メラトニンで睡眠の質を改善!生活習慣・サプリ・薬のポイント

お悩み

「最近よく眠れないな」「寝つきが悪くてなかなか寝られない…」。こんな経験はありませんか?

周りの環境によるものもありますが、もしかしたらホルモンのバランスが崩れていることによって、睡眠の質が悪くなっているのかもしれません。

ここではメラトニンの働きに注目し、睡眠の質を改善させるポイントについて詳しく見ていきましょう。

睡眠に影響を与えるホルモンと栄養素

睡眠に影響を与えるものとして、セロトニン、メラトニンがあります。セロトニンとメラトニン両者のホルモンバランスが乱れると、精神と睡眠の質が大きく損なわれてしまいます。それぞれの働きを詳しく見ていきましょう。

セロトニンの働き

セロトニンには気分を安定させたり、ストレス耐性を上げてくれる働きがあります。セロトニンは、体内の材料をもとにして朝方から分泌されます。そして、日が沈むに従って徐々にセロトニンの分泌量が減り、メラトニンへと変化していきます。

眠るときには副交感神経が活発に働く必要があります。この副交感神経が活発に働くためには、適度なリラックスが必要です。そのため、十分なセロトニンによって気分を落ち着かせ、リラックス効果が高まり、結果深い睡眠をとることができます。

このセロトニンが不足すると、ネガティブな思考やイライラ、不安感を感じやすくなります。特に女性は男性と比較してセロトニン量が少ない傾向にあるため、ネガティブ思考に陥りやすいとされています。

メラトニンの働き

メラトニンは脳の中の松果体(しょうかたい)と言われる部位で生合成されるホルモンです。網膜から入った外界の光刺激は、体内時計(視交叉上核)を経て松果体に達します。

明るい光でメラトニンの分泌が抑制されます。そのため、日中はメラトニン分泌が低く、夜間に分泌量が十数倍に増加します。それは、窓のない密室内などでも、体内時計によって昼に低く、夜に高いという状態は続きます。

メラトニンには、自然な眠りを誘う作用があります。そのほかにも抗酸化作用によって細胞の新陳代謝を促したり、疲れをとってくれるため病気の予防や老化防止にさまざまな効果を持つと考えられています。

メラトニンは、年齢を重ねるとともに分泌量が減ることが明らかになっています。そのため、歳をとると朝早く覚醒したり、夜中に眼が覚めたりします。

必須アミノ酸「トリプトファン」

セロトニン、メラトニンの生成に必要なものがトリプトファンです。これは食品に含まれている必須アミノ酸の一つです。

トリプトファンから、セロトニン(脳内の神経伝達物質)が生成され、セロトニンからメラトニンが生成されます。トリプトファンは体内で合成することはできません。食事として体外から摂取しなければなりません。そのため、偏った食生活をしているとトリプトファンが不足し、寝つきが悪くなったり、不眠症につながります。

しかし、トリプトファンの過剰摂取にも注意が必要です。食品安全委員会によると1日に摂取するトリプトファンは220mgまでに制限するよう推奨されています。また、余分に摂取したトリプトファンは体内で脂肪となります。さらに代謝機能が低下した状態で過剰にトリプトファンを摂取すると、体内のセロトニンが過剰になる危険性もあります。サプリメントで補う際は、注意して用法・用量を守りましょう。

睡眠の質を高める生活習慣

睡眠の質を高める生活習慣をいくつか紹介します。

日光を浴びる

セロトニンは精神を安定させる働きがあります。セロトニンの産生に必要なのが日光です。日光を15分〜30分程度浴びることでセロトニンが産生されるため、日光を朝浴びるよう心がけましょう。

不規則な生活を改善する

不規則な生活をしているとメラトニンの産生やセロトニンの産生のバランスを乱してしまいます。さらにお昼過ぎに起床したり、夜更かしをすると日光を浴びるタイミングを逸してしまいます。

その結果セロトニン産生、メラトニン産生が減り、さらに睡眠の質が下がってしまいます。このような悪循環にならないようにするために、不規則な生活を改善させ、規則的な生活を送りましょう。

適度な運動をする

食事で摂取したトリプトファンをセロトニンとして分泌するためには適度な運動が必要となります。朝方に散歩などの運動をすることで日光も浴びることができます。

夜間は蛍光灯やLEDなどの強い光を避ける

夜に蛍光灯やLED・スマホから発せられる青白い波長の強い光の刺激を受けることで、メラトニンの分泌が抑制されてしまいます。家の明かりはリラックスできるオレンジ色の波長のものにするとよいでしょう。そうすることで夜リラックスして眠りにつくことができます。

メラトニンはサプリで摂取できる?

メラトニンは日本の薬局では販売されていません。欧米ではドラッグストアでメラトニンのサプリを入手することができます。メラトニン製品を個人輸入することはできますが、メラトニンの含有量がラベル表示量を満たしていない場合があることや、セロトニンが混入している製品があることが報告されており、注意が必要となります。

メラトニン受容体作動薬の働き

メラトニン受容体作動薬にはメラトベルとロゼレムがあります。メラトニンはメラトニンM1受容体、M2受容体というところに作用します。

中でもM1受容体がより大きく睡眠と覚醒に関与しています。メラトニン受容体作動薬は、メラトニンと似た構造をしており、このメラトニンM1受容体、M2受容体へ作用し、催眠作用を引き起こす睡眠薬です。

ロゼレムの入眠への効果は穏やかであり、せん妄の予防や治療に有効であるとの報告もあります。そのほかにもレム睡眠行動障害の治療やADHD(注意欠如・多動症)の睡眠相後退症の治療にも有効と言われています。

副作用としては、頭痛、めまい、吐き気、眠気などが生じることがあります。また、一過性の抑うつ症状、不安、イライラ感が出現することもあります。

いかがでしたでしょうか。普段何気なく浴びている日光ですが、日光によって体内のホルモンの分泌が調整され、睡眠の質へと影響します。寝不足や睡眠の質が悪いと感じている人は、生活習慣を整えて、朝散歩をしながら日光を浴びてみましょう。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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