ランチ後は上司の死角で居眠り三昧…食後に襲う眠気の正体はナニ?
たっぷりランチを食べて会社に戻ったら急激な眠気に襲われ仕事どころではなくなってしまった、食事をするとなぜか眠くなってゴロゴロしてしまう……。
30〜40代のプレ更年期世代の女性のなかには、こうした「食後の眠気」に悩んでいる方も少なくないのではないでしょうか。
そんな自分ではどうにもならないつらい症状の緩和や体質改善には、漢方薬がよく効くことをご存知でしたか?
「健タメ!」では、読者からの体験談をもとに、お悩みに関する原因や対処法を医師や薬剤師がお答えしていきます。
今回は「食後の眠気」をテーマに、薬剤師の竹田由子先生にお話を伺ってみました。
目次
食べたら最後!?︎ 食後に襲う急激な眠気で仕事が全然手につきません!
玲子さん(36歳女性)、会社員の方からご質問をいただきました。
このところ、ランチを食べて会社に戻ってきた途端、猛烈な睡魔に襲われることが多くて困っています。冗談みたいな話ですが、「さあ午後ももうひと頑張り!」と気合を入れてデスクに向かった瞬間、頭がポーッとなって意識が朦朧とし始めるんです。
ポーッとしている程度で済めばまだいいのですが、実際にウトウトし始めて頭がガクン! となってしまったことも……。別にサボろうなんていうつもりはサラサラないのですが、毎度こんな状態なので、隣の席の後輩にまで失笑される始末です。
特に夜眠れていない、なんていうこともないですし、食事さえしなければこんなことにならないのも不思議です。実際、先週は仕事がバタバタしてしまい、ランチを食べ逃した日もあったのですが、その日は全く眠くなりませんでした。
これはいったいどうしたことなのでしょうか。幸い、上司のデスクから私の席は死角でほとんど見えないため、これまで居眠りがバレたことはないのですが、いつ怒られるかと思ってヒヤヒヤする毎日です。
どうにかこの食後の謎の眠気を解消して、スッキリ午後の仕事に取りかかれるようにしたいのですが、何か良い方法はないでしょうか?
ご質問ありがとうございます。
食後の急激な眠気の多くは血糖値の乱高下によるものと考えられていますが、急激に襲う眠気はなかなか自分でもコントロールできないため、つらいですよね。
今回は、食後の眠気の原因や改善方法について、詳しくお伝えしていきましょう。
食後の眠気は血糖値の乱高下と「脾」の衰えが原因
食後に起こる急激な眠気は、糖質の摂りすぎによって血糖値が乱高下する「血糖値スパイク」の状態に陥ることにより生じると考えられています。
通常は食事をすることで血液中のブドウ糖の量が増え、血糖値が上昇すると、血糖を低下させる作用のあるインスリンというホルモンが膵臓から分泌されて2時間ほどで平常の血糖値に戻ります。
ところが、糖質を過剰に摂り過ぎることで血糖値が急上昇して「高血糖」の状態になったり、その反動で一気に血糖値が急降下して「低血糖」の状態になると、大量に必要となるインスリンの供給が追いつかず、ブドウ糖が脳に行き渡らなくなり、眠気やだるさに繋がってしまうのです。
東洋医学では、食後の眠気は消化吸収と関係の深い「脾(ひ)」の働きが衰えることによって筋肉や脳に「気(生命エネルギー)」や「血(血液)」が巡らなくなり、眠気やだるさが生じると考えられています。
次の章ではこのような「食後の眠気」を改善するための具体的な方法をお伝えしていきましょう。
食後の眠気を改善するセルフケア3選
1.食事は食べ過ぎずに腹八分目にする
血糖値の急上昇を避けるためには、ご飯やパン、パスタなどの主食となる糖質を過剰に摂取にないことが大切です。
一度にたくさん食べることの多い方や、日頃から暴飲暴食気味になっている方は糖質も摂りすぎになっている傾向が強いため、特に気をつけるようにしましょう。
主食を控えるのはつらいという場合は、白米より玄米、食パンよりもライ麦パンを選ぶなど、食物繊維の豊富な精製されていない食材を選ぶことで血糖値の急上昇を軽減することができます。
最近では、糖質制限が注目されたこともあり、糖質オフと銘打った加工食品も多く扱われるようになってきたので、食後の眠気がつらい場合はそうしたものを利用しても良いでしょう。
2.食べる順番で血糖値の急上昇を避ける
血糖値の急激な上昇を抑えるためには、相対的にタンパク質の摂取量を増やして糖質を控える方法もありますが、糖質を控えること以外にも「食べる順番」に工夫をするという方法もあります。
特に、野菜や海藻、きのこなどには糖の吸収を穏やかにする作用のある食物繊維が豊富に含まれているため、糖質より先に食べることで血糖値の上昇を緩やかにすることができます。
食事を摂る際はこうした食物繊維豊富なものやタンパク質の豊富なおかず、ご飯などの主食、といった順番で食べるようにしてみましょう。
3.質の高い眠りで睡眠不足の解消を!
食後のどうしようもない眠気を改善するには、血糖値コントロールも大事ですが、日頃から夜間の睡眠時間をしっかり確保し、睡眠不足の状態を解消しておくことも重要です。
単に睡眠時間を確保する、ということだけでなく、しっかりと深い眠りを得られる質の高い睡眠をとるように心がけましょう。そのためにも食事は就寝時間の3時間前までには食べ終わるようにし、しっかり胃腸を休ませ、寝る前には入浴によって体を芯まで温めておくと良いでしょう。
また、眠る前にはスマホやテレビなどブルーライトを発する機器の使用を控え、リラックスした状態で目を休めることも大切です。
根本的な体質改善には漢方薬が効果的!
食後の眠気を改善するために、糖質を控えるなどの選択肢に加えて、根本的な改善を目的としている漢方薬の服用もオススメです。
特に、今回の相談者様のような症状に悩む方に適した漢方薬は、四君子湯(シクンシトウ)です。食後の急激な眠気に加えて消化不良の症状のある方の「気」を補い、水分代謝を良くして胃腸症状を改善し、眠気を起こしにくくする効果があります。
こうした症状に加えて、強い疲労感のある方には、だるさや疲労感を和らげる効果も加わった補中益気湯(ホチュウエッキトウ)も良いでしょう。
また、疲れて熟眠感が得られないような場合は、胃腸の働きを補い、自律神経を整える帰脾湯(キヒトウ)もオススメです。
暴飲暴食と寝不足を改善して眠気を防ぎましょう
今回は、食後の眠気に悩む方のためのセルフケアや漢方薬をご紹介してきました。
症状の改善のためには、糖質の過剰摂取に繋がる暴飲暴食を避け、食事は腹八分目にすること、食べる順番を工夫して血糖値の急上昇を防ぐことが大切です。
また、日中の睡魔に襲われないためにも、夜間に質の高い睡眠を得て睡眠不足を解消するようにしましょう。
こうした気になる眠気の症状改善には、漢方薬が大きな効果を発揮した例もたくさんあります。セルフケアを試してもなかなか改善しない場合は、ぜひお近くの漢方医や漢方薬局に相談してみてくださいね。