蕁麻疹との違いは?血管性浮腫の治療と予防

突然まぶたが腫れたときの対処法 アイキャッチ
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血管性浮腫という病気があります。一般的な蕁麻疹と同じように体にかゆい皮疹が出る病気ですが、蕁麻疹とは様相が違います。どのように違うのでしょうか。血管性浮腫の症状の特徴や治療について解説します。

血管性浮腫とは

血管性浮腫とは、皮下組織を含む皮膚や粘膜に生じる皮疹のことを言います。ドイツのクインケが最初に報告した病気であるため、クインケ浮腫とも呼ばれます。

血管性浮腫は蕁麻疹の一種ではありますが、狭義の蕁麻疹とは異なります。皮下組織あるいは粘膜下で局所的に血管透過性が亢進する事で、血管の外に水分がたまって腫れてきます。

血管性浮腫には急性のものと慢性のものがあります。

急性の場合は、誘因となる何らかの原因が体に入ると、突然発症します。誘因となるのは、アスピリンなどの非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、モルヒネやコデインなどの特定のオピオイドといった多くの薬や、虫刺され、アレルギー注射、一部の植物等です。

特にACE阻害薬は高血圧や心不全の治療に使用され、血管性浮腫が起こりやすい薬として知られています。ACE阻害薬が原因である場合は主に顔や上気道に腫れが出てきますが、腸管が影響を受けることもあります。

食事なども原因となることがあり、ごく少量食べただけで血管性浮腫が起こる場合があります。一方で、イチゴなどは大量に食べた後でしか反応が起こらないものもあります。

慢性の血管性浮腫は、血管性浮腫が慢性化して数週間から数か月にわたって再発を繰り返すものを言います。原因が特定できないことも多いのですが、意識せず何度も摂取している物質が原因となる場合があります。

牛乳に入っているペニシリンや、保存料や着色料などの食品添加物が原因となる場合もあります。また、急性の血管性浮腫の原因となる薬物を慢性的に使用している場合にも起こってきます。

通常、蕁麻疹を伴わない血管性浮腫が再発するものを特発性血管性浮腫と呼び、原因を特定するのは困難です。

血管性浮腫の症状の特徴

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血管性浮腫では、特徴的な症状としてまぶたや口唇の腫れが見られます。夕方から夜間にかけて生じることが多く、朝起きたら眼が腫れていたという症状がよく見られます。

まぶたや口唇のように粘膜に近い部分に症状が生じた場合、皮膚だけではなく粘膜に浮腫が生じることもあります。例えば、目の充血や口腔内の腫れなどです。

また、腫れが左右非対称ということも特徴です。痛みを伴うこともあります。

皮膚だけであれば症状は軽微ですが、稀に気道の粘膜や消化管に腫れが生じることがあります。気道粘膜に腫れが生じたら嚥下困難や呼吸困難を起こすことがありますし、消化管に発生した場合には吐き気や嘔吐、痙攣性の腹痛、下痢が生じることがあります。

症状は比較的持続時間が長いです。蕁麻疹であれば数十分から長くても数時間で消失するのですが、血管性浮腫は数日続く事もめずらしくありません。

蕁麻疹ほど多くはありませんが、アナフィラキシーを引き起こすこともあります。アナフィラキシーというのは、皮疹に加えて全身のどこかの臓器に異常症状が出ることの総称で、呼吸困難や血圧低下を伴うことを指します。稀ではあるものの、アナフィラキシーによって命に関わることもあります。

遺伝性血管性浮腫と後天性血管性浮腫

遺伝 DNAイメージ

血管性浮腫は、遺伝性血管性浮腫と後天性血管性浮腫に分かれます。

遺伝性が原因の場合は、C1インヒビター(C1-INH)と呼ばれるタンパク質が先天的に欠損している場合に発生します。この場合、成人になる前の小児期に症状がみられることが多くなります。

遺伝性血管性浮腫の場合、家族歴もポイントです。患者の約4分の3が親から子への遺伝であると言われています。そのため、同じ家系内に遺伝性血管性浮腫を疑う場合が多くあります。ただし、残りの4分の1はその患者さんで初めて遺伝子異常が起こっているものです。発症率はおよそ5万人に1人と言われています。

症状から見ると、遺伝性血管性浮腫の場合、蕁麻疹を伴わない点も特徴です。血管性浮腫では蕁麻疹を伴うことも少なくありませんが、遺伝性血管性浮腫であれば伴わないのです。

遺伝性血管性浮腫の場合は元々血管性浮腫を起こしやすい状態を内包しているといえ、きっかけなく突然浮腫が起こってきます。ただし、怪我や抜歯、外科手術などの何らかのストレスがきっかけになって起こってくることもあります。

一方の後天性の場合には、前述のような種々の物質によって誘発されることが多く、成人期の発症が多くなります。

血管性浮腫と蕁麻疹の違い

血管性浮腫も蕁麻疹も、何らかのアレルゲンに触れることで起こってくることがあり、似たような病気として捉えられることも多くあります。しかし、蕁麻疹と血管性浮腫は病理的に全く違ったものとして捉えられています。

皮膚は主に3層構造をしています。浅いところから表皮、真皮、皮下組織となっています。そして蕁麻疹は真皮の中に、血管性浮腫は皮下組織の層に水が漏れ出すことによって起こってくる皮疹になります。

真皮層は薄い層ですから、そのなかに水が漏れるとパンパンに密度の高い状態となります。そのため、皮膚表面から皮疹を見ると、どこまで水がたまっているのか一目で分かります。ですから、蕁麻疹の場合は境界が明瞭に見られます。

一方で、皮下組織は深い層で非常に厚い層になっています。また、内部構造も密度が低く、水が広がってもスポンジの中に広がるように広い範囲に広がります。そのため、表面から見ると表面がぼやっとして境界が不明瞭な皮疹となります。境界不明瞭に全体が厚ぼったくなるので、腫れて見えるのです。

症状からも違いが見られます。

蕁麻疹の場合は、かゆみは必発です。蕁麻疹の発症機序にはヒスタミンという物質が関わっています。アレルギーなどの機序によってヒスタミンという物質が放出されると、血管からの水分が漏れ出しやすくなるため蕁麻疹が起こってきますが、ヒスタミンはかゆみを引き起こす物質でもあります。そのため、蕁麻疹が出るということはかゆみが起こることと同義になるのです。

しかし、血管性浮腫の場合は、ヒスタミンが関わらないことも時々あります。そのため、かゆみが起こらないことも比較的多いです。

血管性浮腫の治療と予防

血管性浮腫はどのように治療したり、予防したりすると良いのでしょうか。

薬による治療

血管浮腫も蕁麻疹と同じようにヒスタミンが関わっていることが多いですから、抗ヒスタミン薬の内服を先ずは試されることが多いです。多くの場合、効果が認められます。特に慢性的に繰り返す場合には抗ヒスタミン剤を症状が出ていないときも含めて長期的に定期内服します。

抗ヒスタミン剤だけで症状が治らない場合には補助的な薬としてトラネキサム酸が使用されます。ほかには抗ロイコトリエン拮抗薬、H2-Blockerが使われるほか、症状が強いときにはステロイドの使用も考慮されます。

遺伝性血管性浮腫としてC1-INHが関わっている場合には抗ヒスタミン薬が無効な場合が多くなります。このような場合にはC1-INH製剤を投与して補充することで症状の改善を期待します。

発作が頻回に起こる慢性の血管性浮腫の場合にはトラネキサム酸を予防的に長期内服するほか、原因物質であるブラジキニンの受容体を阻害する注射製剤を使用する場合もあります。

重度の血管浮腫によって嚥下や呼吸に問題が出ている場合には緊急に治療を行う必要があります。そのような場合にはアドレナリンを皮下もしくは筋肉に注射します。繰り返す人には自己注射用のキットを携帯してもらうこともあります。

ストレス対策

血管性浮腫を繰り返す人の場合、ストレスによって発作が誘発される場合もあります。ストレス対策も長期的な症状管理のために大事になります。

ストレスをためない生活をする、ストレスを適度に発散する、適切な睡眠や休息をとるといったことで体にストレスをためないようにします。

郷正憲

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。 「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

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