もしかして過眠症?寝ても寝ても眠くなる原因

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寝ても寝ても全然寝足りない。日中にも眠たくなってしまう。そんな経験はないでしょうか?

日中に過度な眠気があるものを過眠症といいます。ここでは過眠症をはじめとする、日中に眠くなる原因について詳しくみていきましょう。

過眠症とは

過眠症とは、日中に過度な眠気があることをいいます。原因はさまざまであり、他の病気の一症状として過眠が現れることもあります。

また、季節などの環境的な要因も考えられます。そのため、過眠症状の強さや頻度、持続時間、睡眠時間の長さや質、時間帯のパターン、日常的に摂取している物質の影響、随伴症状などをみていく必要があります。

起床すべき時間帯に過眠が起こり夜間に眠れない、時差ぼけのような症状を概日リズム睡眠・覚醒障害と呼びます。健康な人であれば一時的な症状のみですぐに適応できますが、場合によっては疲労や頭重感、食欲低下、胃腸障害などの身体症状が現れます。

また、入眠時間が遅く、朝は起きることができないために概日リズムが一定に遅くなる睡眠・覚醒相後退障害は、若年者によく起こる一方で、早寝早起きの睡眠・覚醒相前進障害は高齢者によくみられます。日中に過度の眠気があるもので中枢性過眠症があります。下記に詳しく挙げます。

ナルコレプシー

通常居眠りするような状況でなくても眠り込んでしまう睡眠発作を繰り返し、居眠りが10〜20分程度持続します。また、笑い、怒り、悲しみ、驚きなど、強い感情の変化が生じたときに、突然全身の筋肉が脱力する情動脱力発作を伴うことがあります。

日本での有病率は0.16〜0.59%であり、発症年齢は10代が多いです。典型的なナルコレプシーでは脳内の覚醒を維持するためのオレキシン神経が減少または消失しており、そのため、起きている状態を維持することが難しくなります。

また、オレキシン神経はレム睡眠を抑えるのですが、ナルコレプシーでは夜間だけでなく日中にも容易にレム睡眠へ移行するようになります。

主な治療法は、日中の過度の眠気に対しては覚醒維持薬を使用します。薬物療法だけでなく、じゅうぶんな睡眠時間を確保することを含めた生活上の注意も大切です。睡眠時間を確保することで日中の眠気の軽減が得られることがあります。

特発性過眠症

主な症状は日中の過度な眠気ですが、ナルコレプシーと比較して眠気の強さが軽いです。原因は不明であり、発症年齢は10〜20代に多くみられます。

よく眠ることが幼少時期から目立ち、ほとんどの症例で長期化します。昼寝の効果はナルコレプシーと特発性過眠症とではやや違っており、ナルコレプシーでは比較的短時間の眠りで一旦眠気が軽快するのに対し、特発性過眠症は一度に長く寝てしまう傾向があります。

日中の過度の眠気に対しては覚醒維持薬を使用します。薬物療法だけでなく、じゅうぶんな睡眠時間を確保することも大切です。睡眠時間を確保することで、日中の眠気の軽減が得られることがあります。

反復性過眠症(クライン–レヴィン症候群)

過度の眠気を生じ、ほとんど1日中寝て過ごす状態が2日〜5週間持続し、それが年に1回以上反復するものを指します。

同じように反復性の過眠が起こる季節性感情障害、双極性障害といった病気を除外する必要があります。非常に稀な疾患であり、100万人に1〜2人程度とされています。

過眠期は通常10日前後で脱しますが、長い場合には数週間続くことがあります。通常、過眠の症状は年に数回です。症状の出現期間は個人差が大きく、12歳以前と20歳以降に発症すると長期化する傾向にあります。

治療としては炭酸リチウムが最も使用されることが多いです。過眠の症状の出現を少なくし、重症度が軽減することが期待されます。しかし、半数の症例では無効となります。

その際はナルコレプシーや特発性過眠症で日中の眠気に対して使用されている覚醒維持薬を使用することで、一部の症例で有効であるという報告があります。過眠期に入ると、通常の社会活動はできないため、学校や仕事は休むことを余儀なくされます。

他にもある日中に眠くなる原因

過眠症の他にも日中に眠くなる原因はあります。代表的なものをみてみましょう。

睡眠不足

睡眠不足は誰しもが経験したことがあると思います。年齢に応じて必要とされている標準的な睡眠時間をとることができず、慢性的に睡眠不足に陥っている状態が長期にわたると、慢性的な眠気におそわれ、倦怠感、集中力の低下など精神活動に影響が出てきます。

睡眠中は、脳を含む身体組織が回復し覚醒時に備えますが、睡眠不足になるとじゅうぶんな回復ができず、疲れがなかなかとれないといった自覚症状があらわれます。精神面では集中力の低下、意欲の低下、抑うつ気分、倦怠感などがみられ、それによる焦燥感やイライラした気分などに悩まされることがあります。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群(SAS: Sleep Apnea Syndrome)とは、主に睡眠中に空気の通り道である上気道が狭くなることによって無呼吸状態(10秒以上呼吸が止まること)と大きないびきを繰り返す病気のことです。

成人男性の3〜7%、成人女性の2〜5%程度に見られる比較的頻度の高い病気となります。無呼吸は脳の酸素不足を引き起こします。睡眠時無呼吸症候群は寝ている間だけではなく、日中の生活においてもさまざまな症状が出現する危険性があります。

睡眠時無呼吸症候群は日中の強い眠気や、疲労感が残るため、過眠症の原因となります。

更年期の影響

更年期に眠気が強くなることがあります。これは、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が低下してしまいます。脳の視床下部からエストロゲンを出すように指令を出しても、エストロゲンが出ないため脳に混乱が生じて、自律神経のバランスが崩れてしまうことで精神症状が起こるとされています。

さらに、更年期の女性は、仕事や育児、介護など生活環境が大きく変化する時期でもあるため、精神的不調をきたしやすいのです。

その結果、日中にもかかわらず強い眠気を感じてしまうのです。更年期には、他にものぼせや動悸、めまい、頭痛、イライラ、不眠といった症状が現れます。いずれも夜の睡眠の質を下げる原因となるため、眠気をより感じることが多くなります。

うつ病

うつ病とは、気分の変化により日常生活に影響を及ぼす気分障害の一つです。常に落ち込んでいたり、食欲の低下などさまざまな精神的、身体的な症状があらわれます。その中の一つとして睡眠障害があります。

うつ病になるとセロトニンの分泌が低下します。その結果浅い睡眠であるレム睡眠が優位に働き、睡眠の質が下がるのです。

さらにセロトニンの分泌の抑止が続くと集中力の低下や眠気が出現しやすくなります。夜中に目が覚めて寝付けなくなる中途覚醒や、予定よりも2時間以上早く起きてしまう早期覚醒が起こる結果、睡眠が浅くなってしまいます。

また、過度なストレスを体感すると防衛本能が働き、その場から逃げ出したい欲求が生じます。その防衛本能の一つとして寝逃げがあります。寝逃げは、脳を休ませることでストレスを和らげてリセットする働きがあり、そのため過度眠気を感じるのです。

いかがでしたでしょうか。季節の変わり目や一時的な寝不足の時に過度な眠気を感じるのは正常な反応です。しかし、日中に過度な眠気を感じ、生活に支障が出てきているようであれば、一度医療機関で相談してみることをおすすめします。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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