見ることになりますが、重症になれば、手術で骨を削ることもあります。
踵骨骨端症(シーバー病)
子供の踵の痛みはシーバー病を疑います。シーバー病は踵骨骨端症のことです。サッカーや野球など、スポーツをしている小学生に多く、足のかかとに痛みや腫れが出ます。
シーバー病では、踵の骨の骨端核の部分が剥がれたり、踵骨軟骨に炎症が起こったりすることによって痛みが生じています。子供のかかとは成長に合わせて大きくなれるように、骨端部が軟骨によってくっついた構造をしています。1つの骨に比べて弱く、繰り返しの刺激によって炎症が起こりやすくなってきます。
一方で、踵骨にくっついているアキレス腱の柔軟性はまだ十分ではなく、繰り返しの運動で強く引っ張ることになります。
治療としては、成長して軟骨が骨になるまでの間、安静にすることが求められます。アイシング、ストレッチ、サポーターでの固定、消炎鎮痛剤を使用したりします。重症の場合には、ステロイドを関節内に注射して炎症を抑えます。
これらの治療をした上で、痛みの程度とレントゲンでの回復を確認しながら、少しずつリハビリを行い、徐々に運動量を増やしていきます。