動脈硬化を改善する食事・サプリ・薬・漢方薬の基礎知識
動脈硬化は血管の老化現象です。
血管は、主に内側から内膜、中膜、外膜の3層構造で構成されています。血管自体が老化し、血管の壁が硬くなる影響で血液の通り道が狭くなる、あるいは場合によっては血管が閉塞して血流不全をきたします。
これを防ぐために、動脈硬化の改善に努めることが大切です。ここでは動脈硬化の改善につながる対策を紹介します。
目次
動脈硬化を改善する食事
動脈硬化は日常生活において塩分の過剰摂取や肥満、過度なストレス、運動不足などの要素によって引き起こされると考えられています。
血管の健康状態を考慮するうえで、食生活における重要ポイントは塩分と脂質、糖質の過剰な摂取を控えることです。
動脈硬化に関連する内臓脂肪をため過ぎないように、まずは甘い菓子や間食を控えましょう。
甘い製菓や清涼飲料水などには砂糖が多く含有されており、砂糖成分を過剰に摂取すると高血糖を招き動脈硬化を進展悪化させてしまうので注意する必要があります。
動脈硬化を改善させるおすすめの食事内容としては、生野菜のサラダ、海藻類、野菜炒め、きのこ炒め、野菜スープなどが挙げられます。
野菜類に多く含まれている食物繊維は、腸管内で糖質や脂質の吸収を抑制してくれます。きのこや海藻類には血圧を安定化させる効果を有するマグネシウムやカルシウムなどのミネラル成分が含まれているので動脈硬化改善に有用です。
また、たんぱく質が含まれる脂身の少ない鶏肉、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が豊富に含まれているいわしやさば、さんまといった魚介類、豆腐や納豆などを代表とする大豆製品を食べると動脈硬化を予防改善することが期待できます。
白米などから糖質を過剰に摂取すると肥満を引き起こすのみならず、膵臓を疲弊させて糖尿病を発症させる原因にも繋がります。ごはんやめん類などはいつもより量を減らすように意識しながら食事の最後に少しだけ食べるように心がけると良いでしょう。
動脈硬化への働きが期待されるサプリメント
必要な栄養素は食事から摂取するのが理想ですが、それが難しい場合はサプリメントを活用することができます。
EPA
食事の項目でもふれたEPAは「エイコサペンタエン酸」の略称です。例えば、いわし・さば・あじなどの青魚に多く含まれるn-3系不飽和脂肪酸のひとつであり、必須脂肪酸です。
必須脂肪酸は体内で作ることができないので食事から摂取しないといけません。
近年、食生活の欧米化により、日本人の脂質摂取は増えていて、特に動物性脂肪酸やアラキドン酸系列の植物性脂肪酸の摂取が増えています。
一方、EPA系列である魚類の摂取量が減少しているため、相対的にEPAの摂取量は低下しています。このような食生活の変化により、総脂肪に対するEPA摂取の比率が低下し、脳梗塞や心筋梗塞による死亡の増加につながっています。
ビタミンD
動脈硬化は心臓血管に関連する病気や脂肪の独立した予測因子であり、ビタミンD不足がその一因になっています。
ビタミンDが不足していると、運動を行っても動脈硬化の進行リスクがあまり抑制されないという報告もあります。
ビタミンDは食べ物に含まれるうえ、体内でも生成されます。特に脂溶性のビタミンDには多くの重要な機能があります。例えば、免疫力や骨の健康維持、気分の改善などの効果が期待できますし、特に高齢者の動脈硬化予防に貢献する可能性が示されています。
ナットウキナーゼ
ナットウキナーゼは血漿キニノーゲンに働きかけて、アミノ酸9~10個のキニンを遊離します。遊離したブラジキニンは生体内で強い薬理作用を持ち、高血圧症やメニエール症候群、閉塞性血栓血管炎や動脈硬化症の改善に用いられることがあります。
また、ナットウキナーゼはエラスターゼ活性を示します。その活性はエラスタチナールによって強く阻害され、エラスターゼは現在主にブタ膵臓由来のものが高脂血症の改善、あるいは抗動脈硬化目的で使用されていますし、臨床的にはエラスターゼESなどが経口投与薬として活用されています。
アリシン
ニンニクと玉ねぎなどのネギ属の植物には硫化アリルという成分が含まれています。
硫化アリルにはさまざまな種類があり、その代表がアリシンです。
アリシンはニンニクの代表的な成分で、生のニンニク内ではアリインとして存在し、ニンニクを刻んだりして組織の細胞が壊れると、ニンニクが持つアリナーゼという酵素の働きにより、アリインはアリシンに変化してニンニク独特の臭いを発します。
このアリシンには強力な殺菌作用があり、サルモネラ菌や病原性のカビ、チフス菌、コレラ菌、寄生虫の駆除などに効果があると言われています。
また、硫化アリル自体は、消化液の分泌を助けて食欲を増進する作用やビタミンB1の吸収と活性化を促進する作用があり、ビタミンB1の吸収を高めるため疲労回復にも有効です。
さらには、アリシンは血液をさらさらにして動脈硬化を予防する作用も報告されています。硫化アリルは脂質と結合することで、ビタミンEと同じような抗酸化性を発揮することで血栓を防ぐ作用があることが分かっています。
動脈硬化を改善する運動
動脈硬化を改善させるにはウォーキングなどの有酸素運動が効果的であると考えられており、習慣的に運動を行うことによって運動習慣がない場合に比べて加齢に伴う血管の老化現象を3分の1以下に抑えることができると伝えられています。
運動を実践することで身体内の血流量が増えると血管内皮細胞に摩擦応力が働いて、血管を柔らかくする機能を有する一酸化窒素の成分が増加します。同時に、強力な血管収縮作用を持つエンドセリン物質を減少させる効果も期待されています。
有酸素運動によって動脈硬化を最大限に抑制する効果が期待できるのは、活発なウォーキング、あるいはジョギングなどを1日に数十分から1時間程度を週に4~5日、少なくとも1か月間に渡って継続的に実践した場合であると考えられています。
ウォーキングは、誰しもがもっとも取り組みやすい運動のひとつですが、長く歩行してもカロリーを消費しにくいという欠点があります。ジョギングはカロリー消費という観点では良い運動ではあるものの膝を痛めやすいなどの課題があります。
そこで、おすすめの運動がウォーキングの最中に数分間だけできるだけ速く歩くインターバル・ウォーキングです。少しずつ要領を得て慣れてきた段階で速歩きの時間を少しずつ伸ばしていくように心がけることで動脈硬化の進展を予防できるでしょう。
動脈硬化を改善するストレス対策
日常生活において過度の精神的苦痛や肉体的ストレスを受けると、血液中に存在するコレステロール値や活性酸素量を増やして細胞を傷つけるのみならず、交感神経を刺激して血管が収縮することで血圧が上昇して高血圧を発症させることにつながります。
ストレスを自覚した際には早めに発散するように心がけて、いつまでも尾を引かないように努めることが大切です。
誰でも何らかの悩みや心配事を持っているものですので、日々のストレスを過剰にため込まないように自分なりに自己調整しながらストレス発散するようにしましょう。
例えば、スポーツで気分転換を図る、友人と会話してみる、美味しいものを楽しく食べる、よく眠るなどを心がけるとよいでしょう。
動脈硬化を改善する薬の種類
動脈硬化の治療に使われる薬について解説します。
LDLコレステロールを下げる薬
動脈硬化の治療として薬物療法が実際に検討されるのは、基本的に運動習慣や食事スタイルの見直し、ストレス対策などを十分に実践してもLDLコレステロール値が改善しない場合です。特に高血圧や糖尿病を有するリスクの高いケースでは早めに治療を開始します。
悪玉コレステロールと称されるLDLコレステロール値が高い場合に、よく使用されるのはスタチンと呼ばれる薬物です。このスタチン系薬剤では肝臓におけるコレステロール合成を減らすことで動脈硬化を改善させる点で有用であると考えられています。
スタチンを服用してもLDLコレステロールが下がらない方には、併用して小腸でのコレステロール吸収を抑制するエゼチミブが処方されることもあります。
またスタチン系薬剤だけでは顕著に薬効が認められない場合には、2016年から保険承認されてLDLコレステロール値をおよそ60%程度低下させる作用を持ったPCSK9阻害薬の使用も検討されます。
中性脂肪を下げる薬
健診などで中性脂肪値が高いと指摘されたケースでは、肝臓での中性脂肪の合成を抑える効果を有するフィブラート系薬剤、または魚油から抽出し血液をサラサラにする作用を持つEPA製剤が中性脂肪を下げる薬として期待されています。
特に、フィブラート系製剤は中性脂肪を低下させる一方でHDLコレステロールを増加させる効果も期待されています。ただし、スタチン系製剤や抗血栓薬、糖尿病に対する治療薬と併用すると相互作用の観点から人体に悪影響を及ぼす懸念があるために注意が必要です。
肥満防止に役立つ漢方薬
動脈硬化リスクの1つとされる肥満を防止するために効果的と言われている漢方薬を紹介します。
例えば、女性ホルモンに関するバランス変化によって食欲中枢に作用して摂食意欲が盛んになって脂肪が落ちにくい場合に、脂肪燃焼を補助して、停滞した血流も良好にする効果を有する大柴胡湯(ダイサイコトウ)や桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)が処方されることがあります。
体力や筋肉は元々あるにもかかわらず普段から暴飲暴食や便秘傾向になって脂肪が蓄積するような場合では、体内の余分な老廃物の排泄をスムーズにして脂肪の代謝を良好にする作用を発揮する防風通聖散(ボウフウツウショウサン)が処方されることがあります。
日常的に摂取する食事量は一般レベルにもかかわらず色白で疲れやすく小太りになってしまうタイプの方には、活気を付けて身体全体を温めて消化器の働きを良好にし、同時に水分代謝をも促進させる防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)が処方されることがあります。