無駄な早起きは一文の得にもならず…もっとゆっくり眠らせて!

体験談

まだ夜も明けないような時間になぜか目が覚めてしまう、一度目が覚めてしまうとそのまま眠れなくなる……。それは、もしかしたら閉経後(50歳前後)のホルモンバランスの急激な減少によって起こる「早朝覚醒」の症状かも!?

そんな自分ではどうにもならない閉経後の不調やつらい症状の緩和や体質改善には、漢方薬がよく効くことをご存知でしたか? 
「健タメ!」では、読者からの体験談をもとに、お悩みに関する原因や対処法を医師や薬剤師がお答えしていきます。

今回は「閉経後の早朝覚醒」をテーマに、薬剤師の中田早苗先生にお話を伺ってみました。 

もっと眠っていたいのに明け方に覚醒…負の睡眠スパイラルが止まらない

芳江さん(65歳女性)、主婦の方からご質問をいただきました。

地方の新聞社ではありますが、日本の経済成長とともに仕事漬けで長年働いていた私。現役時代があまりに忙しく、体力の限界を感じていたのもあり、定年後は朝寝坊して一日中好きなことをして過ごそう、なんて心に決めていたんです。
念願叶って60歳で退職し、思う存分に老後の自分時間を満喫していたのですが、しばらくすると、やりたいことも尽き、何をしても手持ち無沙汰な状態に……。
それどころか、子どももなく、夫とも早くに死別した私に、仕事以上にやりがいのあることなんてこの世にあっただろうか、なんて思い悩むようになってしまったんです。
うつうつとして気持ちが塞いでいたせいなのか、その頃からなぜか、異常に早い時間に目が覚めるようになってしまって。早起きというレベルなら健康的でいいのですが、私が目覚めるのはまだ夜も明けきらないような明け方の4時や5時。
夜更かしグセが抜けきらず、夜は0時過ぎまで起きていることもあり、もう一度眠ろうと試みるのですが、今度は目が冴えてしまって眠れません。
仕方なく起きて掃除をしたりテレビを観たりし始めるのですが、そのまま起きていると、今度は日中なんだか怠くてぼーっとしてしまい、うたた寝してしまうことも度々。そうなると今度はまた早く起きてしまう、そんな日々の繰り返しに疲れ果ててしまいました。
どうしたらこのおかしな睡眠リズムを修正して健康的に過ごせるでしょうか?

ご質問ありがとうございます。
いきいきと過ごせるはずの自由な老後の生活が、睡眠のリズムが狂うことで乱されてしまうのはとてもつらいですよね。
それでは今回は、閉経後の早朝覚醒の原因や改善方法について、詳しくお伝えしていきましょう。

ホルモン減少と神経の高ぶりが早朝覚醒の原因!

早朝覚醒とは、通常の起床時間の2時間以上も前に目が覚めることです。閉経期の多くの女性がこうした不眠の症状に陥るのは、卵巣から分泌されるエストロゲンという女性ホルモンの減少によるものと考えられています。
エストロゲンは、睡眠をつかさどるホルモンであるセロトニンを刺激して活性化するため、閉経後にエストロゲンの分泌が減ると、自律神経が不安定になってさまざまな不眠の症状が起きてしまうのです。

東洋医学的には、「気(生命エネルギー)」や「血(血液)」が不足し、巡りが悪くなると、不眠を引き起こすと考えます。また、「気」の熱を冷ませず、血を全身に巡らせる「心(しん)」に熱がこもることで神経が高ぶり、熟睡の妨げになることもあります。

次の章では、こうした閉経後の早朝覚醒に対する具体的な解決方法をお伝えしていきましょう。

ゆっくり熟睡するための3つの対処法

1.昼寝は30分以内にする

早朝に目が覚めてしまうと、どうしても日中うとうとしてしまったり、ぼーっとしたりしてしまいがち。疲労を癒すために体を休めることは大事ですが、日中に長時間昼寝をしてしまうと、さらに睡眠のリズムが乱れることになります。昼寝をするなら時間を決めて、30分以内の仮眠をする程度に留めましょう。

2.寝る前にハーブティーを飲む

十分に質の高い睡眠をとって爽やかな目覚めを迎えるためには、寝る前に1日の疲れをリセットしてリラックスすることが大事です。
就寝する30分〜1時間程度前に、鎮静効果のある温かいハーブティーを飲むことで交感神経を落ち着かせ、焦りや緊張をしっかりほぐしてから眠りにつくようにしてみてください。

◎リラックス&鎮静効果のあるハーブティー
ラベンダー・カモミール・ジャスミン・ローズ・レモンバーム・リンデン

3.ストレスを軽減しよう

年齢を経るに従って少しずつ睡眠リズムがずれこんで、早寝早起きになるのは自然なことなので、ある程度の早朝覚醒であればあまり心配する必要はありません。
神経が細やかな方や、抑うつ傾向のある方に早朝覚醒が多くみられるため、日頃からできるだけストレスの原因を排除し、心を平穏に保つことで症状が軽減することもあります。
あまりに症状がつらい場合は、心療内科で相談してみてもよいでしょう。

根本的な体質改善には漢方薬が効果的!

早朝覚醒を改善するために、睡眠薬の内服やホルモンの補充という選択肢に加えて、根本的な改善を目的とした漢方薬の服用もオススメです。

特に、今回の相談者様のような症状に悩む方にオススメしたい漢方薬は、加味帰脾湯(カミキヒトウ)です。体力がなく貧血気味な方の「血」を補い、「気」の熱を冷ますことで精神を安定させ、眠りの浅さを改善する効果があります。
また、頭痛やめまい、耳鳴りをともなう不眠の症状のある方には、「気」や「血」を巡らせて体内にこもった熱を冷まし、深い眠りへと導いてくれる釣藤散(チュウトウサン)も良いでしょう。

ストレスをためず、穏やかな気持ちで過ごしましょう

今回は、閉経後の早朝覚醒に悩む方のためのセルフケアや漢方薬をご紹介してきました。
ある程度の早朝覚醒は年齢によるものと前向きにとらえ、ストレスを溜めない生活を心がけるようにすると良いでしょう。
また、こうした閉経後のさまざまな症状改善に、漢方薬が大きな効果を発揮した例もたくさんあります。セルフケアを試してもなかなか改善しない場合は、ぜひお近くの漢方医や漢方薬局に相談してみてくださいね。


中田早苗

あんしん漢方(オンラインAI漢方)薬剤師 中田 早苗 薬剤師。認定運動支援薬剤師。就実大学薬学部卒業。病院薬剤師として約7年間勤務後、漢方薬局で2年間勤務。ファスティングマイスターとして100名以上のファスティングをサポート。TiktokやInstagramでファスティング・美腸を普及する活動も行っている。

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