「常に眠い」「だるい」は病気のサイン?考えられる原因について解説

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「常に眠い」「だるい」といった症状に悩まされることはありませんか? こうした症状の原因はさまざまで、なかには病気に関係しているものもあります。詳しくみていきましょう。

慢性疲労症候群

慢性疲労症候群とは、身体を動かせないほどの疲労が6か月以上の長期間にわたって続き、日常生活に支障をきたすほどになる病気です。

健康な人が、かぜや気管支炎などを患ったことをきっかけに、風邪に似た症状がいつまでも長引くのと同じような状態で発症することが多い病気となっています。

血液検査を含む全身検査(ホルモンの異常、内臓や脳、神経系の検査など)をいくら行なっても異常がみられず、休息をとっても改善しなかったり、摂食障害や不眠などを伴っている場合に、慢性疲労症候群が疑われます。

慢性疲労症候群の対処法

慢性疲労症候群の治療は、薬物療法が中心に行われます。そのなかでも、主になるのは補中益気湯(ホチュウエッキトウ)などの漢方薬です。漢方薬で身体の免疫力を高めていく治療になります。そして、体内の活性酸素による細胞の障害を防ぐために、抗酸化作用をもつビタミンCを大量に服用します。

他にも抗ウイルス薬や免疫調整剤が使用される場合もあり、これらの投与によって免疫系の回復を目指します。また、うつ病の薬が効果を発揮することがあり、抗うつ薬、精神安定剤などが使われることがあります。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群(SAS: Sleep Apnea Syndrome)とは、主に睡眠中に空気の通り道である上気道が狭くなることによって無呼吸状態(10秒以上呼吸が止まること)と大きないびきを繰り返す病気のことです。

成人男性の3〜7%、成人女性の2〜5%程度に見られる比較的頻度の高い病気となります。無呼吸は脳の酸素不足を引き起こします。睡眠時無呼吸症候群は寝ている間だけではなく、日中の生活においてもさまざまな症状が出現する危険性があります。

睡眠時無呼吸症候群の対処法

閉塞性の睡眠時無呼吸症候群の原因が肥満によるものとされる場合には、減量が必要になってきます。生活習慣の改善や適度な運動などに加えて、横向きで寝る、就寝前の禁酒や禁煙も効果的となります。

無呼吸の重症度によってCPAP療法やマウスピース装着を選択し、さらに治療が困難な場合には、手術が必要となることもあります。

CPAP(持続陽圧呼吸療法)

持続陽圧呼吸療法はCPAP療法と呼ばれます。睡眠中にCPAP装置を装着することで、空気を気道に送り、常に圧力をかけて気道が塞がらないようにする治療です。

CPAP療法を適切に行うことで睡眠中の無呼吸やいびきが減少し、SASによる症状の改善が期待できます。CPAPは治療効果が高く、SASによる難治性の高血圧にも有効であることがわかっています。

マウスピース装着

マウスピースは、下顎を前方に固定して空気の通り道を開くようにするものです。寝る前に口の中に装着してのどを広げることで、気道を確保します。歯やあごの状態に合わせたマウスピースを作る必要があります。

CPAPと比べて毎晩の装着が簡単に行えて、小型で軽量のため手軽に継続できるというメリットがあります。重症のSASには十分な治療効果が得られないこともあります。

外科手術

気道閉塞の原因がアデノイド肥大や扁桃肥大の場合には、手術によって肥大部分を切除するという治療が有効となります。また鼻閉を起こすほどの鼻疾患を持つ場合は、CPAPやマウスピースの治療効果が得られにくく、手術が必要になります。

過眠症

過眠症とは、日中に過度な眠気があることをいいます。原因はさまざまで、他の病気の一症状として過眠が現れることもあります。

また、季節などの環境的な要因も考えられます。そのため、過眠症状の強さや頻度、持続時間、睡眠時間の長さや質、時間帯のパターン、日常的に摂取している物質の影響、随伴症状などをみていく必要があります。

起床すべき時間帯に仮眠が起こり夜間に眠れない、時差ぼけのような症状を概日リズム睡眠・覚醒障害と呼びます。健康な人であれば一時的な症状のみですぐに適応できますが、場合によっては疲労や頭重感、食欲低下、胃腸障害などの身体症状が現れます。

また、入眠時間が遅く、朝は起きることができないために概日リズムが一定に遅くなる睡眠・覚醒相後退障害は、若年者によく起こる一方で、早寝早起きの睡眠・覚醒相前進障害は高齢者によくみられます。それ以外にもナルコレプシーなどの中枢性過眠症があります。

過眠症の対処法

日中の過度の眠気に対しては覚醒維持薬を使用します。薬物療法だけでなく、十分な睡眠時間を確保することを含めた生活上の注意も大切です。睡眠時間を確保することで日中の眠気の軽減が得られることがあります。

甲状腺疾患

甲状腺は甲状腺ホルモンを作る臓器です。甲状腺の働きが低下すると、甲状腺ホルモンが不足し、疲れやすく、体重が増えやすく、断続的な眠気などのさまざまな症状が出現します。

その甲状腺機能が低下する疾患に慢性甲状腺炎があります。別名橋本病とも呼ばれます。リンパ球が甲状腺を徐々に破壊し、慢性的な炎症が起こって甲状腺ホルモンの生成が低下します。

症状としては、全身の倦怠感、寒気、体重増加、皮膚の乾燥、むくみ、活動性の低下、月経異常などがあります。甲状腺機能低下症を放置すると、血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪が多い状態が長期にわたって持続し、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患、または心不全などの合併症が起こる場合があります。

甲状腺疾患の対処法

基本的には治療の必要はありません。しかし、甲状腺機能低下症を発症している場合、甲状腺ホルモンの内服治療を行い、甲状腺ホルモンを補充します。

うつ病

うつ病になると9割以上が何らかの不眠症状を伴います。寝つきが悪く、早朝に目が覚めたり(早朝覚醒)、眠りが浅く途中で何度も目が覚めてしまう(中途覚醒)、熟睡感がないなどの特徴的な不眠を示します。

睡眠による休養感が得られなくなると、日中の注意力や集中力の低下、頭痛やその他のからだの痛みや消化器系の不調などが現れ、意欲が低下してしまいます。

そのため、この特徴的な睡眠障害を初期のうちに発見して適切に治療しないと、うつ病の悪化を招いてしまいます。このような睡眠障害がみられる方は、病院を受診して相談しましょう。

不眠症状の対処法

睡眠薬による薬物治療の他に、生活習慣を正すことで睡眠の質を上げていきます。

起床時間を毎回同じ時間に設定する

睡眠覚醒は体内時計で調整されています。夜ふかしや休日の寝坊、寝過ぎは体内時計を乱します。休日だからといって、起床時間を変えるのではなく、平日と同じ時刻に起床・就寝する習慣を身につけることが大事となります。

起床後に日光浴をする

太陽光など強い光には体内時計を調整する働きがあります。光を浴びてから14時間目以降に眠気が生じてきます。早朝に光を浴びると夜寝付く時間が早くなり、朝も早く起きられるようになります。

すなわち早起きすることが早寝につながるのです。逆に夜に強い照明を浴びすぎると体内時計が崩れて早起きするのが辛くなります。

軽い運動を取り入れる

ほどよい肉体的疲労は心地よい眠りを生み出してくれます。運動は午前よりも午後に軽く汗ばむ程度の運動をするのがよいでしょう。激しい運動は刺激によって寝つきを悪くするため逆効果となります。

適度な運動を習慣づけることは、入眠を促進するだけではなく、中途覚醒を減らすことにもつながります。一方で就寝直前の激しい運動は入眠を妨げるため、注意が必要となります。

寝る1~2時間前にお風呂に入る

心地よい睡眠を得るためには、睡眠前に副交感神経を活発にすることが大事になります。寝る1〜2時間前にぬるめのお風呂にゆっくり入り、リラックスする時間をとって心身の緊張をほぐすことで睡眠の質が向上します。

寝るための環境づくりをする

寝室や寝床の中の温度や湿度は体温調節の仕組みを通して、寝つきや睡眠の深さに関係してきます。

温度や湿度があまり高いと発汗による体温調節がうまくいかずに、皮膚から熱が逃げていきません。そのため、内部の温度が下がらないために寝つきが悪くなります。

部屋の温度は20度前後、湿度は40~70%に保つと睡眠の質が良くなります。

寝る前のカフェイン摂取をやめる

カフェインには覚醒作用があり、その作用は3時間程度持続します。そのため、就寝前3〜4時間以内のカフェイン摂取は、入眠を妨げたり、睡眠を浅くする可能性があります。

寝る前に脳を興奮させる行動をしない

寝る前は脳を興奮させないことが大事となります。夜間は家庭の照明を暗めに調節しましょう。また、テレビやパソコン、スマホなどを見ることは極力避けましょう。

いかがでしたでしょうか。「常に眠い」「だるい」といった症状は身体が出しているSOSかもしれません。心配な症状がある方は病院を受診して異常がないか調べてみましょう。


<執筆・監修>

九州大学病院
脳神経外科 白水寛理 医師

九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。
日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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